研究領域HP
戦略目標
「安全・安心な社会を実現するための先進的統合センシング技術の創出」(PDF:22KB)
研究総括
板生 清(東京理科大学専門職大学院 総合科学技術経営研究科 教授)
概要
本研究領域は、自然災害や人為的作用など社会の安全・安心を脅かす危険や脅威を早期かつ的確に検知し、その情報を迅速に伝達する統合センシング技術を創出することを目指す研究を対象とするものです。
具体的には、危険物・有害物質や、ビル・橋などの人工物・建造物の劣化・異常の検知や人間のバイタルサインの検知など、人間環境や人工環境、または自然 環境の状態を検知する高感度・ワイヤレス・超小型の革新的なセンサ技術、ネットワーク異常発生時や災害時などにもデータ伝送を保証するネットワーク技術、 センサからの多様なデータを解釈し、異常検知・迅速な対応・処置を提示する情報処理技術に関する研究などを対象とします。
さらに、個別要素技術の組み合わせにより、検知の感度・精度・選択性の飛躍的な向上を実現する技術、情報処理・ネットワーク技術にブレークスルーをもたらすセンサ・ネットワーク・システム技術、一体的なシステムを実現する技術などを目指した研究などが含まれます。
平成19年度採択分
災害時救命救急支援を目指した人間情報センシングシステム
研究代表者(所属)
東野 輝夫 (大阪大学大学院情報科学研究科 教授)
概要
本研究では、地震や列車事故など短時間に多数の傷病者が発生する事故現場において、生体情報センサを介し て傷病者の情報を迅速に収集すると共に、無線 アドホックネットワークを用いて傷病者の位置や病状変化をリアルタイムで監視・収集し、救命活動を行う関係 者にその情報を図的に提示する救命救急 医療支援システムを構築します。これにより、救命救急の効率化とトリアージの高度化を実現します。
脳に安全な情報環境をつくるウェアラブル基幹脳機能統合センシングシステム
研究代表者(所属)
本田 学 ((独)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第七部 部長)
概要
情報環境と脳との不適合によって発生する特異なストレスは、生命活動を制御する基幹脳の機能異常を導くことがPETによる計測実験により判明しており、情動・自律神経系や内分泌・免疫系の不調を介して様々な現代病の原因となります。本研究では、安全・安心な情報環境の創出に資するために、多チャンネルバイタルセンサからのシグナルを統合することにより、小型軽量で高確度なウェアラブル基幹脳機能センシング技術を創成し、日常生活空間で簡便に使用できるシステムの実用化を目指します。
パラサイトヒューマンネットによる五感情報通信と環境センシング・行動誘導
研究代表者(所属)
前田 太郎 (大阪大学 大学院情報科学研究科 教授)
概要
人間の感覚・運動・生体情報を計測し同時に各種感覚提示による錯覚利用の運動誘導を可能にするウェアラブ ル技術「パラサイトヒューマン」を用いて、装着者自身をセンサとアクチュエータを備えた双方向機能ノードとしてネットに接続します。これにより五感情報通 信による協調作業型の行動支援や、少数装着者による群衆の移動誘導など、環境ネット下での安全・安心を実現するためにより直観的で効果的な人間の環境情報 の計測と行動支援を実現します。
生体・環境情報処理基盤の開発とメタボリック症候群対策への応用
研究代表者(所属)
山田 一郎 (東京大学 大学院工学系研究科 教授)
概要
日常生活における生体・環境情報を手軽に収集し、客観的視点から生活習慣を確認できる生体・環境情報処理 基盤を開発します。ウェアラブルセンサを用い、データを取る・貯める・見るためのソフトウェア、診断アルゴリズムなどの基盤技術を研究開発します。例とし て、様々な生体・環境情報とメタボリック症候群の因果関係を理解し、生活習慣の改善を促すことを目指します。また個人に応じた柔軟な予防・治療に資するヘ ルスケアサービスを開発し、実証実験により有効性を検証します。
平成18年度採択分
安全・安心のためのアニマルウォッチセンサの開発
研究代表者(所属)
伊藤 寿浩 ((独)産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センター 副センター長)
概要
動物の健康状態をモニタする無線センサ端末と、動物集団の健康管理を行うアニマルウォッチセンサネットを 開発します。特に、パンデミック対策として、鳥インフルエンザ発生の早期発見システムへの応用に主眼をおいた小型・軽量・フレキシブル・メンテナンスフ リーなセンサ端末を、超低消費電力MEMSセンサとフィルムシステム実装技術により実現することで、人への感染防止等、人類の健康確保と食の安全・安心の 確保に資することを目的とします。
応力発光体を用いた安全管理ネットワークシステムの創出
研究代表者(所属)
徐 超男 ((独)産業技術総合研究所 生産計測技術研究センター 応力発光技術チーム 研究チーム長)
概要
力学的エネルギーをダイレクトに光エネルギーに変換し、その微粒子一つ一つがセンサ素子として機能する応力発光体によって、ごく微細な異常を広範囲にわ たって検出可能なセンサデバイスを開発します。このデバイスを基に、トンネルなどの構造物に対するリアルタイム応力異常検出・応力履歴記録システムを開発 し、システムを結ぶネットワークを経て危険兆候を包括的に早期検知する安全管理システムを創出します。
実世界検索に向けたネットワークセンシング基盤ソフトウェアOSOITE
研究代表者(所属)
戸辺 義人 (東京電機大学 未来科学部情報メディア学科 教授)
概要
OSOITE(Overlay-network Search Oriented for Information about Town Events)は、携帯型端末を有したユーザに対して、平常時および非常時の両面で「実世界検索」オーバーレイセンサネットワークにより都市生活における 安全・安心な行動支援を提供することを狙います。具体的には実時間センシング情報を含んだ複数の異種類のデータベースに対する情報検索を可能にし、検索時 に高次処理により有意情報を抽出し、ユーザにバックエンド支援警報、安心ナビゲーションを提供します。
都市基盤の災害事故リスクの監視とマネジメント
研究代表者(所属)
藤野 陽三 (東京大学大学院 工学系研究科 教授)
概要
本研究は、建物群や交通施設などの都市基盤構造物にかかわるハザードと脆弱性をモニターする広域センサ ネットワークを構築し、事故・災害リスクを定量化・可視化する実用性の高いシステムを実現します。そのために、既存センサを最大限活用するだけでなく、リ スクに関わる光系センシング手法、中小のハザードデータを活用したセミアクティブ手法を新たに開発し、東大キャンパスにおける実装や高速鉄道における試行 を通じて、その有効性を示します。
多種類の危険・有害ガスに対する携帯型高感度ガスセンサシステム
研究代表者(所属)
山中 一司 (東北大学 未来科学技術共同研究センター 教授)
概要
安全のための重点課題として、多くの種類の危険・有害ガスを高感度で迅速に検知する技術が求められていま す。本研究では、球の弾性表面波(SAW)が平行ビームを形成して多重周回する現象を用いて吸着分子による特性の変化を高精度に計測するボールSAWセン サを高度化し、MEMSによるガス分離カラムと組み合わせて環境中の多種類のガスを検知し、センサネットワークに発信する携帯型の高感度センサを開発しま す。
平成17年度採択分
社会の安全・安心に貢献するユビキタス集積化マイクロセンサの開発
研究代表者(所属)
概要
本研究では、安心して暮らせる安全な社会の実現に向けて、あらゆる生活空間においてセンサネットが形成可能な完全無線型集積化マイクロセンサ・ノードの開発を行いました。超小型の各種センサと知能化回路を一体形成し、その上、独自の技術によって微弱無線回路と高性能無線エネルギー授受機構をチップ上に集積化しました。これにより、電源や電池寿命から解放された無線型マイクロ集積センサ・ノードを実現できる技術の開発に成功しました。その結果、人工物・生体のヘルスケアの他、様々な分野への応用が可能になりました。
安全と利便性を両立した空間見守りシステム
研究代表者(所属)
車谷 浩一 ((独)産業技術総合研究所 情報技術研究部門 グループ長)
概要
本研究は、人間の生活空間を見守り、安全と利便性を同時に達成する空間見守りシステムの実現を目的とします。人の位置に着目して、特に屋内空間での人の位置を確率推論によって頑健かつ安定に推定し、日常時の利便性を目的とした道案内システムが非常時には非常口までの道案内を行うシステムへと自動的に切り替わる屋内自律型ナビゲーションシステム、ならびに、位置に加えて人の運動状態をモバイル生体センサによって計測・推定し、ネットワークを通じて遠隔地の家族等へ運動状態の解析結果を伝達する生体遠隔見守りシステムを実現しました。
安全・安心のための移動体センシング技術
研究代表者(所属)
佐藤 知正 (東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授)
概要
本プロジェクトでは生活・人と物の流れ・自動車分野において、1) 自動車・家電などの機械の稼動や利用者の行動などのふるまい情報を計測・蓄積し、その特徴やくせを抽出する統合センシング技術、2) この情報に基づいて個別適合したサービスを可能とする技術を確立しました。これにより、個性をもつ個人や個別状況に対応した、きめ細かな安全・安心サービスを実現できるようになりました。
セキュリティ用途向け超高感度匂いセンサシステムの開発
研究代表者(所属)
都甲 潔 (九州大学大学院 システム情報科学研究院 主幹教授)
概要
本研究では、目的分子と選択的に結合する抗体及び鋳型分子認識膜を、表面プラズモン共鳴センサ及び表
面分極型センサと組み合わせ、イヌの鼻を超えるppt(parts per trillion)レベルの検出感度を有する超高感度匂いセンサシステムを開発しました。当センサシステムから構築されるネットワークは、空港・鉄道等のセキュリティー、警察での爆発物探知等への応用のみならず、食品や水の品質管理も含め、安全・安心な社会の実現に貢献するものです。
(研究期間は平成17 年10 月1 日~平成22 年3 月31 日)
事故予防のための日常行動センシングおよび計算論の基盤技術
研究代表者(所属)
西田 佳史 ((独)産業技術総合研究所 デジタルヒューマン工学研究センター チーム長)
概要
ユビキタスセンシングを用いた全空間的人間行動センシング技術と、インターネット型センシングを用いた社会現象センシング技術、大規模な人間行動蓄積データに基づいてデータ駆動型モデルを構築する人間行動モデリング技術、構築した人間行動の計算モデルを有用な社会応用サービスと連携させる技術を、社会的要請の高い乳幼児の事故予防に応用し、乳幼児の事故予防のための傷害予防工学技術を開発し、それに基づく社会システムとして安全知識循環型社会システムを提案しました。これにより、「日常の知の体系」とでも呼び得る新しい知の体系を創造するための方法論を具体的に提示しました。
全自動モバイル型生物剤センシングシステム
研究代表者(所属)
安田 二朗 (科学警察研究所 法科学第一部 室長)
概要
生物剤を用いた犯罪・テロが国民の安全・安心を脅かす大きな脅威となっていますが、そのような事案が発生した際には、迅速な検知・同定・情報伝達が被害の最小化に最も重要です。本研究では現場で生物剤の存在が疑われる試料を携行型の機器にアプライするだけで、その場で多項目の生物剤についてその存否を迅速に検知・同定かつ情報通信できる世界に先駆けた先進的統合センシングシステムを開発しました。
(研究期間は平成17 年10 月1 日~平成20 年9 月30 日)