[生命と情報] 2024年度採択課題

石川 雅人

遺伝子制御ダイナミクスに基づく細胞運命操作

グラント番号:JPMJAX24L1
研究者
石川 雅人

京都大学
医生物学研究所
助教

研究概要

少数の鍵遺伝子の発現操作による細胞運命操作法の実験的探索は多大な労力を要します。本研究では、細胞運命操作法を計算機的に予測することを目指します。遺伝子発現ダイナミクスを、遺伝子制御ネットワークと時系列発現データに基づき学習します。このダイナミクスのシミュレーションにより運命操作法を予測し、実験検証を行います。さらに、ダイナミクスに基づき細胞運命決定の背後にある分子機構の推定を行います。

上田 博之

低磁場MRIにおける脳機能計測実現と高分解能化

グラント番号:JPMJAX24L2
研究者
上田 博之

京都大学
大学院工学研究科
助教

研究概要

本研究構想では、スピンロックシーケンスを用いた低磁場・超低磁場MRIにおける脳機能計測の実現と、情報科学を用いた高時空間分解能の達成を目指します。低磁場・超低磁場での脳機能計測は、血行動態を用いる従来手法では実現困難ですが、振動磁場を画像に反映させるスピンロックシーケンスにより実現可能性があります。また、低磁場・超低磁場では画質やスループットが低下するため、深層学習を用いた高分解能化を行います。

歐陽 允健

機械学習を融合したクロマチン構造変化の推定

グラント番号:JPMJAX24L3
研究者
歐陽 允健

国際基督教大学
教養学部
助教

研究概要

哺乳類の卵子は次世代の胚発生を支える重要な細胞です。卵成長過程で起こる卵特有のクロマチン3次元構造変化はゲノム生物学の貴重な研究対象であり、発生学や老化研究、生殖補助医療に役立つ可能性があります。しかし、長期間の体内観察が困難なため、構造変化の実態や機構や役割は未解明のままです。本研究では、ゲノム生物学の実験結果を融合した機械学習手法を開発し、シミュレーションによって構造変化の解明を目指します。

笠原 朋子

新老化基準の確立と若返り機序の同定

グラント番号:JPMJAX24L4
研究者
笠原 朋子

東北大学
大学院医学系研究科
助教

研究概要

老化医学における新たなスタンダードとなりつつある生物学的時計とは、生命情報を基に作成された真の老化状態を数値化する技術です。本研究ではこれまでにないアプローチで生命科学の結果を計算科学を用いて老化情報へ昇華し、新しい老化医学の指標を確立します。また、この新しい指標を実際の老化現象へ応用し、抗老化研究を遂行します。本研究を通じて、革新的な抗老化介入法の開発および老化メカニズムの解明を目指しています。

河口 理紗

エピゲノムゆらぎによる細胞状態の離散境界における確率的遷移過程の推定

グラント番号:JPMJAX24L5
研究者
河口 理紗

東京大学
大学院薬学系研究科
准教授

研究概要

私が着目しているのは、細胞ごとに見られるエピゲノム状態のゆらぎを生み出す仕組みと、そこから引き起こされる細胞状態遷移の確率性の理解です。一細胞エピゲノム解析における網羅性・深度などのバイアス問題を深層学習モデルによって克服し、細胞の初期化や分化などの細胞遷移の過程で、様々な外的な力により生み出されるエピゲノム変化(ひずみ)が、確率的に細胞を遷移させる過程を説明する物理モデルの構築を目指します。

小井土 大

少数遺伝子から全転写制御を予測する機械学習法

グラント番号:JPMJAX24L6
研究者
小井土 大

東京大学
大学院新領域創成科学研究科
助教

研究概要

数百遺伝子のみを対象とする発現測定法により、膨大な実験条件下での遺伝子発現データの蓄積が進んでいます。本研究では、少数データの機械学習法を用い、数百遺伝子の発現情報からDNA配列依存的な転写機構を学習し、数万以上の全転写物の発現を予測する手法開発を目指します。本手法を蓄積データに活用することで、条件特異的な転写制御機構とそのDNA配列依存性の全貌解明に向けたデータ駆動的仮説提唱が期待されます。

佐藤 大気

情動伝染の内的原理の解明と情報操作による恐怖緩和の実現

グラント番号:JPMJAX24L7
研究者
佐藤 大気

千葉大学
大学院理学研究院
特任助教

研究概要

本研究では、動物集団に見られる情動の伝染現象に着目し、キイロショウジョウバエを研究材料として、ゲノム解析と神経科学的検証からその分子メカニズムを明らかにする。また、行動データに対して逆強化学習の手法を応用し、自由行動下のハエの心理状態を可視化する。さらに、光遺伝学的手法による介入実験により、ハエの恐怖を緩和する情動操作の実現を目指す。

角 俊輔

脊椎動物の保存RNA構造探索手法の開発

グラント番号:JPMJAX24L8
研究者
角 俊輔

東京大学
定量生命科学研究所
特任助教

研究概要

生命機能に重要なノンコーディングRNAは、その構造が進化的に保存されることが知られます。しかし、ノンコーディングRNAの進化的保存性は、未解明な部分が大きいです。そこで本研究では、ヒトを中心とした脊椎動物に焦点を当て、進化的に保存されているノンコーディングRNAを新規に発見するための手法を開発します。これにより、脊椎動物におけるノンコーディングRNAが担う生命機能の解明に貢献します。

高野 壮太朗

代謝モデルを基軸とする頑健な生態系の網羅的探索技術の開発

グラント番号:JPMJAX24L9
研究者
高野 壮太朗

理化学研究所
バイオリソース研究センター
開発研究員

研究概要

本研究では、代謝モデルを基に大量の微生物群集を組み上げるアルゴリズムを構築し、大規模なメタゲノム解析から推定される共存情報を利用することで、微生物生態系の頑健性の鍵となる代謝相互作用を網羅的に探索する手法を開発する。実際の観測データを投影した、大量の微生物間代謝相互作用ネットワークを構築することで、頑健な生態系の鍵となる相互作用を統計的に抽出し、代謝反応と安定性の間にある普遍的法則を明らかにする。

筒井 和詩

マルチエージェント強化学習から迫る群れの秩序形成

グラント番号:JPMJAX24LA
研究者
筒井 和詩

東京大学
大学院総合文化研究科
助教

研究概要

本研究では、まず生物理論と機械学習を融合した生物学的に妥当かつ柔軟なモデリング手法の開発とAI駆動型の群れ行動シミュレーション環境の構築に取り組み、解析基盤システムを確立する。その後、確立した解析基盤システムを無脊椎動物から脊椎動物のさまざまな種(昆虫、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)の集団移動データに適用することで、得られた結果の妥当性・普遍性の検証、および新たな原理の発見を目指す。

鳥取 岳広

計算制限を伴う生命の情報処理原理の解明

グラント番号:JPMJAX24LB
研究者
鳥取 岳広

理化学研究所
脳神経科学研究センター
基礎科学特別研究員

研究概要

生物は不確実な観測情報を適切に処理することで、環境に適応した振る舞いを実現しています。しかし、人工機械と比較して計算リソースの限られている生物が、どのような原理に基づき適応的な情報処理を実現しているのかは未だ明らかではありません。本研究では、生物の計算リソース制限を考慮した新たな情報処理理論を構築し、それを応用することで、計算制限を伴う生命の情報処理原理を明らかにすることを目指します。

中村 絢斗

低ランク神経回路理論に基づくコネクトーム解析

グラント番号:JPMJAX24LC
研究者
中村 絢斗

理化学研究所
脳神経科学研究センター
基礎科学特別研究員

研究概要

動物が世界を認識し行動する機能が神経回路の配線構造からどう立ち現れるかを探る上で、近年網羅的に明らかにされたショウジョウバエ脳のコネクトームデータは重要な手がかりをもたらしています。本研究では、配線構造に潜むパターンを活かして神経活動のダイナミクスを簡約化する低ランク神経回路理論を実際の生物に適用できるよう拡張することで、神経回路の機能を探索し実験検証するフレームワークの構築を目指します。

濱野 桃子

化合物による細胞リプログラミング制御法の開発

グラント番号:JPMJAX24LD
研究者
濱野 桃子

九州工業大学
大学院情報工学研究院
准教授

研究概要

ダイレクトリプログラミング(DR)は、体細胞に複数の化合物を作用させることで別の細胞種へ直接変換する細胞分化誘導法です。本研究ではDR誘導過程をシミュレーションすることで多段階な細胞変換過程で起こるDRの分子機序を明らかにし、それらを制御する化合物を膨大な候補から予測する情報基盤技術を開発します。臓器の主要な機能を担う細胞をDRで誘導する化合物を提案することで、新しい細胞作製法の創出を目指します。

原島 崇徳

多価DNA人工分子モーターの合理的性能向上

グラント番号:JPMJAX24LE
研究者
原島 崇徳

自然科学研究機構
分子科学研究所
助教

研究概要

本研究では、多価DNAモーターの化学力学共役機構を考慮した運動シミュレーションの開発、および実験とシミュレーションとの融合に基づく運動性能の合理的な向上戦略を提案します。具体的には、シミュレーションによる性能予測、実験による検証、データの学習の三項目から成る性能向上サイクルを繰り返すことにより、生体分子に匹敵する人工分子モーターの実現に挑戦します。

深井 洋佑

長鎖クロマチンの3D構造観察に基づく物理モデル推定

グラント番号:JPMJAX24LF
研究者
深井 洋佑

理化学研究所
開拓研究所
研究員

研究概要

本研究では、ゆらぐポリマーの一分子観察データから粗視化分子モデルのパラメータを推定する系統的な手法を構築する。これをネイティブな条件での3次元撮像が可能なクライオ電子線トモグラフィによる再構成長鎖クロマチンの一分子観察と組み合わせることで、実験データに裏付けされ修飾パターン・溶液環境を反映した粗視化クロマチンモデルを構築することを目的とする。

馬込 望

大規模魚群のメカニズム解明と社会実装のための革新的解析システム構築

グラント番号:JPMJAX24LG
研究者
馬込 望

筑波大学
大学院理工情報生命学術院
大学院生

研究概要

魚群のメカニズム解明には、数値解析などの情報科学技術が重要なツールとなりつつありますが、大規模な魚群を精密かつ柔軟に解析し、それを社会実装するための統一的な方法論は確立されていません。本研究では、この課題に対応するため、「多数の局所領域の動的な高精度化」、「汎用的な大規模並列計算」および「データサイエンス技術による計算コストの削減」を包括する、汎用的なマルチフィジクス解析システムを創成します。

峯岸 美紗

がん細胞増殖を促進する動的細胞相互作用機構の解明

グラント番号:JPMJAX24LH
研究者
峯岸 美紗

京都大学
医生物学研究所
助教

研究概要

がん細胞と周辺微小環境との相互作用は、遠隔臓器に転移したがん細胞の生存・増殖を促進すると考えられている。これらの相互作用は時間とともにに動的に変化するが、その分子機構は未だ完全には解明されていない。本研究では、がん細胞と周辺細胞の遺伝子発現情報およびそれらの動態を時系列で取得し、そのデータを数理モデルと統合することで、がん細胞-周辺細胞の動的相互作用を定量的に解析・理解することを目指す。

武藤 理

事前知識を活用した多細胞系支配方程式の発見

グラント番号:JPMJAX24LI
研究者
武藤 理

愛知県がんセンター
研究所
任意研修生

研究概要

本研究では、生物学的知識の特徴量と細胞状態遷移のダイナミクスの双方を反映した多細胞系の支配方程式を記述・発見する新規解析手法を開発します。これにより、多細胞の複雑な状態変化を生物学的に解釈するモデルを提供し、生命現象の新たな仮説生成や細胞の予測・制御の可能性を追求します。

安田 一希

天然変性領域の多成分相分離を予測する統合的計算手法の開発

グラント番号:JPMJAX24LJ
研究者
安田 一希

慶應義塾大学
大学院理工学研究科
大学院生

研究概要

タンパク質の天然変性領域(IDR)は細胞内の相分離現象により集合します.集合により発現するタンパク質の機能を理解するためには、複数種類のIDRによる相分離現象の予測が必要です.本研究では、機械学習・物理モデル・分子動力学計算を融合させることで,IDRの相分離を予測する新規手法を開発します。 さらに,開発した手法を大規模な配列データに適用し、IDRの相互作用ネットワークを解明します。

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