[生命システム] 生命システムの動作原理と基盤技術

研究領域HP

戦略目標

生命システムの動作原理の解明と活用のための基盤技術の創出」(PDF:22KB)

研究総括

中西 重忠((財)大阪バイオサイエンス研究所 所長)

概要

 本研究領域は、生命システムの動作原理の解明を目指して、新しい視点に立った解析基盤技術を創出し、生体の多様な機能分子の相互作用と作用機序を統合的に解析して、動的な生体情報の発現における基本原理の理解を目指す研究を対象とします。

具体的には、近年の飛躍的に解析が進んだ遺伝情報や機能分子の集合体の理解をもとに、細胞内、細胞間、個体レベルの情報ネットワークの機能発現の機構、例えば生体情報に特徴的な非線形で動的な反応機構などを、新しい視点に立って解析を進めることによって生命システムの統合的な理解をはかる研究を対象とします。

さらには、生体情報の発現の数理モデル化や新しい解析技術の開発など基盤技術の創成を目指した研究も対象としますが、生命現象の実験的解析と融合した研究を重視するものです。

平成19年度採択分

細胞における確率的分子情報処理のゆらぎ解析

研究代表者(所属)
上田 昌宏 (大阪大学 大学院理学研究科 教授)
概要
近年の細胞内1分子計測法の進展により、細胞内部の分子情報処理システムは、分子運動の無秩序さや反応の確率性に起因する「ノイズ」を内包し、それを機能発現へとむすびつけることによって柔軟でダイナミックなシステムを作り上げている姿が見えてきました。本研究では、「ノイズ」の生成・処理・伝搬に着目した1分子レベルの精密計測と数理モデルの構築を通して、分子情報処理システムの確率的演算原理の解明を目指します。

シアノバクテリアの概日システム

研究代表者(所属)
近藤 孝男 (名古屋大学 大学院理学研究科 教授)
概要
生物時計は生命が地球上で効率良く生活するための基本的メカニズムです。今までに、シアノバクテリアの3つのKai蛋白質とATPを試験管内で混ぜるだけで安定した24時間のリズムを発生させることに成功しています。本研究では、蛋白質が正確な時を刻むメカニズムを解明します。次に、この振子が細胞の中でどのようにシステムを構成し、生物時計としての機能を果たしているかを解明します。

RNAサイレンシングが司る遺伝子情報制御

研究代表者(所属)
塩見 美喜子 (東京大学 理学研究科 教授)
概要
小さなRNAが引き起こす遺伝子発現抑制現象をRNAサイレンシングと称します。RNAサイレンシング は、発生、器官形成、代謝などに必須な遺伝子の発現を制御することによって、あるいはトランスポゾンやウイルスの侵入からゲノムを守ることによって、生命維持や種の保存を確固とします。本研究では、小さなRNAによる、生命活動の基盤となる遺伝子制御プログラムを理解することで、生命の分子設計図の解明に寄与することを目指します。

ユビキチンシステムの網羅的解析基盤の創出

研究代表者(所属)
中山 敬一 (九州大学 生体防御医学研究所 教授)
概要
ユビキチンシステムは多くの重要な生命現象を調節しており、1000種類以上の酵素が関わっています。しかし、その酵素と標的タンパク質との対応関係はあまり解明されておらず、ユビキチンシステムを網羅的に解析する技術の開発が求められています。本研究は、遺伝学とプロテオミクスを組み合わせた新しい方法論を開発することによって、システムとしてのユビキチン化を理解し、多くの生命現象を分子論的に解明することを目指します。

平成18年度採択分

器官のグローバルな非対称性と一細胞の極性をつなぐ機構の解明

研究代表者(所属)
上村 匡 (京都大学大学院 生命科学研究科 教授)
概要
頭からお尻へ、腕の付け根から指先へと、私たちの体は軸に沿って非対称な形をしています。この器官のグローバルな非対称性の情報を読み取って、個々の細胞は極性を獲得します。本研究では、生きたモデル動物の細胞の中で、タンパク質の動きを追跡し数理的な解析を加えることで、器官と細胞の非対称性を結ぶ仕組みの解明を目指します。細胞の形と機能は密接に連関しており、形態の発達不全の結果生じる病気(機能不全)の描像をシャープにすることを目標とします。

短周期遺伝子発現リズムの動作原理

研究代表者(所属)
影山 龍一郎 (京都大学ウイルス研究所 教授)
概要
細胞の増殖や分化過程では、多くの遺伝子が正しいタイミングで機能しますが、その時間を計る生物時計の実体はよくわかっていません。転写因子Hes1やHes7が短周期の生物時計として働くこと、短周期発現リズムを刻む遺伝子が他にも多く存在することが明らかになりつつありますが、その全体像は不明です。本研究では、数理モデルの構築と検証を行い、短周期リズムを刻む遺伝子動態の分子基盤とリズム形成の意義を明らかにします。

シグナル伝達機構の情報コーディング

研究代表者(所属)
黒田 真也 (東京大学大学院 理学系研究科 教授)
概要
生命現象の本質は、多種多様な刺激を限られた種類の細胞内分子の活性にコードして適切に応答することにあります。このコーディングには、入力の違いを活性化する分子の組み合わせにコードするだけでなく、分子活性の時間波形に情報をコードする時間情報コーディングがあります。本研究では、同じ刺激の時間波形に依存して様々な応答を示す生命現象に着目して、シグナル伝達の情報コーディングの基本原理を抽出します。

生物の極性が生じる機構

研究代表者(所属)
濱田 博司 (大阪大学大学院 生命機能研究科 教授)
概要
一様な細胞集団の中に極性を生み出すことは、初期発生において極めて重要な現象です。本研究では、左右と頭尾という2つの極性を題材にして、対称性が破られる機構、さらには、体の極性の起源を明らかにします。左右や頭尾を決定するシグナル因子(Nodal,Lefty)をマウス胚中で可視化し、分泌後の挙動を観察します。得られた実験データを再現する数理モデルを構築し、初期発生を支配する原理を解明します。

行動を規定する神経回路システム動態の研究

研究代表者(所属)
森 郁恵 (名古屋大学 大学院理学研究科 教授)
概要
認識、記憶、学習といった脳・神経系のいとなみを理解することは、現在の神経科学において、重要な課題です。本研究では、全神経回路がわかっている線虫に着目し、温度学習行動を規定する神経回路動態の仕組みを明らかにすることを目標とします。そのために、神経細胞の活動や学習行動の鍵となる遺伝子の働きについてイメージング技術を開発し、必要に応じてコンピュテーショナルバイオロジーを導入し、新概念の提言を目指します。

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