[脳の機能] 脳を知る(脳の機能)

戦略目標

脳機能の解明」(PDF:17KB)

平成9年度採択分

フェロモンの記憶に関わるシナプスメカニズムの解析

研究代表者(所属)
市川 眞澄((財)東京都神経科学総合研究所 解剖発生学研究部門 主任研究員)
概要
フェロモンは動物の社会生活に重要な因子であり、鋤鼻神経系が受容および情報処理に関わっています。研究 では、自然の刺激によるシナプスの可塑性と記憶との関わりを明らかにする目的で、フェロモンの記憶を司る鋤鼻神経系副嗅球内の相反シナプスという機能的に 重要なシナプスに注目して、フェロモン刺激とシナプスの可塑性との関連を総合的に解析します。この研究によりシナプスレベルでの記憶学習のメカニズムを明 らかにします。
 

脳膜神経相関の分子機構

研究代表者(所属)
裏出 良博((財)大阪バイオサイエンス研究所 部長)
概要
脳膜と中枢神経系は脳脊髄液を介して密接な情報交換を行い、相互の機能維持に積極的に関わっています。本 研究では脳膜由来の新規神経調節因子・分化促進因子・神経死誘導因子とその受容体を同定し、その作用機構を分子レベルで解明します。その成果は、脳膜によ る中枢神経系の恒常性維持機構を明らかにし、その機能不全による疾患の予防と治療につながります。
 

シナプス可塑性の分子機構と脳の制御機能

研究代表者(所属)
小澤 瀞司(群馬大学医学部 教授)
概要
可塑性変化を中心とするシナプスの機能発現の分子機構とシナプス機能が神経回路網での情報処理および個体 の行動制御に果たす役割を解明します。実験では、神経回路網の解析が十分に進んでいる海馬と小脳のシナプスを主な対象として、ウイルスベクターを用いた伝 達物質受容体遺伝子の導入法、標的遺伝子破壊法などの遺伝子工学技術により、シナプス機能に外来性に変動を加えて、それが神経回路網での情報処理と個体レ ベルでの脳の制御機能に与える影響を解析します。
 

G蛋白質共役受容体の高次構造

研究代表者(所属)
芳賀 達也(学習院大学理学部 生命科学研究所 所長・教授)
概要
Gタンパク質共役受容体は、情動・睡眠・痛みなど遅い伝達系や、早い伝達系の制御など脳機能一般に関わり ます。各受容体に多数のサブタイプが存在し、多くの臨床薬の標的となっています。本研究では、ムスカリン性アセチルコリン受容体をモデルとして選び、大量 に発現・精製して2次元及び3次元結晶を作成し、高次構造の決定をめざします。これによって、Gタンパク質共役受容体の特異的リガンドを理論的に推測する 道を拓きます。
 

神経系の遺伝的プログラムと可塑的メカニズム

研究代表者(所属)
松崎 文雄(理化学研究所発生再生科学総合研究センター グループディレクター)
概要
神経系の複雑な回路網の形成は、神経細胞が多様な個性を獲得することに始まり、その個性に従って、それぞ れの神経細胞が標的細胞と機能的なシナプスを正確に形成することで完成します。本研究では、神経幹細胞から神経細胞が生じる分裂過程において、神経細胞の 個性を決定する遺伝的プログラムを追及するとともに、シナプスの形成と構造的可塑性を制御するメカニズムを解析することによって、神経系の発生分化の基本 原理を明らかにします。
 

脳の神経回路形成と可塑性の分子機構

研究代表者(所属)
村上 富士夫(大阪大学大学院生命機能研究所 教授)
概要
神経結合の可塑的変化が生じるときには、脳の発達期に起こる様々な事象が繰り返されており、それらの分子 機構を解明することは、脳の機能の仕組みを知る上で極めて重要です。本研究では、神経回路形成を支える分子機構、その中でも特に交差性神経回路形成に焦点 を絞り、発達期脳において神経軸索が正中線で交差する際の分子機構、さらに軸索の正中交差において可塑性を生じるメカニズムの解明を進めます。
 

平成8年度採択分

アルツハイマー病における神経細胞死の解明

研究代表者(所属)
井原 康夫(東京大学大学院医学系研究科 教授)
概要
一般人口における大脳皮質、髄膜におけるアミロイド沈着様式を明らかにした。特に、ほとんどの非痴呆者の 髄膜および大脳皮質において、40歳位から指数関数的にアミロイドが沈着することを明らかにした。ApoE4のアリルを持っていた場合、おそらく5-10 年くらいアミロイド沈着が早く起こることを明らかにした。これがApoE4を有した場合アルツハイマー病の感受性が高いことの原因であろうと推論した。前 頭側頭型痴呆(FTDP-17)に見られるタウの突然変異を細胞に導入し検討したところ、正常遺伝子に比して大きな異常が起こらないことを発見した。これ は、FTDP変異がgain-of-functionを引き起こすことを示唆する所見である。また、P301L、R406Wの脳を生化学的また組織学的に 解析し、線維沈着よりも細胞死がこの疾患の本質ではないかとの所見を得た。
 

運動指令構築の脳内メカニズム

研究代表者(所属)
河野 憲二(産業技術総合研究所脳神経情報研究部門 部門長)
概要
動物の滑らかで素早い運動がどのような神経機構によって実現されているのかを明らかにすることを目標と し、生理学、解剖学、行動学実験と計算論を有機的に組み合わせながら検討しました。広い視野の視覚刺激の動きで起こる「追従眼球運動」の制御では、大脳 MST野が視覚刺激の動きを検出し、その動きの情報を小脳が運動指令に変換していることがわかり、動物の巧みな運動制御メカニズムの一端を明らかにしまし た。

人間の高次精神過程に関わるコラム構造・配列

研究代表者(所属)
田中 啓治(理化学研究所脳科学総合研究センター グループディレクター)
概要
MRI装置を用いた脳活動非侵襲計測法で人間の大脳皮質の研究を行いました。超高磁場を用いるなどの改良 により、高い空間分解能を持ったMRI非侵襲計測法を開発し、人間の第一次視覚野における眼優位性コラムのイメージングに成功しました。人間の眼優位性コ ラムはサルと同じように左目コラムと右目コラムが交互にくり返すストライプパターンを構成しましたが、個々のコラムの幅は約1ミリでサルの約2倍であるこ となどが明らかになりました。
 

神経ネットワーク形成の遺伝子プログラム

研究代表者(所属)
野田 昌晴(岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所 教授)
概要
発生過程における脳・神経系における領域特異化は、引き続いて起こる領域特異的神経投射 (topographic projection)の基盤である。我々は網膜において領域特異化に関わる分子を大規模にスクリーニングし、topographicな発現を示す分子を 前後軸方向に33分子、背腹軸方向に20分子同定した。これらの分子は分泌因子、転写調節因子、受容体分子、酵素、細胞内シグナル伝達分子、細胞骨格関連 分子等に分類された。我々は、いくつかの新規分子についてその機能を解明するとともに、関係する分子間の相互関係を明らかにした:レチノイン酸合成酵素、 新規のBMP-4中和因子、転写調節因子等。
 

神経結合の形成、維持、再編成を制御する分子機構の解明

研究代表者(所属)
藤澤 肇(名古屋大学大学院理学研究科 教授)
概要
ニューロピリンは神経軸索ガイダンス因子セマフォリン(semaphorins)の受容体である。我々 は、相同組み換えによりS e m a 3 A 遺伝子、並びにS e m a 3 A の特異的な受容体であるNeuropilin-1遺伝子の機能を破壊したマウスを作製し、その表現型の解析を行い、Neuropilin-1を介した Sema3Aシグナルが軸索ガイダンスのみならず、細胞の移動をも制御し、秩序だった末梢神経系と交感神経系のパターンの形成に重要な役割を果たしている ことを明らかにした。さらに、ニューロピリンは他の膜分子プレキシンと複合体を構成して、クラス3セマフォリンの受容体として機能すること、また、プレキ シン自身に直接結合するセマフォリンが存在することを明らかにした。
 

脳形成遺伝子と脳高次機能

研究代表者(所属)
三品 昌美(東京大学大学院医学系研究科 教授)
概要
脊椎動物のモデル生物ゼブラフィッシュにおいて、脳・神経回路網の形成整備機構を解析する神経回路特異的 遺伝子操作法およびTMP欠失変異法を開発した。さらに、学習能力の高いC57BL/6マウスの胚幹細胞を用い、プロゲステロン受容体の制御領域を融合さ せたCreリコンビナーゼと脳部位特異的プロモーターにより、脳の部位時期特異的遺伝子ノックアウト法を開発した。
 

平成7年度採択分

脳神経系を構成する細胞の多様性の形成機構

研究代表者(所属)
岡野 栄之(大阪大学大学院医学系研究科 教授)
概要
進化の過程で保存された神経発生のしくみを明らかにするため、ショウジョウバエ・線虫・マウスなど複数の モデル生物系の利点を生かして研究を行った。神経発生に異常を示すショウジョウバエ変異体のスクリーニングの結果、EGF受容体のアンタゴニストとして機 能するArgosやRNA結合蛋白質Musashiなど神経系細胞の運命決定に関与する新規な分子を同定した。Musashiはあらゆる脊椎動物にも存在 し、神経幹細胞に選択的に発現することを見出した。このMusashiの抗体を用いて、成人脳内に神経幹細胞が存在することを明らかにした。
 

遺伝子変換マウスによる脳機能の解明

研究代表者(所属)
勝木 元也(東京大学医科学研究所 教授)
概要
ドパミン受容体5種類(D1~D5)すべてのノックアウトマウスおよび複数同時欠損マウスを作製した。 D1:D2同時欠損マウスは、授乳期を過ぎる生後2週目からまったく食欲を示さず、餓死する。これは、D1、D2が、視床下部食欲中枢の制御に関与してい ることを示している。一方、H-rasノックアウトマウスでは海馬の長期増強が亢進し、NMDA受容体の活性化が生じていた。また、水迷路試験や、渇水試 験では、記憶と学習に有意の向上が認められた。
 

ヒト脳の単一神経細胞の発現遺伝子

研究代表者(所属)
金澤 一郎(東京大学大学院医学系研究科 教授)
概要
ヒト脳に発現する機能遺伝子として、新規ナトリウムチャンネルを発見し、それを含めてナトリウムチャンネ ルのカタログを定量的に世界で初めて作成した。また、ヒト脳の単一神経細胞に発現する機能遺伝子を検出するために、レ-ザ-ダイセクタ-と超微量 RTPCR法を開発した。この方法をヒト脳の単一神経細胞のナトリウムイオンチャンネル解析とCAG リピ-ト病脳の解析に応用して、神経細胞の個性の一端を明らかにした。
 

感覚から運動への情報変換の分散階層処理神経機構

研究代表者(所属)
篠田 義一(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 教授)
概要
サルの眼球運動系を対象として、眼前に現れた動く指標を視覚入力として網膜で捉えた後、この感覚入力信号 を用いて、指標へ正しく視線を向け、さらに動く指標を正確に目で捉えるのに必要な眼筋の出力信号が、脳内でどのように生成されるかを、電気生理学的・解剖 学的手法を用いて解析した。大脳前頭眼野に滑動性眼球運動や固視に関係する部位があらたに見いだされ、急速眼球運動にかかわる上丘からの出力経路、上丘内 の局所神経回路、上丘出力の制御機構を明らかにした。
 

脳内光受容とサーカディアンリズム

研究代表者(所属)
深田 吉孝(東京大学大学院理学系研究科 教授)
概要
ピノプシン・VALオプシン・エクソロドプシンなど新規脳内光受容体の機能解析を通して光周性発現や概日 時計の光位相同調の分子機構に迫った。さらに、光感受性の時計組織であるニワトリ・ゼブラフィッシュ松果体での時計解析系を構築し、その中でMAPキナー ゼが概日時計の発振と光同調に極めて重要な役割を果たすことを発見した。また、新規bHLH-PAS型転写因子BMAL2をヒトやニワトリ等で見出し、ニ ワトリ松果体において時計因子として働くことを示した。
 

視覚認識の脳内過程

研究代表者(所属)
藤田 一郎(大阪大学大学院基礎工学研究科 教授)
概要
霊長類の側頭葉視覚連合野(IT野)における視覚情報処理の新たな側面を明らかにした。IT野とその前段 V4野で両眼視差が処理されていること、物体面構造の脳内復元がIT野にいたる経路でなされていること、IT野細胞の2次元特徴刺激選択性の形成に GABAを介する抑制機構が関与すること、IT野とV1野がそれぞれ特徴的な解剖学的構造とシナプス可塑性を有すること、IT野の前半部と後半部のそれぞ れが、図形の部分と全体の知覚に強く関わっていることなどを示し、視覚認識の脳内過程に関する理解を進めた。
 

神経系形成における Glial cells missing 遺伝子の機能

研究代表者(所属)
堀田 凱樹(国立遺伝学研究所 所長・教授)
概要
ショウジョウバエの神経幹細胞からグリアと神経細胞を分化させるスイッチ遺伝子(gcm)を発見し、それ が8塩基を標的とする転写因子であることを発見した。また神経幹細胞におけるgcm発現パターンを詳細に解析して細胞運命決定の機構を明らかにした。グリ アが存在しないgcm 突然変異における神経回路異常を解析し、netrinなどの新規機能を見いだした。さらにgcm は血球産生系でも分化因子となっていることを発見した。gcm ホモログがマウス・ヒトなど広くファミリーとして存在することを発見し、哺乳類神経系および血球産生系でもgcm が働いている可能性があることを見いだした。

 

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