使用したワカメ配合飼料
リバーソルトブッシュ
飼育羊
一般社団法人さとうみファーム(宮城県南三陸町)
清水港飼料石巻工場(宮城県石巻市)
宮城大学食産業学部
平成25年2月〜平成26年1月
東日本大震災により被災した南三陸町の復興に貢献するためには、いち早く売れるものを生産する必要があります。海水に浸漬した土地の除塩を待つことなく、災いをそのまま福に変えて、売れる物を作り出したいと考えました。ヒントになったのがフランスのプレサレ、オーストラリアのソルトブッシュラム、そしてイギリスオークニー諸島のノース・ロナルドセー島の海藻を食べる羊でした。
ここ南三陸町には特産のワカメがあり、ワカメ加工品の廃棄物が容易に入手可能です。もし塩害地でソルトブッシュを栽培し、ソルトブッシュや塩を含んだ海藻を餌にして羊を飼育すれば、プレサレやソルトブッシュラムに匹敵するようなプレミアム羊肉が生産できる可能性があります。企業の復興にかける強い思いと復興を支援したい大学のシーズがマッチして地域特産品を創製することができれば、被災地復興に大きく貢献することができます。
プレミアム羊肉が開発できたなら、生肉をそのまま販売するのではなく、町や地域を動かし、生産現場の牧場直営レストランを作りたいと考えています。そして、おいしさをそのまま発揮できる調理方法で提供し、牧場には家族みんなで楽しめる観光施設も併設したいです。町外からも、県外からも観光客も呼び込み、南三陸町を売り込む目玉にし、そして南三陸町と言えばラム肉と言われるような、町を代表するブランドを確立したいと考えます。
ワカメを飼料に添加して肉質に及ぼす影響を味覚センサーを用いて比較測定を行いました。この結果、ワカメを食べさせた羊の肉は一般に流通している日本産の羊肉およびニュージーランド産の羊肉に比べて味に厚み・ふくらみ(ミネラル感)が加わり、いわゆるコクのある味わいになることがわかりました。
申請企業や研究責任者の震災復興への熱意には感心させられましたが、本プログラムのような事業への申請および研究開発の実施に不慣れであったため、申請書を作成する段階からサポートに力を入れました。採択後は、野生動物により飼育現場の幼羊が姿を消す被害を受けるというトラブルも発生しました。研究実施期間中は、終了後の展開も意識し、飼育環境の整備や試験項目の追加など、企業責任者に提案し計画の改善を図りました。
(担当マッチングプランナー 仙台事務所 菅野幸一)