成果概要
多様な革新的炉概念を実現する超伝導基盤技術[2] 40 T級超強磁場コイル技術の開発
2025年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目では、磁場閉じ込め型核融合炉で重要な構成要素となる超伝導コイルの中性子照射耐性を実現するため、従来の有機絶縁にかわるものとしてセラミックスコートを導入し、機械特性や電気特性など短尺試料を用いた基礎特性試験を実施するとともに、長尺の連続成膜のためのRoll-to-Roll(1)装置の設計に着手した。また、強磁場発生コイルについては、最も重要となる強磁場下でのコイル内の電磁応力について詳細な数値シミュレーションを行い、新たなコイル構造を採用することで応力歪を許容値以下に抑制できる目途を得た。
(1)テープ状の素材を巻き出しから巻き取りまで連続的に処理するための製造装置
2. これまでの主な成果
Hastelloy基板上に数ミクロンのAl2O3厚膜の堆積をおこなったところ、優れた機械的強度を有すると同時に絶縁耐圧にも優れることを確認した。また、中性子照射実験についても今年度末に予定しており、基礎データが得られる見込みである。短尺試験の結果を基に、長尺線材形成時にも実用的な製造速度を実現の目途を得た。長尺線材への適用のために既存実験装置を改造する詳細設計を終えており、次年度よりメートル級コート材の提供を開始できる見通しである。
セラミックスコートはこれまで超伝導コイルの絶縁に用いられたことはなかったが、耐圧、機械的強度(引張強度)、中性子線耐性において、一般的に用いられている有機絶縁材料を圧倒的に凌駕することが期待でき、実現できれば画期的な絶縁技術となり得る。
また、強磁場発生コイルについては、強磁場発生時のコイル内の電磁応力分布について詳細な数値シミュレーションを行い、パンケーキコイル間を機械的に結合するなど、新たなコイル構造を採用することで、図2-1に示したように応力歪は最大で0.35%とREBCOテープのひずみ限界である0.4%以下で40Tの発生が可能であることを確認した。

今年度はこれに加えて遮蔽電流や結合電流などの詳細な電磁現象の影響を検討する段階に入っており、スパコンを活用した遮蔽電流計算コードの構築を完了した。REBCO線材を用いた強磁場コイルでは、冷却時の異方的な熱収縮にともなう応力歪を回避しつつも、十分な冷却のための伝熱パスの確保、さらに、コイル運転時にかかる巨大な電磁応力による歪を許容値以下に抑えるなど、複数の条件を満足する必要がある。本年度の検討の結果、これらすべてを満足する設計がほぼ確立できたことは、全超伝導マグネットで世界記録を目指す40 T強磁場コイル実現にむけた重要な進展といえる。
3. 今後の展開
本年度実施した概念設計において、40Tの磁場発生を見通せる解を見いだせたので、今後、詳細な電磁力現象やコイル保護の検討により詳細設計を実施する。また、概念設計に基づいた新ロバスト構造のREBCOパンケーキコイルの性能実証に向けたコイル作製と試験を行う。
また、セラミックスコートによる絶縁技術については、今年度の成果を基に、初期量産レベルの装置立ち上げに向けて、次年度より10 m級の長尺絶縁テープ材の試作を開始し、成膜安定性や生産性の向上を検討する。