成果概要
多様な革新的炉概念を実現する超伝導基盤技術[3] コイル・導体の試験技術と高温超伝導核融合炉設計技術の確立
2025年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目では、高温超伝導線材を使ったトカマク炉の運転パラメータを評価するため、ITER(1)など原型炉の解析実績があるTPCコードを用いて検討した。また、炉設計検討からも明確となった構造材に要求される機械強度1500 MPaを実現するため、具体的な金属組成の検討を進め、小規模溶解材を用いた試験試料作製を開始した。並行して、導体・コイルの試験設備の準備ならびに、液体水素雰囲気を含む極低温下の機械特性試験設備の準備を進めた。
(1)国際熱核融合実験炉
2. これまでの主な成果
高温超伝導線材を仮定したTFコイルを想定したシステム設計コード解析を実施可能な環境整備は完了し、高温超伝導線材を用いたトカマク炉の設計検討を実施した。トロイダル磁場コイルのプラズマ側コイル表面での最大磁場強度Btmaxを20Tから40Tの範囲とし、プラズマ主半径Rpは3m台で検討した。巨大電磁力への耐性とクエンチ保護を可能とする高温超伝導導体設計と整合するよう、本プロジェクトで開発予定の高温超伝導導体の設計検討と連携し、同仕様(導体電流密度Ic: 75 A/mm2)の条件下でパラメータスキャンを実施し
た。同解析により、例えば高温超伝導線材を用いたトカマク炉の設計例であるARC(米国)において、同導体電流密度及びITERの1.5倍の強度の極低温構造材料を仮定すると、Btmaxを26 Tもしくは27 Tとする設計点が得られ、ARCよりもコイルとプラズマ間に設ける
遮蔽領域もしくは燃料増殖領域を20cm増加した上で、同等程度の核融合出力を得られることを見出した。図3-1にフュージョン出力500 MW級のトカマク炉におけるTFコイルの比較検討例を示す。

また、コイル・導体の技術実証に向けて、4種類の導体設計の初案を策定するとともに、サブケーブルを用いた小規模コイルによる技術実証のための試験設備の整備を進め、試験治具の製作および4K GM冷凍機の導入、使用する電源設備の点検整備を完了した。
さらに、巨大な電磁力に耐え、小型核融合炉を実現するために不可欠となる超高強度構造材の開発について、候補となりうる材料の検討方針を決定し、それに基づき50 kg級小規模溶解試料の試作を開始した。また、評価対象材料に応じた
試験片加工の検討と、強度、低温靭性評価のための環境整備を完了した。
原型炉開発で豊富な知見を有するQST(2)メンバ等の参画により、システム設計から要求されるREBCO線材や構造材の要求性能の明確化と、逆に材料特性を反映した炉設計の検討など、従来の研究体制では難しかった取組も可能な体制を構築し、優位性を有している。
(2)量子科学技術研究開発機構
3. 今後の展開
炉設計技術については、高温超伝導導体の設計検討と連携しつつ、パラメータスキャンの範囲を拡大するとともに、電磁力評価の詳細化を図っていく。今年度のトカマク炉における高温超伝導コイルの設計結果に基づき、同超伝導コイル設計の詳細検討を進めるとともに、ヘリカル炉などの非トカマク炉における高温超伝導コイルへの要求を整理し、その適用について検討を行う予定である。また、小規模コイル試験による技術実証に向けて、導体の詳細設計によって耐電磁力性および冷却安定性に関する詳細な検討を行い、導体設計の高度化を図る。
さらに、超高強度構造材の開発について、今年度試作した50 kg級小規模溶解鍛造板の極低温機械特性試験を実施するとともに、引き続き50 kg級小規模溶解試料の試作を行い、組成の絞り込みを進める。