低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2019-PP-18

新しいエネルギー変換・貯蔵機器技術および未利用熱源の導入による地域分散エネルギーシステムの経済性と炭素排出削減評価

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概要

 民生部門、特に東京のような大都市部における商業・事業所ビルの省エネルギー化は、低炭素社会実現に向けた大きな課題であることはよく知られている。都市部での省エネルギー対策として、コジェネレーションシステム(CGS)、太陽電池(PV)などの分散型エネルギーシステムに加え、省エネルギーを徹底するネットゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)設計、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)設計や新型ヒートポンプ(HP)技術の向上による地中熱や河川熱などの未利用エネルギー源も注目されている。住宅街区でも、蓄電池を持つ需要家間の電力の相互融通への期待が大きい。

 本提案は、大規模ビルを含む都市中核部の需要家間の連携モデルと、郊外住宅街区における電力融通の実証分析により、相互融通の効果の評価と課題の抽出を目指す。
 前者では、平成29年度の都内ビル3棟の分析を、東京都江東区内151地域に拡大し、建物もオフィスビル(大規模・中小規模)、商業ビル、集合住宅、戸建て住宅、ホテル、病院、スポーツジムの8需要家に分類した。151地域内及び地域間の熱と電力の融通、さらに電気事業者への余剰電力販売を管理する地域エネルギー管理センター(DEC)を想定した。次に、天候のエネルギー需給への影響を見るために、1年を(夏・冬・中間期)×(平日・祝日)×(晴天・曇り・雨)+(ピーク3日)の19期に細分化し、天候による太陽電池(PV)出力の変化と気温による空調用需要の変化の影響を評価した。
 結果として、平年時天候の在来型システムを基準とすると、①未利用熱エネルギー源と需要家間の地域内エネルギー融通を導入すると、年間合計ではコスト面で約22%、CO2排出では26%の削減が同時にもたらされた、②融通をさらに地域間に拡大しても、追加的なコスト削減とCO2排出削減はいずれも1ポイント程度にとどまった、③夏季平均気温が1℃(2℃)上昇すると、在来型システムでは年間コストが6.6%(13.3%)増加し、CO2排出は1.9%(4.0%)増加した。④未利用熱エネルギー源と需要家間地域内相互エネルギー融通がある場合、夏季平均気温の1℃(2℃)上昇時にも、コストは基準値よりもなお16%削減(10%削減)がなされ、CO2排出も24%(22%)削減がなされた。⑤夏季平均気温が1℃(2℃)上昇すると、HP導入はいずれのケースでもほぼ約30%(60%)導入が増加した一方、吸収式冷凍機は、未利用エネルギー源利用不可能な場合45%(90%)増加に対し、利用可能なら25%(61%)増に緩和される。
 後者、郊外の街区の評価では、民生部門におけるPVや蓄電池の導入が進む中、エネルギーを地産地消するシステム構築が注目されている。これにより電力系統への負荷が低減し安定性を高めることが期待される。電力融通システムは現在試験的な導入があるが、システム構成機器の容量や規模、収益性など多くが未だ検討段階にあることから、模擬システムの開発が求められている。本提案では、愛知県郊外住宅地を対象にこれらの課題を定量評価するための電力融通シミュレーションモデルの開発を行った。各種エネルギー実測値と比較した結果、モデルの誤差は系統電力からの年間買電量は実測比-7%、PV余剰電力の売電量は実測比-0.4%であった。さらに、一般的な街区においてPVや蓄電池、HP給湯器が建物間で連携運用されない状況と融通される場合を比較した結果、固定価格買取制度適用下においても需要家間での融通によりPVの自家消費率が向上し、同時に電力会社からの買電量を1.4%削減可能なことが示された。
 このように、需要家間の連携は省エネルギーと再生可能エネルギー利用の拡大を通したCO2排出削減に有効であるが、この実現には融通を支援する制度と統合的な管理システムの開発が不可欠と考えられる。

提案書全文

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