研究内容

熱変換

巨大な“横型”熱電変換が無磁場下で発現する材料「熱電永久磁石」を創製します。従来の熱電変換では、2種類の熱電材料を複雑な構造で接合しモジュールを作製する必要があります。横型熱電変換を用いれば電流と熱流をそれぞれ直交する方向に変換できるため、接合が無い単一の材料によって汎用性・耐久性が高いモジュールを構築することができます。横型熱電変換の駆動メカニズムとしては現在6種の原理が知られていますが、それらの熱電変換性能は従来のゼーベック効果よりも大幅に劣っているのが現状です。 本研究では、各種横型熱電変換を最大限に活用できる多階層構造を設計し、既存物質よりも桁違いに高い横熱電能を有し、無磁場環境下で動作するバルク横型熱電材料の合成に取り組みます。物質・材料合成のみならず、横型熱電変換の高い機能性を活かしたモジュール開発も推進します。

熱制御

磁化方向や磁場強度に依存して熱伝導率が劇的に変化する「磁性複合熱スイッチ材料」を創製します。外場で熱伝導率を変調できれば、能動的に放熱⇔断熱を制御可能な次世代熱マネジメント技術の創出に繋がるため、大きな熱伝導率変化を示す熱スイッチングの実現に向けた基礎研究が各国で推進されています。このような状況の中、私たちは2021年にスピントロニクスのコアである磁性金属多層膜において、磁化方向に依存した熱伝導率変化比150%・変化量25 W/mKに達する巨大熱スイッチ効果(磁気熱抵抗効果)を観測しました。本現象は幅広い温度領域で動作し、わずかな磁場印加で急激な熱伝導率変化が誘起されるという利点があります。しかし、このような顕著な機能はナノスケールの薄膜でしか観測されていないという課題があります。本プロジェクトでは、磁性複合材料における界面・析出物制御や層状物質におけるスピン配置・電子伝導設計等の活用により、マクロスケールで動作し磁気的に制御可能な巨大熱スイッチ効果をバルク発現させることを目指します。

熱移送

磁場印加に伴う吸発熱を効率良く熱媒体に伝える「相界面制御磁気冷凍材料」を創製します。磁場印加・除去に伴い吸発熱が生じる磁気熱量効果は、冷媒ガスを必要としない次世代温度制御技術として期待されています。本プロジェクトでは、磁気熱量材料のバルク物性のみならず、実用上重要な冷凍サイクル動作までを考慮した材料・冷媒の選定やそれらの界面制御技術に焦点を当て、磁気冷凍技術の発展に貢献します。これまで磁気冷凍技術とは全く独立に発展し、スピンカロリトロニクス研究の飛躍的な進展をもたらしてきた動的熱計測技術を駆使することで、この課題に取り組みます。