多様な天然炭素資源の活用に資する革新的触媒と創出技術

1.研究領域の概要

 本研究領域は、多様な天然炭素資源をバランスよく活用できる将来の産業基盤の確立に向けて、その根幹をなすメタンをはじめとするアルカンガス資源を従来にない形で有用な化成品・エネルギーに変換するための革新的な触媒の創出を推進します。
 埋蔵量が豊富な天然ガス等に含まれるメタンをはじめとするアルカンガス資源からこれまでにない技術で化成品やエネルギーへの変換が容易にできるようになれば、現代社会が直面する石油依存という問題からの脱却や二酸化炭素排出低減も可能になります。しかし、メタンなどのアルカンガス資源を直接化成品などに変換するプロセスは難度が高く、メタンの改質によって生成する合成ガス(CO+H2)を経由するなどの間接的なプロセスを利用しているのが現状です。
 この高難度な課題を克服することが本研究領域の主眼であり、高度な触媒技術を生み出す新しい取り組みを推進します。そのためには、近年進化しているデータ科学、計算科学、計測技術などと連携することによって、これまでに蓄積された触媒に関する経験知を非連続的に飛躍させることが重要です。
 本研究領域では、特に難度が高いメタンを反応基質とする研究を基軸に据えます。エタンやプロパン等の低級アルカンを反応基質とする反応については、既知の手法に比較して圧倒的に高活性・高選択性を目指す革新的な触媒研究を対象とします。
 将来的に、化学産業における天然ガス等の資源の新たな活用を切り開き、ひいては新たな産業基盤の確立につながる、本格的にして世界をリードできる触媒研究を推進します。

2.事後評価の概要

2-1.評価の目的、方法、評価項目及び基準

 戦略的創造研究推進事業・CRESTにおける事後評価の目的、方法、評価項目及び基準に沿って実施した。

2-2.評価対象研究代表者及び研究課題

2016年度採択研究課題

(1)伊東 忍(大阪大学 大学院工学研究科 教授)
後周期遷移金属オキシラジカル錯体によるメタンの酸化反応

(2)村松 淳司(東北大学 多元物質科学研究所 教授)
メタンから低級オレフィンへの直接転換を可能にする金属超微粒子を担持した複合酸化物触媒材料の創製

2015年度採択研究課題(コロナ延長課題)

(1)阿部 英樹(物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 主席研究員)
高効率メタン転換へのナノ相分離触媒の創成

(2)阪井 康能(京都大学 大学院農学研究科 教授)
合成生物学によるメタン酸化触媒の創製

(3)荘司 長三(名古屋大学 大学院理学研究科 教授)
生体触媒の誤作動状態を利用するメタンの直接的メタノール変換

(4)山中 一郎(東京工業大学 物質理工学院 教授)
反応場分離を利用したメタン資源化触媒の創成

2015年度採択研究課題(1年追加支援課題/コロナ延長課題)

(1)吉澤 一成(九州大学 先導物質化学研究所 教授)
計算化学が先導するメタン酸化触媒の開発と触媒設計技術の創成

2-3.事後評価会の実施時期

2021年10月18日(月曜日)
2021年9月 各研究者からの研究報告書に基づき研究総括による事後評価(コロナ延長課題)
2022年2月 各研究者からの研究報告書に基づき研究総括による事後評価(1年追加支援課題)

2-4.評価者

研究総括
上田 渉 神奈川大学 工学部物質生命化学科 教授
領域アドバイザー
伊原 賢 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 技術部 特命調査役
魚住 泰広 自然科学研究機構 分子科学研究所錯体触媒研究部門 教授
加藤 昌子 関西学院大学 生命環境学部 教授
川合 眞紀 自然科学研究機構 分子科学研究所 所長
北川 宏 京都大学 大学院理学研究科 教授
小林 久芳 京都工芸繊維大学 名誉教授
佐藤 智司 千葉大学 大学院工学研究院 教授
瀬戸山 亨 三菱ケミカル(株) エグゼクティブフェロー/サイエンス&イノベーションセンター瀬戸山研究所 所長
永原 肇 第一稀元素化学工業(株) 社外取締役
浜地 格 京都大学 大学院工学研究科 教授
藤田 照典 三井化学(株) シニア・アドバイザー/中部大学 教授
三浦 弘 埼玉大学 名誉教授
渡辺 芳人 総合研究大学院大学 理事
外部評価者
該当なし

※所属・役職は研究終了時点のものです。

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