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「未来の科学者」の君たちへ

先輩達の活躍

宇都宮大学「iP-U」受講生

増田 愛紀さん

研究テーマ:Highlighting the importance of topsoil in human life through a soil education program
(人間生活に必要不可欠な表土の重要性を伝える教育プログラムの評価)

<研究概要>

日本人の日常生活を支える米の消費の観点から、水稲と表土の重要性を伝えることを目的とした児童生徒向けの土壌教育プログラムが宇都宮大学において開発されました。そのプログラムの内容は、1)カレーライス1杯に用いられるご飯は何粒の米粒からなるかを調べるために、2 gの白米が何粒からなるのかを準備された白米を計数するところから始めます。次に、2)カレーライス一杯のご飯は150 gの白米からなると仮定して、2gの米粒に75を乗じて、カレーライス1杯のご飯に含まれる米粒を計算して求めます。さらに、3)その白米は、何株の水稲の穂に稔るかを計数するために、附属農場から採取した水稲株に触れながら調べます。その後、4)その水稲株が生育している土壌(表土)の面積や質量を計測します。加えて、5)堆肥を連用している水田、化学肥料を連用している水田の土壌に触れて、その手触りを実感します。以上の観察実験より、カレーライス1杯のご飯が土壌(表土)とつながっているという実感をもつことができるように、この土壌教育プログラムパッケージは企図されています。

本研究では、この土壌教育プログラムパッケージを、児童生徒を対象に実施した前後にアンケート調査を行った結果を解析・評価し、その妥当性を評価することを目的としています。土壌教育プログラムは、2019年10月に実施し、参加した児童生徒は19人で、学年は、小5~中3でありました。その観察実験に取り組んだ児童生徒を観察した結果、児童生徒は全員真剣に土壌教育プログラムにおいて準備された白米、水稲株、そして表土を用いた観察実験に取り組んでいました。このプログラムを実施した後のアンケート調査は、次の質問をしました。Q1.今日の観察会でどんなことが1番面白かったですか。Q2.今日の観察会でどんなことがわかりましたか。Q3.土についてもっと知りたいことはありますか。それはどんなことですか。この回答を解析した結果、「土に触れたことが面白かった」や「土についてもっと知りたい」と感じた児童生徒が多く認められたこと、さらに、児童生徒が計算を真剣に取り組んでいるだけでなく、イネや白米等の現物に触ることによって飽きることなく授業を聞くことができる点が、このプログラムの優れている点であると評価されました。

<受講生の本研究での役割>

土壌教育プログラムパッケージとPre-Postのアンケート調査票については、宇都宮大学の農学部および共同教育学部の教員によって創出されました。その教育プログラムの実施にあたり、受講生には、この教育プログラムのPre-Postアンケート結果の解析に基づいた評価を、教員の指導の下で担当しました。その評価の視点は、受講した児童生徒に年齢が近いiP-U生ならではの視点より、この土壌教育プログラムパッケージを評価しました。アンケート調査結果の解析に基づく評価に際しては、教員の目線では気づけなかったオリジナルな解析・評価があり、受講生の評価者としての役割は本研究の要でした。

<今後の展望の可能性>

改訂された学習指導要領において、小6理科の単元「生物と環境」で、「人は、環境と関わり、工夫して生活していること」が新設されました。本研究より、この単元の項目の教材として、「カレーライス一杯のお米を作るにはどれぐらいの土壌が必要か」に関する土壌教育パッケージが活用可能であると期待されています。令和3年度の日本土壌肥料学会のシンポジウムにおいて取り上げて、国際的に広く周知する展開が考えられています。

事務局注:本研究は国際的な学会で報告されました。

  • 画像:受講生本人

    受講生本人

  • 画像:国際的な学会で報告した資料の一部

    国際的な学会で報告した資料の一部