低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2022-PP-10

情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.6)
―エンドユーザーにおけるケーススタディ(乗用車へのMaaS と自律運転の影響について)―

  • SDGs7
  • SDGs9
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概要

 情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響について、ICTの利便性を享受し、かつデータ需要の発生源であるエンドユーザーを対象に検討した。ケースとして自律運転とMaaSが社会に浸透した時の乗用車台数の変化、通信量、消費エネルギーなどについてモデルにより考察した。

 モデルにおいては、自律運転車の普及にともない、その30%が自家所有からオンデマンド型の乗用車(主としてロボタクシーやカーシェア)の利用に移り、ロボタクシーは現在のタクシーの類推から自家用車の約4倍の移動需要を満たすとした。自律運転の国内市場への普及は市場調査資料から、2050年に約800万台と想定した。
 この結果、2050年における運転免許保持者数比例で考慮した乗用車数5300万台が自律運転車の導入により約1000万台減少して4300万台になると推定された。必要な通信量は1TB/台/日と仮定して3000EB/年、アクセス系の通信量は7Gbps~700Gbps/基地局、これに対応する消費電力は14~60TWh/年と推定された。一方で自動車台数の削減に対応する省エネルギー効果は500TWh(2050)と推定され、MaaS+自律運転の普及による自動車台数の削減がエネルギー的にも好ましいと推定された。
 自律運転とMaaSの社会への導入により、社会的効用として高齢者、移動弱者の移動の自由度が大幅に向上し、生活の質の向上が得られること、交通事故の減少による社会的コストの低減が1000ドル/人程度との推定もなされている。自律運転車普及のためには、自律運転技術の促進と実証実験が特に重要であるが、本提案書では触れなかった法的側面、経済的側面および社会環境面の制度の整備をともなった政策の推進も重要である。

提案書全文

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