成果概要
サイバネティック・アバターのインタラクティブな遠隔操作を持続させる信頼性確保基盤[2] 操作者とCAを繋ぐE2Eネットワーク最適構成技
2023年度までの進捗状況
1. 概要
高信頼、低遅延、高効率なネットワークを実現し、安定したCA遠隔操作を継続可能とする通信技術として、(1) 無線通信インテリジェントローカルネットワーク(ILN)の研究、(2) CAと遠隔操作者のエンドツーエンド(E2E)通信の研究により、CAの遠隔操作に要求される通信品質を常に確保できるネットワークの実現を目標としています。
CAの無線通信エリアは、ローカル5GやWi-Fiなどを組み合わせたスマートスポットセル(SSC)と、複数のSSCで構成するILN(図1)で形成します。複数のSSCが連携してCA通信の無線接続や通信エリアを最適に保ち、切れにくい高品質な無線通信の実現を目指します。遠隔操作者とCAの間のE2E通信プロトコルの研究では、情報指向型通信技術(ICN)を拡張し、高信頼、低遅延、高効率を実現する情報指向型通信技術拡張(Cin)の開発を進めています。

2. これまでの主な成果
(1) 無線通信インテリジェントローカルネットワーク(ILN)の研究
CAの無線通信、ILNの研究開発においては、各CA通信の品質要求を満たすために、学習型のパラメータ最適化アルゴリムを開発しました。図2に示すパラメータ最適化システムでは、通信状況(CAの位置や接続数等)、通信パラメータ、過去の通信品質等の情報を、ILNを管理するサーバ上のOptimal CA Communication Area Computing Database(OCAC DB)に保存し、機械学習によって通信品質を推定し、CA無線通信のパラメータを最適化します。提案手法を、CA無線リンク、SSCパラメータの最適化に適用し、OCAC DBに情報が追加されることによって、CA通信の品質を改善できることをシミュレーションで確認しました。100体のCAが行き交う混雑環境においても、受信電力ベースの基地局選択手法よりも高いスループットが得られることを示しています。

(2) CAと遠隔操作者のエンドツーエンド(E2E)通信の研究
CAと遠隔操作者のE2E通信の研究においては、広帯域・低遅延なICNxを実現するために、オープンソースであるCefore[1]を用いた開発を行いました。転送パケットが欠落したことをネットワーク内で検知し、迅速な再送要求を行うプロトコルを初期実装し、最大100Mbpsの通信が可能であることを確認しました。さらに、図3に示すように、ICNxをPCおよびAndroidタブレット端末に実装し、マルチキャストを用いた効率的かつ高品質な1対多通信ができることを確認しました。

3. 今後の展開
CAの無線通信、ILNの最適化アルゴリズムの有効性をシミュレーションで示してきましたが、今年度はローカル5Gの無線基地局や端末を用いた実システムにも実装し、実環境でのCA通信の信頼性確保の実証を目指します。E2E通信用プロトコル、ICNxの研究では、ネットワーク内キャッシュによる高速なデータリカバリ方式を開発し、更なる遅延の削減が可能となるプロトコルの実現を目指します。
[1] Cefore, ICN通信を実現するオープンソース実装, https://github.com/cefore/