低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2019-PP-08

固体酸化物形燃料電池システム(Vol.7)
—高温水蒸気電解の技術およびコスト評価—

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概要

 固体酸化物形水蒸気電解セル(SOEC)システムの技術と経済性に関する分析を通じて、将来の再生可能エネルギーの余剰電力利用を想定した水蒸気電解による水素製造・貯蔵プロセスのコストについて検討した。固体酸化物形燃料電池(SOFC)の製造コストの知見を基に、エネルギー貯蔵の観点から、リチウムイオン二次電池(LIB)とSOECのコスト比較を行った。

 系統電力コストを想定した場合、現在のシステムコストでは、水素の貯蔵時間が約4日以上の場合において、LIBの充放電に対し可逆型SOFC/SOECシステムによる水素貯蔵の優位性が示された。また、将来および発展型のシステムコストに対して、水素の貯蔵時間がそれぞれ約2日、約1日の場合において可逆型SOFC/SOECシステムの優位性が示された。さらに、水素製造コストについて政府目標である30円/Nm3-H2を達成する必要条件について検討した。SOECシステムコストが88円/Wにおいて、水素貯蔵時間24h、電力コスト5円/kWh、稼働率60%の条件で、水素製造コスト30円/Nm3-H2を達成できることが示された。
 以上の検討から、再生可能エネルギーの変動に追随できるSOECモジュールの開発、SOECモジュールの長寿命化と小型化、周辺設備である圧縮機と水素貯蔵タンクのコスト低減、熱交換器の小型化、および新技術としてのプロトン型FCの開発が今後の開発項目としてあげられる。加えて、今後の再生可能エネルギーの変動の時定数(時間、日、週、月)に即した水素貯蔵の利用形態や市場の開拓、および水素ステーションを想定した比較的小規模あるいは中規模のSOECシステムの開発が重要である。

提案書全文

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