低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2015-PP-11

民生家庭部門の省エネルギー促進からの低炭素社会実現(Vol.2)

概要

 家庭自体の低炭素化を促すために実施した「家庭の電力使用量見える化実験」により、継続的な節電行動を促すためには、単に電力使用量を表示するのではなく、他者との比較による社会規範評価の刺激や必要最低限の情報を効果的に提供するナッジ(“Nudge”)の概念を取り入れることで低炭素化行動を支援する必要があることが明らかとなった。また、「家庭の電力使用量見える化実験」により平成25年度から収集した実データに基づき、今後の節電アドバイスに応用可能な複数の知見が得られた。

 冷蔵庫のデータ分析では、i-cosmos家庭の約27%で買い替えによる節電余地があることが確認された。これらの家庭の冷蔵庫年間消費電力は600kWhを超えており(平均値は年間804kWh)、最新の冷蔵庫(年間消費電力200kWh)へ買換えた場合、年間の電気代は平均約1/4に削減され、冷蔵庫耐用年数以内に初期投資を回収できることから、費用便益評価を実際の行動につなげるために、現在LCSで取り組んでいる「電気代そのまま払い事業」への誘導も今後期待できると考えられた。また、i-cosmos家庭の約70%で冷蔵強度の設定変更による節電余地もあることが確認された。
 テレビのデータ分析では、i-cosmos家庭の約81%で画面輝度の設定変更による節電余地があることが確認されたほか、意識上の視聴時間よりも実際の視聴時間の方が長い傾向にあったことから、こまめな電源オフも有効であることが示唆された。
 今年度実施したi-cosmosへの節電アドバイス機能では、カタログ値や実験室データから導いた節電効果ではなく、実際に計測されたデータに基づいて節電効果を算定し、社会心理学の手法に基づいて節電アドバイスを提示することが可能となった。
 今後もデータ分析を進めて節電アドバイスに応用可能な知見を得ると同時に、節電アドバイスや節電目標の提示による実際の節電効果を明らかにし、日本全国に本システムを広める必要がある。

提案書全文

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