成果概要
サイバネティック・アバターのインタラクティブな遠隔操作を持続させる信頼性確保基盤[5] ジッタ低減と低遅延化による信頼性確保プラットフォームの構築
2024年度までの進捗状況
1. 概要
エンド‐エンド(E2E)の通信信頼性を確保するために設計したアーキテクチャに基づき、プロトタイプである「サポートノード」を用いた実証を進めました。また、CAを模擬する装置として双腕ロボットを導入し、通信品質が低下した際に遠隔操作へ与える影響を可視化しました。同一の通信経路条件下でも、サポートノードを介することで、エラーの多い経路を回避し、操作信号の到達時間の揺らぎを低減することで、遠隔操作が安定化することを示しました。
さらに、M×N通信環境の実現に不可欠な情報指向ネットワーク技術拡張(ICNx)の開発を進めました。ICNが本来持つ多数端末への同時配信機能に加え、ネットワーク内でのリカバリ機能を追加することで、より安定的かつ大容量なCA通信を実現可能としました。
2. これまでの主な成果
遠隔操作の安定化を実現するため、通信品質の監視・可視化機能、動的経路制御機能、ジッタバッファ機能を備えた信頼性確保基盤のプロトタイプであるサポートノードを開発しました。双腕ロボットを用いた実証試験とデモンストレーションを国内外で複数回実施し、国際会議にてベストペーパーアワード[1]を受賞するなど高い評価を得ました。さらに、国内外12か所で通信特性を測定し、特徴的な通信品質データの取得に成功しました。これらのデータをもとに、ネットワークエミュレータを用いて同様の通信環境を再現することにも成功し、現地に赴かずに実環境を模擬可能な評価手法を確立しました。この成果は、ネットワーク制御最適化に向けた検討に有用な基盤データの提供に繋がっています。
CA基盤と信頼性確保基盤の連携に向け、必要なインタフェースや送受すべき情報、今後の課題の整理を進めています。併せて、本プロジェクトが担当する通信分野の国際標準化動向を調査し、信頼性確保基盤の標準化活動マップを取りまとめました。これに基づき、まずはCA遠隔操作ユースケースに関するITU-Tへの寄書入力の準備を進めています。
CAと遠隔操作者間の通信を広帯域・低遅延で実現するため、オープンソースのCefore[2]を用いてICNxの開発を進めました。令和6年度は、転送パケットの欠落をネットワーク内部で検知し、迅速に再送要求および転送を行う「ネットワーク内リカバリ機能」を開発しました。この機能により、安定したネットワーク環境下では99%の通信が100 ms以内で完了し、図2に示すような不安定な環境においても90%以上の通信が100 ms以内で達成可能であることを確認しました。この成果は著名な国際学会[3]にて発表する予定です。


- [1] SmartCom 2024(http://ieice-smartcom.info/2024/)
- [2] Cefore(https://github.com/cefore/)
- [3] IFIP Networking 2025 (https://networking.ifip.org/2025/)
3. 今後の展開
サポートノードに他課題で開発された制御ロジックやハードウェア制御を統合し、ネットワーク全体におけるM×N制御の最適化手法の検証を進めます。また、E2E通信向けプロトコルであるICNxに関する研究では、現在のネットワーク内リカバリ機能を拡張し、複数の通信相手に対しても同時に遅延を低減できるプロトコルの実現を目指します。これらの成果については、ソシオCA関連プロジェクトと連携して実証試験を実施するとともに、関連する国際標準化団体への提案活動も進めていきます。