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「未来の科学者」の君たちへ

先輩達の活躍

東北大学探究型「科学者の卵養成講座」受講生

石川 悠さん、横山 佳観さん

研究テーマ:Development of a small wind turbine with airflow control technique using a plasma actuator
(プラズマによる気流制御技術を用いた小型風力発電風車の製作)

<研究概要>

 近年、火力や原子力に代わる新たなエネルギーリソースとして再生可能エネルギーが注目されています。しかしながら、再生可能エネルギーの一つである風力発電では、発電効率や安定性に課題があることが現状です。この一因には、風車ブレード表面から気流が剥がれ剥離領域が発生し、風車の回転効率が低下することがあげられます。そこで本研究では、プラズマを用いて気流制御を行うプラズマアクチュエータ(PA)を風車のブレード前縁に設置し気流を制御することで、発電に適した環境を風車ブレード周辺に作り出し、風力発電の課題解決を目指しました。
 まず、PAが翼型周辺気流に与える影響を調べるため実験装置を自作し、気流の可視化を行いました。迎角を静的・動的に変化させプラズマON/OFFによる剥離領域面積の変化を測定し、さらに、剥離領域減少が翼型の揚力に与える影響を確認しました。これらの基礎研究をもとに、PAを設置した小型風力発電風車を設計・製作し出力電圧の計測を実施しました。
 実験からは、PAは迎角が静的・動的に変化するどちらの場合においても剥離領域を減少させることが可能であり、剥離領域の減少は翼型に生じる揚力の増加につながることが確認されました。また、PAを翼型前縁に設置した風力発電風車では、出力電圧の上昇及び回転数の上昇につながることが確認できました。
 これまでの研究で、PAを風力発電風車に応用することで剥離領域の発生による揚力減少を抑制し、風車の回転効率低下や発電電力の不安定さを解消できる可能性を示すことができました。

<受講生の本研究での役割>

 本研究では風力発電風車のブレード周辺の気流を風洞を用いて可視化する実験と、小型のジャイロミル型の風力発電風車を設計・自作し発電電力を測定する実験の大きく二つの実験を行いました。実験では、PAの電源装置など実験の安全にかかわる部分や測定結果の解析方法等に関して大学の先生や研究班の顧問の先生に助言をいただきながら丁寧に進めることを意識しました。測定や解析はもちろんのこと、実験装置の設計から製作まで自分たちで創意工夫をしながら、全ての実験を高校の実験室で行いました。
 研究について多くの人と議論を交わしたいという思いから高校生科学技術チャレンジ(JSEC2019)に参加しました。緊張しながらも審査員の皆さんや全国の高校生と議論を交わす貴重な経験をさせていただきました。結果として、特別協賛社賞を受賞し、ISEFへ出場する機会をいただきました。ISEFに向けた準備ではそれまで未経験であった英語での論文作成に二人で四苦八苦しながらも、ISEFに出場した先輩方のアドバイスも受けながら作成しました。残念ながら世界的な新型コロナウィルス感染拡大の影響からオンライン開催に切り替わり、お互い会うことすら難しくなりましたが、二人で協力しながら研究紹介の映像を作成し、世界の高校生へ研究内容を発信することができました。

<今後の展望の可能性>

これまでの実験からPAにより風力発電風車の発電効率を改善することが可能であることがわかりました。今後は、恒常的な風速や風向の変化、気象条件などがPAや発電効率に与える影響を明らかにすることで、小型の風車であることを活かして停電時の非常用発電設備として活用が期待できると考えています。

  • 画像:風力発電風車の発電電力を測定している様子

    風力発電風車の発電電力を測定している様子

  • 画像:実験で使用した風洞を製作している様子

    実験で使用した風洞を製作している様子