成果概要

複雑臓器制御系の数理的包括理解と超早期精密医療への挑戦[3] 数理的連携研究、データベース構築およびELSI支援体制構築

2023年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発テーマは、2つのサブテーマに大別されます。1つは「数理的連携研究」で、もう1つは「データベース構築」です。数理連携研究では、ムーンショット目標2全体において横断的に利用可能な数理解析基盤の構築や、目標2で得られる疾病データに関する数理連携研究を行います。特に、健康状態から疾病状態へと移る直前の未病状態の検出のための汎用的な数理解析手法の構築を行っています。

包括的未病データベース構築の概念図
包括的未病データベース構築の概念図

またデータベース構築では、プロジェクト全体の成果をとりまとめて複雑臓器制御系の未病データベースを構築し、社会に広く公開することを目的とします。特に、目標2の各プロジェクトと連携して、各疾病に関する実験データや臨床データ、そしてそれらに関する横断的な数理解析データを基とした包括的未病データベースの構築を行います。
これらにより、プロジェクトの達成目標である複雑臓器制御系の数理的包括理解と超早期精密医療だけでなく、目標2全体で目指す超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会の実現に貢献出来るデータベースを構築します。

2. これまでの主な成果

数理的連携研究では、MS目標2の5プロジェクトで計測される予定の実験データや臨床データのデータ解析を想定して、数理モデルで生成した人工データおよび既存のオープンデータなどを用いて、数理解析手法の構築および数理解析ソフトウェアの開発を進めました。たとえばDNB解析やASURATのような本研究開発プロジェクト独自の数理解析手法に関しては、それぞれについてソフトウェアを開発し、公開しました。公開されたソフトウェアは、国立情報学研究所(NII)のGakuNin RDM上で動作確認がすでに完了しており、MS目標2全体において利用可能であることが検証済みです。このように、数理解析プラットフォームの構築が着実に進んでいます。引き続き、さまざまな数理解析手法の開発やソフトウェア化などを通じて、プロジェクトを越えてMS目標2全体において横断的に利用可能な汎用的数理解析プラットフォームの構築を進めていきます。
さらにデータベース構築においては、包括的未病データベースの設計を終え、合原PJ内でのデータ収集と共有に続いてMS目標2の5プロジェクトの実験・臨床データの収集・共有を開始しました。データ共有に関するデータベース作業部会を開催するなど、目標2全体でのデータベースの利用に向けた具体的作業を進めています。データベース作業部会ではデータ共有にあたっての課題を解決し、目標2一丸となってデータ格納を進めます。さらにデータベース構築に伴って生じうる倫理的、法的および社会的課題(ELSI)に対して、他の4つのプロジェクトと緊密に連携して適切な対応を検討し、その対応実践について目標2横断的に支援するために、本研究開発プロジェクト内に構築したELSI支援グループと緊密に連携して、データベース構築におけるELSIの解決に向けた目標2横断的な取り組みを進めています。

GakuNin RDMを介した目標2でのデータ共有
GakuNin RDMを介した目標2でのデータ共有

3. 今後の展開

数理的連携研究では、目標2の各プロジェクトと連携した数理研究を進めるため、引き続きデータ共有システムの構築を行います。また、目標2全体で横断的に利用可能な、個別の疾病を越えた、汎用性のある数理解析プラットフォームの構築も引き続き進めます。さまざまな数理解析手法を目標2の誰もが利用できるソフトウェアとして公開することで、数理的連携が促進されることが期待されます。
データベース構築については目標2内でのデータ共有を早急に進めていきます。そのためにも、データ共有にあたっての課題を解決し、目標2の5プロジェクト全体で連携してデータ格納を促進します。また、本項目3の中で連携してデータベース構築を強力に進めます。さらに、包括的未病データベース構築に際して共通の利用方法・ルールの策定に向けて、ELSI支援チームと連携し目標2横断的なデータベースガイドラインの作成を進めます。