成果概要
ウイルス-人体相互作用ネットワークの理解と制御[1] ウイルス感染ネットワークの解析
2023年度までの進捗状況
1. 概要
各種ウイルス感染症についてin vitroおよびin vivoのモデルを確立し、ウイルス感染後の宿主応答ネットワークを各種オミクス解析でデータベース化し、免疫学や数理科学の研究者と連携しながら宿主応答パタンを抽出します。そして、重篤な病態変化を超早期に予測できるバイオマーカーと、治療介入を可能にする標的分子の同定を目指します。さらに、ヒト臨床データとの相互フィードバック解析により、動物モデルを用いて得られた成績をヒト臨床データで、また、ヒト臨床データを動物モデルで科学的に検証します。
目標
- 細胞レベルおよび個体レベルの実験系を用いて、ウイルスの感染増殖機構を解析し、ヒト疾患に近い動物モデルやヒトオルガノイドを用いた感染モデルの確立を目標達成とする。
- 確立した感染モデルを免疫、イメージング、数理のPI(研究開発項目2と3)と連携し、実験データと臨床データを検証することで感染モデルを評価する。
- 未病を捕らえて、発病への過程に関わる機序や現象を明らかにする。

2. これまでの主な成果
ウイルス感染症の中で最もパンデミックを引き起こす可能性の高いのは、IFVやコロナウイルスなどの呼吸器疾患です。本プロジェクトでは特にSARS-CoV-2感染モデルについて、研究開発項目3の研究者らと協働し、重症化のキーとなる分子を同定すべく解析を進めました。その結果、重症化に深く関与する分子を複数同定し、これら分子に対応する阻害剤を用いてin vivo感染マウスモデルにて実証を行ったところ、いくつかの阻害剤処理によって重症モデルマウスの病態改善が認められました。
また、RSウイルス、日本脳炎ウイルス、ロタウイルス、出血熱ウイルス、C型肝炎ウイルスについてマウス感染モデルの作出を完了し、研究開発項目3の研究者らと協働し、RNA-seq解析、空間トランスクリプトーム解析等の各種オミクス解析のデータを基に宿主応答ネットワークの抽出を進めました。

3. 今後の展開
2023年までに作出した各種ウイルスのマウス感染モデルについて、網羅的オミクス解析によってウイルス感染後の宿主応答ネットワークの解析を進め、重篤な病態変化のおきる前の超早期に予防・治療介入を可能とするバイオマーカーや治療標的分子を同定します。さらに、各ウイルス感染モデルの横串的な解析も進め、新たなウイルス分類を定義し、各分類に応じた予防・治療法の開発にむけて研究を展開します。また、動物モデルで得られたデータはヒトデータと相互にフィードバックしながら解析を進め、得られた研究成果のヒトへの実装に向けた検証を進めます。
