成果概要

ウイルス-人体相互作用ネットワークの理解と制御3. 包括的理解のための技術開発と数理解析、AI・情報解析基盤

2022年度までの進捗状況

1.概要

イメージング技術を高度化し、オミクス技術と組み合わせることで網羅的かつ経時的な次世代計測技術の開発を進めます。また、イメージング技術が持つ並列性に着目した、計測の高度マルチプレクス化により、高いスケーラビリティーの実現を目指します。得られる大規模高次元データの解析手法としては、テンソル解析を用いて、網羅的時系列データからダイナミックに時間変化する細胞間相互作用ネットワークを推定します。さらに、細胞間相互作用ネットワークに対して、ネットワークモチーフ解析とネットワークトポロジー解析を適用し、ネットワーク全体の動態を反映するモジュールに分解します。モジュール化された細胞間相互作用ネットワークに基づいて多階層数理モデルを構築し、シミュレーションと感度解析を行います。多階層数理モデルと敵対的生成ネットワーク(GAN)を始めとする生成モデルを組み合わせ、実験データに基づいた架空の時系列データを生成し、免疫応答パタンの層別化に活用します。

2.2022年度までの成果

イメージンググループでは、ウイルス感染後の宿主の応答、特に免疫細胞の応答を計測するため、ウイルス、細胞、臓器、オルガノイド各種レベルでのタンパク質局在や遺伝子発現動態を三次元で空間的に把握できる技術を開発しました。また、これらの技術を他のムーンショットプロジェクトに技術提供、解析支援を行いました。

数理グループでは、ウイルス感染後の宿主応答ネットワークパタン抽出のための解析手法の開発を進め、ウイルス感染の重篤な変化の予兆を捉えるべく研究開発項目1,2の研究者らと研究を展開しました。また、実験科学と数理科学の融合研究を加速すべく、合原PJとの共同研究や研究者交流を積極的に実施しました。

3.今後の展開

イメージンググループではこれまでに開発した測定技術を活用し、研究開発項目1で確立した感染動物モデルを用いて、宿主応答ネットワークの網羅的で包括的な理解のための生体データの測定と可視化を進めます。数理グループでは全研究開発項目において得られたウイルス感染後宿主応答の網羅的で包括的なデータを基に、モデルの開発とパタン抽出を進めます。さらに、当初の計画を前倒して、臨床データに基づく感染症の未病状態の同定と予防検知に取り組みます。