※ 所属・役職は、活動終了時点のものです。
戦略目標
「エネルギー利用の飛躍的な高効率化実現のための相界面現象の解明や高機能界面創成等の基盤技術の創出」
領域HP
研究総括
花村 克悟(東京工業大学 工学院 教授)
さきがけ研究領域 研究総括兼任
前研究総括 笠木 伸英(~平成27年6月)
(国立研究開発法人 科学技術振興機構 研究開発戦略センター 副センター長・上席フェロー/東京大学 名誉教授)
前研究総括補佐 橋本 和仁(~平成28年3月)
(国立研究開発法人 物質・材料研究機構 理事長)
概要
本研究領域は、豊かな持続性社会の実現に向けて、エネルギー利用の飛躍的な高効率化を実現するため、エネルギー変換・輸送に関わる相界面現象の解明や高機能相界面の創成などの基盤的科学技術の創出を目的とします。
具体的には、様々な相界面現象の基礎学理や制御・最適化技術を深化させることによって、エネルギー損失の大幅な減少を可能とする相界面、あるいは、高効率 エネルギー利用のための新たな高機能相界面を創造することに挑戦します。そのためには、ナノ、メソ、マクロといった異なるスケールの現象を統合的に解析・ 設計するための技法、相界面構造を制御・最適化するための理論的手法などを開拓することなどが必要です。さらに、これらの先端的な基礎研究の成果を、実際の機器やシステムの設計に効果的に適用し、それらの飛躍的性能向上、低炭素化、低コスト化に繋げることが重要です。
したがって、本研究領域では、エネルギーの高効率利用に向けた相界面におけるエネルギー変換・輸送機構の解明、マルチスケールの相界面現象を総合的に解析・設計するための計測、モデリング、シミュレーション技術の開発、相界面構造を制御・最適化するための数理科学的な手法などの基盤技術を創出するとともに、機器やデバイスの理論的最高性能を実現するための高機能相界面を創成することを最終目標とします。こうした目標を達成するために、既存の専門分野を越えた、あるいは異なる分野の科学的知識を融合した、総合的な取り組みを奨励します。
本研究領域は、文部科学省の選定した戦略目標「エネルギー利用の飛躍的な高効率化実現のための相界面現象の解明や高機能界面創成等の基盤技術の創出」のもとに、平成23年度に発足しました(リンク先は国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)となります)。
領域アドバイザー
江口 浩一 |
京都大学 大学院工学研究科 教授 |
岡崎 健 |
東京工業大学 特命教授 |
加藤 千幸 |
東京大学 生産技術研究所 革新的シミュレーション研究センター センター長・教授 |
栗原 和枝 |
東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 多元物質科学研究所 教授 |
斎川 路之 |
(一財)電力中央研究所 エネルギー技術研究所 副研究参事 |
中戸 義禮 |
大阪大学 産業科学研究所 特任教授 (~平成27年3月) |
萩原 剛 |
(株)東芝エネルギーシステムソリューション社 原子力委事業部 参事 |
宮野 健次郎 |
国立研究開発法人 物質・材料研究機構 フェロー |
吉田 真 |
(株)京セラメディカル 代表取締役副社長 |
渡辺 政廣 |
山梨大学 特命教授 |
平成23年度採択分
実環境計測に基づく高温電極の界面領域エンジニアリング
研究代表者(所属)
川田 達也 (東北大学 大学院環境科学研究科 教授)
概要
固 体酸化物形燃料電池(SOFC)はエネルギー安定供給と低炭素化とを両立させるシステムです。本格的実用化の鍵 となるのが電極界面の最適化ですが、複雑な界面現象の素過程を把握することは困難でした。そこで本研究では、界面領域をナノ、ミクロ、マクロのマ ルチスケールで捉え、それぞれの挙動を実環境下もしくはそれに近い環境で測定する計測法を開発・整備・統合し、界面領域設計のエンジニアリングを可能にす ることを目指します。
固体酸化物形燃料電池電極の材料・構造革新のためのマルチスケール連成解析基盤
研究代表者(所属)
古山 通久 (九州大学 稲盛フロンティア研究センター 教授)
概要
固 体酸化物形燃料電池の高効率化のためには、電池内の反応・輸送現象に伴って生じる不可逆的な損失の低減が重要です。本研究では、時間・空間スケールの異な る複数のシミュレーション技術を連係するとともに実験計測と協働することで、電極の三相界面における現象を解明し、その微構造制御に基づく高活性化に挑戦 します。化学系・機械系・材料系の多様な知識を集積することにより、材料と構造の両面から固体酸化物形燃料電池の電極の設計革新を目指します。
固気液相界面メタフルイディクス
研究代表者(所属)
高田 保之 (九州大学 大学院工学研究院 教授)
概要
気 液相変化や吸脱着など固気液相界面における熱物質移動の素過程はエネルギーシステムの性能を大きく左右します。本研究では、ナノ構造がもたらす機能をマク ロな流体現象へ積極的に利用することで既存性能の超越を目指す新しい学理(メタフルイディクス)を提起します。濡れ性、表面粗さ、空隙率など従来のマクロ スケールの指標を超越した複合構造の最適設計によって飛躍的に高効率な熱物質移動界面を創製します。
ナノとマクロの相界面と物質移動ナノサイクル
研究代表者(所属)
高柳 邦夫 (東京工業大学 名誉教授)
概要
ナ ノ構造とマクロ構造がコンタクトしたNano-in-Macro相界面での物質移動を研究します。エネ ルギーや環境に重要とされているリチウムイオン電池やナノ粒子触媒などは、互いに接合した異相間をイオンや電荷が移動しています。ナノとマクロ間には特殊 な相界面が創られ、イオン・電荷・組成などの物質移動ナノサイクルを制御します。本研究では、エネルギー高効率利用に資するため、世界最高分解能をもつ 0.5Å分解能収差補正電子顕微鏡法を活用して、これらの物質移動ナノサイクルを明らかにします。
界面科学に基づく次世代エネルギーへのナノポーラス複合材料開発
研究代表者(所属)
陳 明偉 (東北大学 原子分子材料科学高等研究機構 客員教授)
概要
本 研究では、従来のキャパシタの持つ高い出力密度に匹敵し、且つ、既存のリチウム2 次電池を凌駕するエネルギー密度をもった、ナノポーラス複合金属を基軸にした次世代エネルギーデバイスを創出します。エネルギーデバイスは、ナノ構造やナ ノ組織の表面・界面を通じて機能が発揮されるため、高性能電子顕微鏡、その場ラマン分光法、第一原理計算、分子動力学法の視点から、界面で原子・分子レベ ルでの現象を明らかにし、さらなる発見や改良に結びつけます。
平成24年度採択分
多孔性電極中のイオン輸送現象の解明と高出入力電池への展開
研究代表者(所属)
安部 武志 (京都大学 大学院 工学研究科 教授)
概要
リチウムイオン電池に代表される蓄電池を高速に充放電反応させるためには、蓄電池に用いられている電極中でイオンと電子が速やかに動く必要があります。本研究では、これまでよく知られていない電池活物質、導電助剤、バインダーからなる複雑な構造を有する電極内のイオンの動きを明らかにし、高速にイオン移動が生じる電極の設計指針を与えます。これにより速やかなイオン移動を達成し、電池の充放電反応の高速化を目指します。
酸化物半導体プリカーサーを用いる相互侵入型無機・有機(無機)バルクヘテロナノ界面の一括構築と太陽電池への応用
研究代表者(所属)
早瀬 修二 (九州工業大学 大学院 生命体工学研究科 教授)
概要
本研究は低コスト・高効率を狙った新太陽電池に関するものです。一般に太陽電池は多くの層が必要であり、それらの層を逐次作製するためセル作製に時間がかかり、高コストの原因の1つになっていました。本研究では太陽電池の心臓部である電荷分離界面を一度の塗布で作製できる新プロセス、新材料、新素子構造を設計します。①計算化学研究者、②化学合成研究者、③分光研究者、④プロセス研究者が結集し最適な電荷分離界面を設計し実現することによって低コスト・高効率太陽電池を目指します。
革新的アニオン導電性高分子を用いた三相界面の創製とアルカリ形燃料電池への展開
研究代表者(所属)
宮武 健治 (山梨大学 大学院 総合研究部 教授)
概要
アルカリ形燃料電池の高性能化・高耐久化の最重要課題である、①安定なアニオン導電性高分子の開発、②高性能な卑金属系電極触媒の開発、③反応場を制御した三相界面の創製、に取り組みます。共役イオン型アニオン導電性高分子とナノカプセル法により調製する卑金属ナノ粒子触媒を組み合わせて電極触媒層を作製し、燃料の酸化反応や酸素の還元反応が効率よく進行する電極触媒構造を明らかにします。最適化した電極触媒層とアニオン導電性高分子薄膜を用いて、アルカリ形燃料電池の性能と耐久性の大幅な向上を目指します。
エネルギー変換計算科学による相界面光誘起素過程の設計
研究代表者(所属)
山下 晃一 (東京大学 大学院 工学系研究科 教授)
概要
太陽光エネルギーの利用拡大のカギを握る技術を“相界面光誘起素過程”の観点からとらえ、各技術で求められる素過程の制御と最適化について理論化学・計算化学により解析します。エネルギー変換技術として有機系太陽電池と光触媒反応を取り上げ、有機高分子、遷移金属酸化物、Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体、カーボンナノチューブ、グラフェンを基礎材料として相界面を構築し、相界面構造、不純物ドーピング、構造欠陥等の複合的要因を制御、最適化するためのエネルギー変換計算科学を推進します。
平成25年度採択分
研究代表者(所属)
足立 幸志 (東北大学 大学院工学研究科 教授)
概要
機械のエネルギー損失の多くを占めている「摩擦」を大幅に減少させるための研究を行います。摩擦は、材料や摩擦条件など数多くの因子により大きく変化するため低摩擦界面を理論的に設計することは困難であると認識されています。これに対し本研究では、摩擦によって自己形成されるナノ界面に着目し、機械のみならず材料、化学、物理の視点から摩擦により誘起されるトライボ化学反応を解明し制御することによりに超低摩擦を実現するナノ界面層の創製を目指します。
研究代表者(所属)
小林 光 (大阪大学 産業科学研究所 教授)
概要
シリコンウェーハを過酸化水素とフッ化水素酸の溶液に浸し、白金触媒体に接触させるだけで、瞬間的に表面にシリコンナノクリスタル層が形成されます。その結果、反射率がほぼ零となります。これを結晶シリコン太陽電池に利用すると、大きな光電流が得られます。シリコンナノクリスタル層は原子レベルの欠陥をほとんど含んでおらず、表面を不活性にする処理を用いると、高い光起電力も得られます。したがって、低コストの下で結晶シリコン太陽電池を高効率化することができます。
研究代表者(所属)
長尾 忠昭 (物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 グループリーダー)
概要
セラミクス、ガラスのヘテロ薄膜の表界面や不純物に起因する低次元電磁場応答現象をベースに、高い赤外フィルタリング特性、熱吸収輻射特性、あるいはエネルギー変換特性をもつ材料・デバイスを開発するための学理・方法論を構築します。元素戦略的な観点からの材料探索を進め、それらをナノファブリケーション技術や電磁場制御技術と組み合わせ、新しい熱エネルギー変換材料・デバイスの創成に挑戦し、低炭素化社会実現に資するナノ材料工学を開拓します。
研究代表者(所属)
圓山 重直 (東北大学 流体科学研究所 客員教授)
概要
大規模メタン産出に資するため、海洋メタンハイドレート(以下MHとする)層からメタンを抽出するメカニズムの解明を目指します。本研究では、MH層の固・気・液ミクロ界面現象を観察・解析し、マクロスケール熱物質移動と化学反応のモデル化に繋げます。これらの理解を基に、実際のメガスケールの高圧MH 地層内のメタン生成へ展開し、新分野の相界面科学テクノロジーとしてグリーン・イノベーションに貢献します。