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戦略目標
「新たな手法の開発等を通じた先端的な計測・分析機器の実現に向けた基盤技術の創出」(PDF:23KB)
研究総括
田中 通義(東北大学 名誉教授)
概要
本研究領域は、物質や材料に関する科学技術の発展の原動力である新原理の探索、新現象の発見と解明に資する新たな計測・分析に関する基盤的な技術の創出を目指す研究を対象とするものです。
具体的には、新材料や新規なデバイスの創出、新規な微細加工技術の創出等に資する計測・分析技術、環境中等に含まれる極微量物質の化学的存在形態に関す る新規な計測・分析技術等を対象とします。また、ナノスケールでの物質の形態に応じた物性や、表面、界面の化学組成や物性に関する新規な計測・分析技術も 対象とします。
さらに、既存の基本原理に基づく技術であっても、計測・分析の速度、感度、精度を飛躍的に向上させる技術あるいはその限界に挑む技術等、新原理の探索や新現象の発見と解明に資する研究や物質科学技術にブレークスルーをもたらすことが期待できる研究を含めます。
平成18年度採択分
プラズモニック走査分析顕微鏡
研究代表者(所属)
概要
金属ナノ構造内で励起した電子の量子的な集団振動「表面プラズモンポラリトン(SPP)」をプローブとして用いる新しいナノスケール顕微分析技術を開拓します。SPPが誘起するナノスケールの増強電場を試料に作用させながら、さらにプローブからナノニュートンオーダーの力を加えることによって試料分子に局所的に歪みを与え、それを光学応答の摂動として計測する全く新規なナノ分析・イメージング法を開発します。
半導体量子構造の探索とテラヘルツ波計測技術開拓
研究代表者(所属)
小宮山 進 (東京大学 大学院総合文化研究科 教授)
概要
半導体量子構造の探索を通して超高感度テラヘルツ検出器を開拓し、測定対象自体が発する微弱なテラヘルツ波の計測技術を開発します。それにより、物質の同定を越えて、測定系中の微少領域で起こる現象やダイナミクスの情報を得る手法を創出します。この計測技術は、物質の物性・小数分子の分析や化学反応・生体細胞の基礎研究だけでなく、医療・安全・環境等の広範な分野に大きな応用可能性を持つことが期待されます。
ソフトマターの分子・原子レベルでの観察を可能にする低加速高感度電子顕微鏡開発
研究代表者(所属)
末永 和知 ((独)産業技術総合研究所 ナノチューブ応用研究センター 研究チーム長)
概要
電子顕微鏡を使って、有機・生体分子など「軽元素からなる非周期性物質(ソフトマター)」を観察することは極めて困難とされてきました。電子顕微鏡の低加速化とレンズ球面収差補正技術を併用することによって、これまで第一の問題であった電子線損傷の影響を低減すると同時に、単分子観察における検出感度と時間分解能を飛躍的に向上させ、有機・生体分子の構造や振る舞いを分子・原子レベルでの直接観察することを可能にします。
※ 本プロジェクトは、CREST研究期間終了後継続して、平成24年~平成28年まで研究加速強化システム
によりJSTが支援を行いました(課題名「物質や生命の機能を原子レベルで解析する低加速電子顕微鏡
の開発」)。
中間評価結果(研究加速)
事後評価結果(研究加速)
レーザー補助広角3次元アトムプローブの開発とデバイス解析への応用
研究代表者(所属)
宝野 和博 ((独)物質・材料研究機構 磁性材料センター フェロー)
概要
磁気・半導体デバイスのナノ領域の原子分布を3次元的に可視化するために、フェムト秒レーザーにより針状試料表面からイオン化する原子を広い角度で取り込むレーザー補助広角3次元アトムプローブを開発します。同時に、あらゆる試料からアトムプローブ試料を作製する技術を開拓し、これまで解析不可能であった難分析試料ならびに半導体、磁気デバイスの高領域3次元原子分布解析を行う技術を確立します。
高機能光和周波顕微鏡の開発
研究代表者(所属)
水谷 五郎 (北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科 教授)
概要
2つの異なった周波数の光を生体試料などに照射し、そこから出る和の周波数の光を像化する顕微鏡を光和周波(SF)顕微鏡といいます。本研究では様々な技術革新により、この顕微鏡を、高い利便性、すなわち凝集体表面および内部でのダイナミクス研究、3次元観察、表面界面電子準位などの観察の能力を持ったツールとして発展させます。そして、この顕微鏡で初めて観察できる物性を探ります。
平成17年度採択分
物質科学のための放射光核共鳴散乱法の研究
研究代表者(所属)
概要
近年、SPring-8等の大型放射光施設が利用可能となり、性質の優れたX線が利用可能になってきました。本研究では、優れた性質を有しながら充分に活用できなかった原子核の共鳴励起過程と放射光とを最大限に活用することで先進的分光法を開発し、これまで不可能であった、物質中におけるそれぞれの元素やサイトについての詳細な研究を、複合極限環境下、ナノ構造体、超微量物質といった重要な研究対象において実現します。
バルク敏感スピン分解超高分解能光電子分光装置の開発
研究代表者(所属)
高橋 隆 (東北大学原子分子材料科学高等研究機構 教授)
概要
光電子分光法は外部光電効果を利用して物質の電子状態を直接測定できる強力な実験手段ですが、表面敏感性や電子スピン測定の困難といった問題を持っています。開発する「バルク敏感スピン分解超高分解能光電子分光装置」は、物質固有のバルク電子状態を高分解能でスピンまで分解して測定できるもので、高温超伝導体やカーボンナノチューブをはじめとする新機能物質の物性理解に大きく貢献することが期待されます。
材料開発に資する高感度多核固体NMR法の開発
研究代表者(所属)
概要
固体NMR法は、原子レベルの局所構造とそのダイナミクスに関する情報が得られ実材料の構造解析に有用な手段ですが、検出感度が低いことや、測定対象の核種が水素(1H)や炭素の同位体(13C)など双極子核にほぼ限定されているという問題がありました。本研究では、検出系の冷却やコイルの微小化によって高感度化を図ると共に、四極子核に対する全く新しい発想に基づく高分解能測定法を開発し、先端材料の開発に貢献することを目指します。
超高分解能高速イメージング質量分析技術(質量顕微鏡)の構築
研究代表者(所属)
内藤 康秀 (光産業創成大学院大学 光産業創成研究科 准教授)
概要
イメージング質量分析は、半導体物理や生命科学など幅広い研究分野で現象解明の重要な手段となる、「どんな物質が試料上のどこに在るか」を調べる計測技術です。本研究では、試料表面中の微小領域をレーザー照射によって「剥ぎ取り」、表面を構成する様々な物質(イオン)を質量に基づいて分離し、刻々と飛来するイオンの像を連続的に「撮影」する装置を開発し、物質の微細な分布状態を迅速に計測するイメージング質量分析を実現します。
水素のナノスケール顕微鏡
研究代表者(所属)
概要
水素は質量が軽く原子サイズも小さいため、容易に固体中に進入して固体の電気的・力学的性質を大きく変えることがあります。また、質量が軽いことを反映して、水素は量子的に広がって存在すると考えられています。本研究では、固体中の水素の挙動を明らかにするために、新たにマイクロビーム共鳴核反応を開発し、実環境下においてナノスケールで固体中水素の3次元分布測定を可能にします。また、核反応のドップラー効果を利用して表面吸着水素の波動関数観察を実現します。
平成16年度採択分
低次元ナノマテリアルと単一分子の振動分光・ESR検出装置開発
研究代表者(所属)
米田 忠弘 (東北大学 多元物質科学研究所 教授)
概要
単一スピンの検出は極限の微小領域計測、量子観測問題といった観点からも非常に興味深いテーマです。応用としては、原子レベルでの物性計測の他、最近の話題である量子コンピューターが挙げられます。本研究は、走査トンネル顕微鏡を主な手法とし、トンネル電流を用いた単一スピンの検出方法を確立しようとするものです。
フェムト秒時間分解走査プローブ顕微鏡技術の開拓と極限計測
研究代表者(所属)
重川 秀実 (筑波大学大学院 数理物質科学研究科 教授)
概要
走査トンネル顕微鏡およびその関連技術は、原子レベルの空間分解能を持ち、ナノスケールの科学研究を遂行する上で欠かすことが出来ないものですが、高速現象の測定を得意としません。一方、光を用いた測定法では、短パルス光による高速測定の手法が確立されていますが、一般に波長程度の空間的な分解能しか持たないものです。そこで、両先端技術を融合することにより、時空両領域で極限的な分解能を持ち、ナノスケールでの新たな物性研究を可能にする新しい極限計測・制御技術の開拓を目指します。
多量子遷移ESRによる巨大分子の構造解析
研究代表者(所属)
下山 雄平 (室蘭工業大学教育研究支援機構 教授)
概要
多量子遷移ESRシステムを開発し、巨大分子材料における無秩序状態の構造解析を行います。従来の構造解析(X線回折やNMR)法では材料のナノスケール構造計測は不可能です。多量子遷移ESR 法を用い、距離情報を直接スピン双極子相互作用より検出します。本方法は、電子スピンを利用するため、従来法より高感度・超微量分析が可能です。
反応現象のX線ピンポイント構造計測
研究代表者(所属)
高田 昌樹 ((独)理化学研究所 播磨研究所 主任研究員)
概要
ナノ物質・材料の研究・開発分野では、デバイスの動作状態でのその場観察を含め、様々な環境下において、光・電場・磁場等の外場に対する微小材料や薄膜材料の動的応答の構造評価技術の重要性が高まっています。本研究では、これらの評価技術を実現するため、第三世代放射光SPring-8を用い、極短時間(ps)、極小空間(nm)という極限環境での構造解析装置の開発を目指します。また、この「X線ピンポイント構造計測」技術を用いて、新原理・新現象を探索し、その有用性を実証します。
0.5Å分解能物質解析電子顕微鏡基盤技術の研究
研究代表者(所属)
高柳 邦夫 (東京工業大学大学院 理工学研究科 教授)
概要
従来、電子顕微鏡の分解能はレンズの収差により制限されていました。本提案では、照射系と結像系の両方に収差補正レンズを搭載し、冷陰極電界放出型電子銃から出たエネルギーの揃った電子を利用して、水素原子半径に等しい0.05nmの分解能をもつ電子顕微鏡を開発します。これは英米で開発された装置をしのぐ、世界最高の分解能であり、炭素、窒素、酸素などの軽元素の位置や挙動を調べることが可能になります。
高いコヒーレンスをもつ軟X線レーザーを利用した新固体分光法の構築
研究代表者(所属)
並河 一道 (東京学芸大学教育学部 教授)
概要
極めて高い干渉性をもつプラズマ基盤の軟X線レーザーを利用し、時間・空間相関法と非線形分光法による新しい固体の分光法を構築します。この方法が確立すれば、リラクサーなどの強誘電体や高温超伝導体などの強相関系物質に適用でき、これらの物質を利用する物性ナノテクノロジーの発展に寄与できると考えます。