研究テーマ「The Divergent Dimerization Behavior of N-Substituted Dicyanomethyl Radicals: Dynamically Stabilized versus Stable Radicals.」
ジシアノメチルラジカルがベンゼン環のパラ位を介しアミノ基と結合した分子は、そのラジカルの安定性により、単量体と二量体との平衡状態を形成する動的共有結合を持ちます。この論文では、置換基のわずかな変化により、動的共有結合の強度や結合様式が変化することを示しました。特に、ジュロリジン基を有する分子は、二つの分子が面と面で結合したπ-dimerを形成し、ジシアノメチルラジカル誘導体では非常に珍しい結合様式です。また、このπ-dimerを形成する上で、電気双極子同士の静電的エネルギーが重要であることが明らかになりました。このような発見は今後、安定なラジカルやπ共役系分子の研究に繋がることが期待されます。
この研究では、“ラジカル”と呼ばれるちょうど化学結合が切れた状態の分子を私たちが手で扱えるほど安定につくりだしました。二つのラジカルがくっつく様子について、一本の化学結合か、あるいはたくさんの化学結合かの状態で切り替えられることを見つけました。平さんは、この分子を実際につくりだす過程を担当しています。
化学結合は、多くの場合で“つながっている”か“切れている”かのどちらかです。この中間の状態は、物質にできた傷を自然に直したり、熱や光・力を加えると性質が変わったり、あるいはそれを正確に測るための物質につながっていくと考えています。
(JST成果集2018より)
事務局注:本研究について、論文が国際的な学会誌に掲載されました。
今回の研究で合成された分子
研究の様子