成果概要

サイバネティック・アバターのインタラクティブな遠隔操作を持続させる信頼性確保基盤[3] ジッタ低減と低遅延化による信頼性確保プラットフォームの構築

2023年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目では、サイバネティック・アバター(CA)遠隔操作の信頼性確保基盤(プラットフォーム)の研究開発と、関連する標準化・制度化について調査を実施しています。
CA遠隔操作の信頼性確保基盤として、エンドーエンド間の通信アーキテクチャを策定しました。本アーキテクチャは、現在のインターネット上に①動的経路制御機能と②通信品質把握・監視機能の2つの機能を有する「サポートノード」を導入します(図1)。インターネット上のIPアドレスによるルーティング(通信経路設定)に加えて代替の通信経路も予め確保して冗長化を図り、最適な経路に切り替えができる動的経路制御機能にて信頼性を確保します。切り替えの判断は、通信品質把握・監視機能と連携して行います。現在のインターネット通信では、通信経路上の混雑によるパケットロスや到達遅延、通信障害を回避することが難しいですが、本研究では、これらの問題の発生予兆を検知し、使用中の通信経路上に問題が生じる可能性がある場合に、事前に代替経路に切り替えることを目指します。本機能により、通信の不安定性に起因するCA遠隔操作の不安定化を回避し、操作者が違和感なく遠隔操作できるようになり、CAと触れ合うサービスユーザも安心してCAや遠隔操作者とのインタラクションができるようになります。
また、現在進められている標準化及び制度化の動向を調査しました。例えば、本プロジェクトが担当する通信分野ではインターネット関連の規格を議論しているIETFやIRTF、及び携帯電話の規格を策定する3GPPの動向等を調査対象とし、概要を調査報告書としてまとめました。

図1 「サポートノード」による信頼性確保基盤アーキテクチャ
図1 「サポートノード」による信頼性確保基盤アーキテクチャ

2. これまでの主な成果

策定したCA信頼性確保基盤アーキテクチャに基づき、その初期プロトタイプを実装しました。CAの遠隔操作に活用できるようにするため、インターネット上で容易に導入できるように、サーバ等に機能実装する方針としました。そのため、令和5年度の初期プロトタイプの実装においては、①の動的経路制御機能はIPネットワーク上で経路選択を行うオーバレイネットワークを構成し、②の通信品質把握・監視機能は近隣のサポートノード間で定期的にプローブパケットを交換して品質推定を行うこととしました。
本プロトタイプについて、情報通信研究機構の日本橋オフィスに遠隔操作者が、横須賀オフィスにCA及びサービスユーザがいるというシナリオの下、機能検証試験を実施しました。遠隔操作者側は2種類の回線を、CA側は3種類の回線をそれぞれ接続可能とし、インターネットを介して6通り(2×3)の通信経路を利用できる環境を構築しました。ネットワークの接続点や,管理主体が異なる各ネットワーク上にサポートノードを配置し、通信品質を常時監視することで、現在通信中の経路だけではなく、代替候補となる経路の状況も把握できることを確認しました。有線ネットワークの混雑状態や無線通信区間のパケットロスなどを模擬した結果、サポートノードによって想定通りに代替通信経路への切り替えや、ジッタ発生時の遠隔操作された機器の動作のブレが吸収でき、安定した遠隔操作通信が維持できることを確認しました。サポートノードの導入により、経路の特徴や性能を自動で学習し、互いに情報共有しながら状況に応じて動的な経路切り替えが可能となり、現在のネットワーク上で従来にない通信信頼性を実現する仕組みの第一歩となりました。

3. 今後の展開

令和6年度には、プロジェクト内の無線区間高信頼化技術と組み合わせたエンド-エンド間制御方式を実装し、他プロジェクトの実証サイトにおいて通信制御試験を実施し、その有用性を評価します。また、標準化動向概要をまとめた調査報告書について、外部に対して公開する計画です。