イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化

1.研究領域の概要

 21世紀に入り通信ネットワークの発展と通信・センサーデバイスの低廉化によりこれまでの情報通信産業だけでなく、農業や製造業など第一次、第二次産業においても、大規模データを利活用するデータベース技術とそのデータを基にした機械学習によりこれまで不可能であった産業の自動化と最適化が可能になりつつあります。今後、量・種類ともに爆発的に増大する情報を最大限に活用するためのディープラーニング、強化学習等の機械学習を例とする革新的な人工知能基盤技術が広く利用され、様々な分野において将来にわたり効果的に情報が活用される社会の実現が期待されています。今後、データ利活用により、全ての産業においてその構造を変革するような新たなサービス、イノベーションが社会に要請されています。
 本研究領域では、実社会の膨大なデータを知的・統合的かつセキュアに収集・処理・学習・制御するための人工知能基盤技術と、その成果を組み合わせることにより社会問題の解決と産業の自動化・最適化に貢献するイノベーション創発に資する技術の確立を目指します。
 具体的には、以下の研究開発に取り組みます。
 1)社会・経済等に貢献するため、多種・膨大な情報を組み合わせ解析する技術開発
 2)多種・膨大な情報に基づき、状況に応じ最適化されるシステムのための技術開発
 3)多種多様な要素で構成される複雑なシステムに適用可能なセキュリティ技術開発
 膨大な情報の利活用がさらに高度かつ広範に浸透した将来社会を念頭に、実社会の様々な分野への適用を見据えて、センサー技術、実時間ビッグデータを扱うデータベース技術、システムセキュリティ技術、機械学習を核とするシステム最適化技術等の高度化を進めます。さらに、それらを組み合わせて実世界データを総合的に実時間で処理し理解する情報処理システムを構築するための統合化技術の研究開発を推進します。
 本研究領域による研究成果が、モビリティ、ロボティクス、健康・医療・介護、防災・減災、農業、ものづくり等における自動化・最適化を進める際のイノベーション創発の核となることを目指します
これらに取り組むにあたっては、効果的な産学連携体制を構築しつつ、社会の実問題に取り組むために、基盤研究と統合化研究が互いの課題と成果を共有しながら進展する研究開発に挑みます。すなわち人工知能基盤技術という要素技術を揃えることと、イノベーション創発のために実際にそれを組み合わせて統合化していくことの両面を考慮した研究開発を行います。
 なお、本研究領域は文部科学省の人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト(AIPプロジェクト)の一環として運営します。

2.事後評価の概要

2-1.評価の目的、方法、評価項目及び基準

 戦略的創造研究推進事業・CRESTにおける事後評価の目的、方法、評価項目及び基準に沿って実施した。

2-2.評価対象研究代表者及び研究課題

2016年度採択研究課題

(1)飯山 将晃(京都大学学術情報メディアセンター 准教授)
サステイナブル漁業に向けたデータ指向型リアルタイム解析基盤の開発

(2)大川 剛直(神戸大学大学院システム情報学研究科 教授)
放牧牛のインタラクション分析による革新的飼養管理技術の開発

(3)加藤 真平(東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授)
完全自動運転における危険と異常の予測

(4)岸本 泰士郎(慶應義塾大学医学部 専任講師
自然言語処理による心の病の理解:未病で精神疾患を防ぐ

(5)佐藤 克文(東京大学大気海洋研究所 教授)
サイバーオーシャン:次世代型海上ナビ機構

(6)佐藤 真一(国立情報学研究所コンテンツ科学研究系 教授)
未知事物検索・認識基盤によるメディア消費者の体験・行動センシング

(7)篠田 浩一(東京工業大学情報理工学院 教授)
社会インフラ映像処理のための高速・省資源深層学習アルゴリズム基盤

(8)花岡 悟一郎(産業技術総合研究所サイバーフィジカルセキュリティ研究センター 研究チーム長)
安全な秘匿化データ処理を実現する汎用依頼計算技術

(9)浜本 隆二(国立がん研究センター研究所 分野長)
人工知能を用いた統合的ながん医療システムの開発

(10)盛合 志帆(情報通信研究機構サイバーセキュリティ研究所 室長)
複数組織データ利活用を促進するプライバシー保護データマイニング

2017年度採択研究課題(1.5年の研究課題として実施)

(1)落合 陽一(筑波大学図書館情報メディア系 准教授)
計算機によって多様性を実現する社会に向けた超AI基盤に基づく空間視聴触覚技術の社会実装

2-3.事後評価会の実施時期

2018年12月12日(水曜日)
2018年12月15日(土曜日)

2-4.評価者

研究総括
栄藤 稔 大阪大学先導的学際研究機構 教授
領域アドバイザー
伊藤 久美 4U Lifecare(株) 代表取締役社長
砂金 信一郎 LINE(株)広告・ビジネスプラットフォーム事業室 戦略企画担当ディレクター
内田 誠一 九州大学大学院システム情報科学研究院 情報知能工学部門 実世界ロボティクス講座 教授
鬼塚 真 大阪大学大学院情報科学研究科 教授
鹿志村 香 日立アプライアンス(株) 取締役/事業戦略統括本部長
佐藤 洋一 東京大学生産技術研究所 教授
杉山 将 理化学研究所革新知能統合研究センター センター長/東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授
萩田 紀博 (株)国際電気通信基礎技術研究所 取締役/知能ロボティクス研究所 所長
松本 勉 横浜国立大学大学院環境情報研究院/先端科学高等研究院 教授
松本 真尚 (株)WiL 共同創業者 ジェネラルパートナー
外部評価者
大江 和彦 東京大学大学院医学系研究科 教授
菊池 浩明 明治大学大学院先端数理科学研究科 教授
中西 透 広島大学大学院工学研究院 教授

※所属および役職は評価時点のものです。

プログラム

  • CREST
  • さきがけ
  • ERATO
  • ACT-X
  • ALCA
  • CRONOS
  • AIPネットワークラボ
  • 終了事業アーカイブズ
  • ご意見・ご要望