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「未来の科学者」の君たちへ

先輩達の活躍

宇都宮大学「iP-U」受講生

渡辺 薫音さん

研究テーマ:Optimized highly charged ion production for strong soft x-ray sources obeying a quasi-Moseley’s law
(疑似モーズリーの法則に従う高強度軟X線源の最適多価イオンの生成条件に関する研究)

<研究概要>

原子番号が83番のビスマスはとてもきれいな金属です。これを見て、金属の美しさに惹かれました。また、ビスマスに強いレーザーを照射するとプラズマと呼ばれる第四の状態ができ、ここからX線が出てくるときいてまたびっくり。ここに量子力学が関係していると聞いて興味がわきました。これがきっかけになり、実験室を見学して、実験をしたいと相成ったことからこの研究が始まりました。

実際には、実験装置の組み立てから実験に至るまで、装置が大型でデータ解析も膨大なので、大学院生と共同で実験・解析に取り組みました。原子番号が64番より大きな重元素金属を用いてレーザー生成プラズマから発生する軟X線の絶対スペクトルを観測し、スペクトルのピーク波長と出力光子数の原子番号依存性を明らかにしました。軟X線スペクトルはunresolved transition array (UTA) と呼ばれる構造を持ち、原子番号が増加するとともに短波長化(高光子エネルギー化)します。X線管の特性X線の光子エネルギーの原子番号依存性はモーズリーの法則に従いますが、原子構造における電子の遮蔽効果を考慮した疑似モーズリーの法則として定式化しました。また、それぞれの元素から強いUTAスペクトル放射に最適な電子温度やイオン価数を算出しました。この研究は、スマートフォンの高性能化や5G/6Gの情報処理のための半導体デバイスや細胞内小器官を観察するための水の窓軟X線顕微鏡の照明用光源として適用できるだけでなく、電子配置に関する量子力学にも重要な知見です。

<受講生の本研究での役割>

大学の研究室で実験を行い、自宅や学校で調べものや原稿執筆を行いました。論文投稿時の追加実験以外は、大学院生の指導の下、受講生が行いました。

<今後の展望の可能性>

今後導入される「理数探究」や課題研究のテーマとして利用可能です。大学教養レベルの実験としても利用できます。また、分野横断型のPBL(IBL)としての特色を活かし、本研究を基にさまざまなトピックスに発展させることもできると考えています。

事務局注:本研究について、論文が国際的な学会誌に掲載されました。

  • 画像:国際ワークショップでのポスター発表の一コマ

    国際ワークショップでのポスター発表の一コマ