低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2022-PP-05

情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.5)
―ネットワーク関連消費エネルギー低減の技術課題とその解決手段―

  • SDGs7
  • SDGs9
  • SDGs13

概要

 前報において情報化社会の進展に伴うトラフィック量の増加が予想され、現在の技術のまま全く省エネルギー対策がなされないと仮定すると、ネットワーク関係の消費電力は世界で2030年には2400TWh、2050年には400PWhに達すると推定された。

 本提案書では、ネットワーク消費電力の抑制にどのような技術が有効かを調査検討した。ネットワークの設備でルータと無線基地局が特に消費電力が大きいので、ルータおよび無線基地局を構成する機器に着目し、これらに加えてシステム/ソフトウェアの効果も検討した。その結果を改善幅により達成可能性が高いModestケースと可能性の上限程度を想定したOptimisticケースとしてまとめた。ルータ、基地局ともに現在は待機電力が全体の消費電力の80%を占めるため、ハードウェアの改善とともに、システムアーキテクチャ、ソフトウェアによる対策が必要な部分も大きい。
 2030年の消費電力推定において、ルータにおいてはラインカードと光電変換器に着目して微細化技術と実装技術などの効果について、無線基地局においてはアンテナ、パワーアンプ、およびこれらの制御システムの効果について検討した。ここでパワーアンプの消費電力の低減は単体では困難と考えられた。システムアーキテクチャが寄与することで消費電力はハードウェアの合計からModestケースで1/2.5からOptimisticケースで1/5まで低減できると推定した。この結果2030年のネットワークの消費電力はModestケースで国内20TWh、世界640TWh、Optimisticケースで国内8TWh、世界170TWhと推定された。この中では無線基地局の消費電力が大きく、Modestケースで国内16TWh、世界460TWh、Optimisticケースで国内4TWh、世界100TWhと推定された。
 2050年は遠い将来のため、その予測の信頼性は高くはない。Modestケースは2030年までと同等の改善率で進捗するとした。Optimisticケースでは、光電融合技術などが寄与するとした。また、パワーアンプの消費電力低減は難しいことが予測されたため、システム改善による効果を大きく 取り入れた。この結果2050年のネットワークの消費電力推定としてModestケースで国内600TWh、世界14,000TWh、Optimisticケースで国内100TWh、世界3,000TWhと推定された。このうち無線基地局消費電力はModestケースで国内340TWh、世界で11,000TWh、Optimisticケースで国内70TWh、世界2,500TWhと推定された。結局、2030年までは現行技術の改善によりネットワーク消費電力は許容不可能な状態にまでは達しないと考えられる。
 通信ネットワークには社会インフラとして常時接続、全域接続という社会的要請があるため、特にアクセス系においては機器単体の省電力には限界があり、システム、ソフトウェアによる省エネルギーの推進が重要と考えられる。また、通信手段としては光がもっともエネルギー効率が良く、高速大容量であることから、今後も光を通信手段とする領域が拡大する。一方でメモリ機能や演算機能は電子によることから、光電変換が種々の場面で必須になるため、この省エネルギー技術は極めて重要である。

提案書全文

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