研究テーマ「VCとCuの複合析出によるマルテンサイト鋼の高強度化」
小学6年生の時、未曾有の災害によって無垢な命が失われた福島第一原子力発電所の事故から、科学技術の発展と倫理的問題の現実を垣間見たように感じ、科学者はブレークスルーへ猛進する前に、倫理的問題について熟議する必要があると思いました。そこで私は、学生のうちから一足早く、科学技術に関する倫理について知識を深めながら研究活動を開始したいと考え、九州大学QFCSPに参加しました。
科学技術の発展による問題は存在するものの、環境保全も重視されていることから、自動車の軽量化につながる鋼の微細構造設計に取り組むことにしました。マルテンサイト鋼中に硬質なバナジウム炭化物粒子と軟質な銅粒子を複合分散させるという革新的な手法を用いることで、強さや靭さを兼ね備えた新鉄鋼材料の開発に成功し、その力学的特性や微細組織を従来鋼と比較しました。
GSCプログラムを通して、SEM(走査型電子顕微鏡)などの研究機器の操作経験、大学の先生方のご指導、海外大学での研究発表など、GSCでなければ経験ができない沢山の機会をいただき、工学の道を歩む勇気と自信を身につけることができました。今後は、ナノサイズの金属構造を用いて光を操るメタマテリアルの開発など、材料工学・科学の研究に取り組みながら他領域にも目を向け、異分野融合を視野に入れた研究を進めたいと考えています。
(平成31年度版GSCパンフレットより)
研究のポスター発表
鉄鋼の焼き入れを行う様子