研究開発の概要

サイバネティック・アバターのインタラクティブな遠隔操作を持続させる信頼性確保基盤

1.プログラムにおける位置づけ

本研究開発プロジェクトは、身体・脳・空間・時間の制約からの解放を目指すソシオCAと体内CAの実現を支える高信頼通信環境の実現を目指します。信頼性確保基盤として異なるCAに共通する技術的・制度的課題を明らかにし、特に遅延やジッタが大きいネットワーク環境や瞬断が起きるなどの不安定な通信状況においてもCAの遠隔操作の信頼性を確保することで、2050年のCAが至る所に配備され、様々な活動が行われる社会を支えます。
また、これらの社会実装に求められる、ローカル5Gの制度化など課題解決に必要な国内外の通信技術の標準化活動を進めるとともに、他プロジェクトとの連携により実・仮想空間技術の標準化や制度的課題の解決に資する活動を推進します。

2.研究開発の概要及び挑戦的な課題

本研究開発プロジェクトは、ムーンショット目標1が目指す2050年の人とCAの共棲社会を支える高信頼通信環境の実現を目標としています。この達成のために、3つの研究開発テーマ、①CAに対して適切な無線通信環境を提供するスマートスポットセル(SSC)の構成技術、②操作者とCAを繋ぐエンドツーエンド(E2E)ネットワーク最適構成技術、③ジッタ低減と低遅延化による信頼性確保プラットフォームの構築を実施します。

CAの遠隔制御では、通信経路上の不具合などにより通信速度のゆらぎや切断などが生じ、CAの動作不安定や操作者へのフィードバック遅延などの問題を引き起こします。その結果、CAの操作やCAと触れ合うユーザとのコミュニケーションを安定的に継続することが難しくなります。このような課題の解決を目指し、①CAを取り巻く無線環境を柔軟に制御することで安定化を図る無線制御技術、②広いエリアで多くのCAが活躍する環境でも通信速度や遅延を保証するネットワーク最適化技術と通信エリアマネジメント技術、③インターネットなどのベストエフォート網を考慮してE2Eの品質保証経路を構成する信頼性確保プラットフォームの開発に取り組み、それらを組み合わせた信頼性確保基盤の構築を目指しています。この基盤を1人が複数(N)台のCAを切り替えながら操作する1×N通信や、1台のCAを複数(M)人が異なる技能を活用して分担しながら連携して操作するM×1通信に適用することを念頭に、アーキテクチャの策定や、計算機シミュレーションなどを用いた性能評価に着手しており、実装技術の開発に向けて検討を進めています。

3.今後の展開

今後、信頼性確保基盤の検証環境を構築し、ムーンショット目標1のソシオCAや体内CAの各プロジェクトと連携して、通信性能の評価のみならずCAのスムーズな動作の検証や、CAと触れ合うユーザ体験に関する検証などを総合的に進めます。また、将来の人間とCAの共棲社会における課題を洗い出し、信頼性確保基盤の在り方について議論を深めるとともに、操作者とCAやCAと触れ合うユーザのインタラクティブなコミュニケーションを持続させる基盤技術の早期確立と社会展開を目指します。