「ナノ界面技術の基盤構築」

平成23年度 研究終了にあたって

研究総括 新海 征治

 「界面」は、異なる相が接触する“ホット・スポット”であり、そのヘテロな環境ゆえに、触媒反応、移動現象、準安定状態、さらには生命の誕生などとも関連して、特異な反応場を提供すると考えられて来ました。最近、合成技術・バイオ技術などの発達とともに多数の新材料が提供される時代になりました。それと同時に新しい分析技術も長足の進歩を遂げ、一分子・一原子計測も可能な時代に突入しました。しかし、材料の拡がりと測定機器の進歩をシステマティックに組み合せて、新しい研究領域を開拓する試みは、これまで余り成されて来ませんでした。
 本領域は、材料としては無機から有機・高分子・バイオまでを幅広くカバーして、その界面における物性・挙動を最新の機器分析技術で精査することにより、界面現象に由来する新材料・新機能の創出に資することを目的に掲げました。募集は平成18年度から開始されましたが、選考においては材料の種類の多様性を横糸と考え、これに分析を専門とする研究者が縦糸となって絡めるように配慮ました。幅広い専門分野からなる領域アドバイザーのご協力を得て、各年度に5課題ずつ、3年間で合計15課題を採択しました。対象として扱う分野が広いので、領域としての研究ターゲットがやや拡散した面もありましたが、両者が出合うスポットにおいては、極めて斬新で興味溢れる研究成果が得られつつあるように感じます。
 平成18年度に採択した5課題が、平成23年度を以って終了しましたが、客観的に見ても5チームとも意義ある研究成果を達成できたものと考えています。例えば、日本における“金触媒”研究グループを結集してオールジャパン体制を構築するとともに、反応メカニズムの解明や新しい金触媒反応を開発した春田チーム、SPring8に東大アウトステーションを完成させ、世界最高クラスの空間分解能をもつ放射光施設を完成させた尾嶋チーム、ナノ細孔をもつ有機金属錯体から結晶性の高い薄膜やチューブを創製し、燃料電池やプロトン電池に応用する道を拓いた北川チーム、多様なメソポーラス有機シリカの合成法を確立し、その光エネルギー変換材料への応用を進めた稲垣チーム、そして世界初となる金属酸化物界面での整数・分数量子ホール効果や酸化物・有機物界面における電界誘起超伝導現象など量質ともに豊富な研究成果を世に送り出した川崎チームなど、賞賛に値するところです。
 さらに、これらの研究チームにおいては多数の若手研究者が成長し、その多くが新しいポジションを獲得して独立して行ったのも、本CRESTの成果のひとつと考えています。これらの研究者が、将来、本CRESTで得られた成果を一層展開し、次世代の研究主役となってくれることを期待しています。

一覧に戻る

プログラム

  • CREST
  • さきがけ
  • ACT-I
  • ERATO
  • ACT-X
  • ACCEL
  • ALCA
  • RISTEX
  • AI時代と科学研究の今
  • AIPネットワークラボ
  • JSTプロジェクトDB
  • 終了事業アーカイブズ
  • ご意見・ご要望