成果概要

多様な革新的炉概念を実現する超伝導基盤技術[1] 高Je・低コスト線材量産技術の開発

2025年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目では、高性能の線材をより低コストにかつ量産できるためのプロセス技術の開発を目的としている。本年度はそのための基盤的な技術となるデータ駆動型アプローチによるパルスレーザ堆積(PLD)技術開発のために、極低温、強磁場下という線材の実用環境下での性能をハイスループットに計測する技術開発に取り組んだ。また、このような計測結果に機械学習による画像解析の手法を組み合わせることで、線材内の局所的な不均一性領域の自動検出法についても考案した。これらの手法により、長尺のREBCO高温超伝導線材の実用環境下における特性を詳細に把握することが可能となり、線材の均一性評価やプロセス条件による線材特性の把握に威力を発揮する。

2. これまでの主な成果

線材製造技術高度化のためのプロセスインフォマティクスの基盤となる実用環境下における線材性能のハイスループット計測を実現し、機械学習モデルによるPLD装置の挙動の高精度なモデリングにも成功した。本モデルにモンテカルロ法による仮想的な10,000の製造条件の組み合わせによる特性を推定することで、支配的なプロセス条件について詳細
な検討を可能とした。図1-1にIcに対する基板温度の影響を明らかとした例を示す。(I:導体電流密度)
また、液体ヘリウム中の浸漬冷却した線材を連続に搬送しながら、最大5Tまでの外部磁界下においてIcの長手依存性を連続に計測することに初めて成功した。図1-2に実測結果の一例を示す。極低温・高磁場を含む実用環境下での高温超伝導線材の特性を高速に計測する手法を世界に先駆けて開発できたことで、線材性能の制限因子をより直接的に捉えることが可能になったばかりでなく、データ駆動型のアプローチを線材製造に適用し、プロセスの高度化を図れる点で大きな優位性を有する。

図1-1
図1-1 線材製造技術高度化のためのプロセスインフォマティクスの基盤となる実用環境下における線材性能のハイスループット計測を実現し、機械学習モデルによるPLD装置の挙動の高精度なモデリングにも成功した。本モデルにモンテカルロ法による仮想的な10,000の製造条件の組み合わせによる特性を推定することで、支配的なプロセス条件について詳細
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図1-2 液体ヘリウム温度、最大5Tの外部磁界下においてリール式連続Ic測定に成功

3. 今後の展開

今後は、初年度の成果を基に、データ駆動型アプローチによる空間均一性、再現性ならびに歩留りの向上のためにテンプレート層の影響について調査を開始する。並行して、製造データを蓄積するとともに、初年度得られているPLD成膜のモデリングの精度を向上させる。また、レーザアブレーションプロセスにおけるレーザの影響度解明とスループット向上の研究開発を行う。さらに、ナノ組織観察との連携によって、REBCO線材の磁束ピン止め特性を発現するナノ組織構造解析および電流阻害因子の機構解明に関するマクロサイズ欠陥の観察を推し進め、プロセス条件との関係を明確化する。