成果概要

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生体内ネットワークの理解による難治性がん克服に向けた挑戦[3] がんの自然史(超早期・早期・浸潤・転移)の理解と細胞生物学的治療コンセプトの創出

2025年度までの進捗状況

1. 概要

本項目では、難治性がんの患者生体試料やオルガノイド、新規培養技術系から得られる「多階層データ」により、難治性がんを早期に予測・予防するための標的となるターゲット分子をあぶり出し、がん発症プロセスにおいてどのような役割を果たしているかを分子・細胞レベルでの明らかにします。また、そのようなターゲットを評価するために必要となる新規実験系と解析技術の開発・導入を進め、臨床応用につながる質の高い科学データを集積しています。

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さらに、遺伝学的なマウスモデルを用いた解析により、がんを早期に排除しうると考えられる正常な組織の防御機構のメカニズムの解明に取り組んでいます。具体的には、細胞老化、細菌感染、遺伝子変異などが生じた時に、異常な細胞を除去する仕組みに注目し、発生したがん細胞を超早期に検出、除去するための細胞間ネットワークを分子レベルで明らかにしています。
さらに、がん細胞そのものにおける代謝変動、幹細胞性、細胞接着、形態変化などのがん細胞の中心的な特質についても、多角的な実験・解析を通じて、発がん初期の分子動態変化を同定します。
これにより、新たな診断・治療コンセプトの創出とその社会実装に向けた取組を進めています。

2. これまでの主な成果

細胞競合・細胞老化に着目したネットワーク解析
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老化細胞の細胞死耐性機構から、フェロトーシスによる細胞死誘導法を開発し、膵がんの発症を予防できることを示しました。
Loo et al., Nat. Commun. 2025
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ショウジョウバエ上皮がんモデルを用い、マクロファージによるがんの貪食が炎症系サイトカインを放出し、炎症応答を通じて腫瘍を促進する作用があることを示しました。
Hirooka et al., Cur. Biol. 2025
  • 亜鉛欠乏によりヒストンアセチル化酵素KAT7の活性が低下し、細胞内の亜鉛恒常性維持や肝臓の脂肪の蓄積を誘導することを示しました。
  • 細胞競合のモデルマウスの膵臓において、細胞競合の際に発現が高まる分子を特定しました。
    この分子は膵がん発症モデルマウスの前がん病変(ADM)とヒト膵がん臨床検体のADMでも発現していることが確認されたため、臨床診断に用いるプローブの作成に取り組んでいます。
幹細胞・細胞極性・上皮間葉転換に着目したネットワーク解析
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がん幹細胞の非対称分裂時にはaPKCを介して解糖系が非対称に分配され、がんが不均一化することを実験と数理モデルで解明しました。
Tamori et al., Sci Rep 2025
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難治性卵巣がんのオルガノイドを用いたマウスモデルの解析から、mTOR阻害剤を標準治療に加える新たな治療戦略を策定しました。
Tamura et al., Cancer Letters 2025
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細胞膜にあるNADH代謝とフェロトーシス制御を結びつける新たな概念を提示しました。
Yang et al., Cell 2025
腸内細菌叢・がん免疫・代謝に着目したネットワーク解析
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難治性がんのフェロトーシス脆弱性に注目し、がん幹細胞様細胞において選択的に増殖を抑制する薬剤としてピモジドを同定しました。
Okazaki et al., Cancer Sc. 2026
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セノリティック薬剤の評価を行い、有効薬剤の同定し、耐性機序を示しました。
Wakita et al., Nat. Aging 2026
  • 薬物耐性が高い乳がんのサブタイプでは、BCAA(分岐鎖アミノ酸)依存性が高いことを示したほか、その分解代謝に関わるBCAT1がその悪性度を規定することを示しました。
    Matsuura et al., Cell Reports, 2026

3. 今後の展開

多角的な検討によって得られた複数の早期診断ターゲットに対し、その臨床応用可能性を、動物実験モデル、臨床データベース、オルガノイド等を用いて検証し、基礎医学的な知見を膵がん等の難治性がんの予防・予測・早期診断につなげていきます。細胞競合、細胞老化、腸内細菌叢、代謝シフト、幹細胞性、細胞極性などを横断的にとらえ、科学的に最も妥当な、がんの制御のあり方の検討を進めていきます。