成果概要

ウイルス-人体相互作用ネットワークの理解と制御1. ウイルス感染ネットワークの解析

2022年度までの進捗状況

1.概要

各種ウイルス感染症についてin vitroまたはin vivoのモデルを確立し、ウイルス感染後の宿主応答ネットワークを各種オミクス解析でデータベース化し、免疫学や数理科学の研究者と連携しながら宿主応答パタンを抽出します。そして、重篤な病態変化を超早期に予測できるバイオマーカーと、治療介入を可能にする標的分子の同定を目指します。さらに、ヒト臨床データとの相互フィードバック解析により、動物モデルを用いて得られた成績をヒト臨床データで、また、ヒト臨床データを動物モデルで科学的に検証します。

目標
  • 細胞レベルおよび個体レベルの実験系を用いて、ウイルスの感染増殖機構を解析し、ヒト疾患に近い動物モデルやヒトオルガノイドを用いた感染モデルの確立を目標達成とする。
  • 確立した感染モデルを免疫、イメージング、数理のPI(研究開発項目2と3)と連携し、実験データと臨床データを検証することで感染モデルを評価する。
  • 未病を捕らえて、発病への過程に関わる機序や現象を明らかにする。

2.2022年度までの成果

ウイルス感染症の中で最もパンデミックを引き起こす可能性の高いのは、IFVやコロナウイルスなどの呼吸器疾患です。本プロジェクトでは、喫緊の課題であるSARS-CoV-2の解析を最優先に実施しました。研究開発項目2の研究者らを中心にすでに動物モデルが確立されているインフルエンザモデルで先行した解析をすすめ、その解析手法・実績を新たに確立したSARS-CoV-2感染モデルに横展開することで効率よく研究をすすめました。SARS-CoV-2感染モデルについては、重症化モデル、軽症モデル双方を確立、比較することで重症化要因の抽出が可能な実験系を確立しました。現在までに、重症化を規定する候補因子が複数同定されており、COVID-19における未病の定義に向けて引き続き研究を展開しています。また、インフルエンザモデル・SARS-CoV-2に共通して特徴的な動態を示す細胞群・分子群を見出し、呼吸器感染症において超早期の検知と治療介入を可能とするターゲット分子・バイオマーカー候補を同定しました。

3.今後の展開

SARS-CoV-2については、研究開発項目2,3の研究者らがヒト臨床データを取得し、動物モデルのデータとヒト臨床データの相互フィードバック解析により、研究成果のヒトへの実装を目指します。また、これらの解析実績を、呼吸器感染症のRSウイルスの感染モデルに横展開し、急性呼吸器感染症に共通する宿主応答パタンの抽出を目指します。さらに、出血熱、腸管感染症、節足動物媒介性感染症、慢性感染症のウイルス感染症についても順調に感染動物モデルの作成が進行しており、宿主応答パタンに基づいて新しくウイルスを分類します。