成果概要

生体内ネットワークの理解による難治性がん克服に向けた挑戦1. 最適医療(My Medicine)の実現に向けた患者生体試料・データの集積技術の開発

2022年度までの進捗状況

1.概要

難治性がんの多くは進行がんとして見つかるので、患者に由来する臨床データ及び生体データが限られ、発症要因の解明の大きな障害となっています。また、微量の検体から様々な生体データを取得する技術やデータを集積して共同利用する仕組みが未成熟です。

本テーマでは、難治性がんの予測・予防に向けて、難治性がん患者から、正常組織・前がん病変・超早期がん・浸潤や転移を伴う進行がんの臨床検体(血液・がん組織・近傍の正常組織)、臨床データ(血液生化学データ・画像など)、血液・体液・糞便などを取得・集積しています。

平行して、上述の患者組織試料からオルガノイドを樹立し集積しています。患者オルガノイドは、患者試料では不可能な様々な実験に供することが可能であり、発症プロセスの理解に大きな可能性を開く革新的な技術です。

上述の患者組織試料からゲノムを含む様々な生体データを取得し、データベースを構築しています。

2.2022年度までの成果

患者生体試料バンクの構築:

慶應義塾大学、京都大学、および神戸大学の三機関において共通の取組に関する倫理委員会の承認を得ました。そして各施設において様々な手法(内視鏡や外科手術など)で得られた余剰の残存試料を集積しています。さらに、オルガノイドを樹立しています。これらについて、ゲノム・オミックスの解析が進行中です。

オルガノイド培養プラットフォームの構築:

標準化した手法を用いて未病由来オルガノイドが樹立可能であることを確認し、検体数を集積しました。網羅的な解析から膵がんの進行に伴い起きる新たな現象と分子機構を見いだしました。

更に、線維芽細胞との共培養など、新たなオルガノイド培養技術の開発を進めました。

多階層統合解析共有データベースの構築:

臨床検体・オルガノイドの全ゲノムデータ解析基盤の整備を進めました。また、RNA解析も進みました。さらに、包括的な脂質代謝物プロファイル・脂質メディエータープロファイルの取得、代謝解析のためのプロトコールの標準化などが進んでいます。

3.今後の展開

前がん病変、超早期がん、進行がんの検体の採取が進み、患者オルガノイドが樹立されてきました。その進行に合わせて、多階層統合解析共有プラットフォームを利用した解析を進めます。