ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術

1. 研究領域の概要

 本研究領域は、先端的ライフサイエンス領域と構造生物学との融合によりライフサイエンスの革新に繋がる「構造生命科学」と先端基盤技術の創出を目指します。すなわち最先端の構造解析手法をシームレスに繋げ、原子レベルから細胞・組織レベルまでの階層構造ダイナミクスの解明と予測をするための普遍的原理を導出し、それらを駆使しながら生命科学上重要な課題に取り組みます。
 近年わが国では大規模なタンパク質の構造決定研究が進められ大きな成果を収めてきましたが、今後はその資源を礎に、生命現象の重要な担い手でありながら単独では機能しないタンパク質を動的に捉え、これが多くの生体高分子との相互作用で機能を発揮するメカニズムを追求することが大切です。たとえば多くの動植物の病気はタンパク質の異常に由来しますが、その原因を解明し、新規治療法や予防法を開発するためには、構造生命科学を基軸にした生命現象の理解が不可欠です。また、健康な長寿社会の実現、安全な食糧生産、環境問題の克服でも構造生物学的研究が求められます。こうした局面において構造生命科学は、生命現象を原子・分子レベルで時間的・空間的に解明して普遍的原理を導出し、さらには構造から生命現象を予測することで、こうした課題に応えるものとなります。
 そこで本研究領域では、この構造生命科学を駆使して生命現象を支える重要な機能性素子である巨大複合体やオルガネラの動態解析、疾患の原因分子の特定とその構造の解明、構造的相互作用に基づいた創薬のためのリード化合物の分離などのほか、こうした研究を実現するに必要な先導的技術の創出を目指します。

2.事後評価の概要

2-1.評価の目的、方法、評価項目及び基準

戦略的創造研究推進事業・CRESTにおける事後評価の目的、方法、評価項目及び基準に沿って実施した。

2-2.評価対象研究代表者及び研究課題

2013年度採択研究課題

(1)安藤 敏夫(金沢大学ナノ生命科学研究所 特任教授)
ATP/GTPが駆動するタンパク質マシナリーの動的構造生命科学

(2)礒辺 俊明(首都大学東京大学院理学研究科 特任教授)
RNA代謝異常症のリボヌクレオプロテオミクス解析と構造生命科学への展開

(3)伊藤 隆(首都大学東京大学院理学研究科 教授)
NMRと計算科学の融合によるin situ構造生物学の確立と真核細胞内蛋白質の動態研究への応用

(4)栗栖 源嗣(大阪大学蛋白質研究所 教授)
植物の環境適応を実現する過渡的超分子複合体の構造基盤

(5)清水 敏之(東京大学大学院薬学系研究科 教授)
自然免疫における一本鎖核酸認識受容体の構造解明およびその応用

(6)永田 和宏(京都産業大学総合生命科学部 教授/タンパク質動態研究所 所長)
小胞体恒常性維持機構:Redox, Ca2+,タンパク質品質管理のクロストーク

(7)野田 展生((公財)微生物化学研究会微生物化学研究所 部長)
オートファジーの膜動態解明を志向した構造生命科学

2012年度採択研究課題(1年追加課題)

(1)深井 周也(東京大学定量生命科学研究所 准教授)
シナプス形成を誘導する膜受容体複合体と下流シグナルの構造生命科学

(2)山口 明人(大阪大学産業科学研究所 特任教授)
異物排出輸送の構造的基盤解明と阻害剤の開発

2-3.事後評価会の実施時期

2018年10月17日(水曜日)・18日(木曜日)

2-4.評価者

研究総括
田中 啓二 (財)東京都医学総合研究所 理事長
領域アドバイザー
大隅 良典 東京工業大学科学技術創成研究院 栄誉教授
嶋田 一夫 東京大学大学院薬学系研究科 学部長・研究科長・教授
中島 元夫 SBIファーマ(株) 取締役執行役員・CSO
箱嶋 敏雄 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科 研究科長・教授
藤吉 好則 名古屋大学細胞生理学研究センター 客員教授
古谷 利夫 ペプチドリーム(株)技術顧問
三浦 正幸 東京大学大学院薬学系研究科 教授
山縣 ゆり子 熊本大学 名誉教授
由良 敬 お茶の水女子大学シミュレーション科学・生命情報学教育研究センター 教授
吉田 賢右 京都産業大学総合生命科学部 シニアリサーチフェロー
外部評価者
該当なし

※所属および役職は評価時点のものです。

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