研究テーマ「金星大気衛星間電波掩蔽観測立案に向けたデータ同化による研究」
私は高校1年時に、何か科学に関する新しいことがしたいという思いでこの慶應義塾大学GSCプログラムに参加しました。そのイベントの中で現在お世話になっている杉本先生の講義を聞いたときに宇宙に惹かれ、また、ご縁もあって、この研究を始めました。
金星は地球の双子星と言われ、質量や大きさは地球と似ていますが、大気部分は大きく異なっています。特に高度45-70km付近が厚い雲層で覆われているために、下層の大気の状態は知られていません。現在行われている金星探査機「あかつき」の観測のような、地球と探査機間の電波掩蔽観測では、雲層の下を観測できますが、観測機会が非常に少ないのが問題です。そこで有望視されているのが、衛星間の電波掩蔽観測です。本研究では、金星初のデータ同化システム(ALEDAS-V)を用いて金星大気大循環モデル(AFES-Venus)に衛星間電波掩蔽観測を想定した仮想観測データを同化する、観測システムシミュレーション実験を実施しました。仮想観測データは、金星特有の現象であるコールドカラーをよりよく再現したフランスの金星大気大循環モデルから作成し、観測条件を変えた一連の実験を行いました。そして、コールドカラーの再現性から観測ミッションの有用性を検討しました。その結果、2-3機の衛星があれば、コールドカラーが再現できることが分かり、ミッションが有用であると結論づけることができました。現在はより詳細な議論を進めるために実軌道を考慮して、より現実的なコールドカラーの同化実験や低緯度域の大気構造の再現に向けた観測システムシミュレーション実験(OSSE)も行っています。
このプログラムに参加し、様々な研究者の方と研究を進めていくなかで、研究は様々な人の協力なくしてはできないことを実感しています。その方々の支えのおかげで、国際学会AOGS 2019での発表や国際的な学会誌への論文投稿(2019年12月受理)、また令和元年度GSC全国受講生研究発表会での科学技術振興機構理事長賞受賞に繋がりました。これまでは、宇宙に馴染みがなかったのですが、この研究を通して、将来、宇宙の研究に関わりたいという気持ちも固まりました。
事務局注:本研究について、論文が国際的な学会誌に掲載されました。