科学オリンピックだより
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「科学オリンピックだよりvol.16」
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 化学コースの課題は、2015年のアゼルバイジャン大会の準備問題であった「錯体の生成を利用した金属の定量」実験でした。 錯体とは金属イオンとそれに結合した配位子の複合体を指し、非常に多くの種類が存在します。 高校化学の教科書には、「錯イオン」としてごく限られたものが登場するだけですが、遷移金属錯体には色彩の鮮やかなものが多いので、美しい色への興味をきっかけに、生徒が化学への関心をもつことも多いようです。 日本の高校化学のレベル向上を目指す「日本の化学の未来を考える会」のメンバーであり、化学オリンピック代表生徒の指導・引率を長年担当する埼玉大学の永澤名誉教授、芝浦工業大学の中村教授、東京農

工大学の米澤教授の丁寧な指導・解説によって、長時間の実験でしたが、受講者全員が集中し、結果を導き出していました。
参考サイト>>http://icho.csj.jp/exam.html#exam4
 情報の研修では、情報教育の現状やあり方について、文部科学省教育課程部会 第1回情報ワーキンググループの資料 を基にした概要の説明から始まり、情報の科学的な理解をテーマに研修が進行されました。情報オリンピックで求められるのはプログラミングの力だけでは無く、@問題を論理的に分析する能力、A分析結果に基づき、効率の良いアルゴリズムを設計・解析する能力、 B設計したアルゴリズムを実装・テストする能力です。情報オリンピックの国内予選では使用言語の制約はありませんが、本戦での言語はC/C++、OSはLinuxの使用が定められています。この日の研修では、 コンピュータを使わずに情報科学を教えるための学習
法( Computer Science Unplugged )や子ども向けビジュアルプログラミング言語の Scratch 、教育用に設計されたオブジェクト指向型プログラミング言語の ドリトル の紹介、コンピュータサイエンスの基礎を確かめることを目的に実施されている ビーバーコンテスト の課題解法など、多岐にわたる研修項目が実施されました。 講師は電気通信大学の西野哲朗教授でしたが、近年のスマートフォンの普及で、同大学でもコンピュータのキーボードに不慣れな学生が多いことを憂慮していて、 児童にもコンピュータを使わせ情報科学への動機付けをする状況設定が必要と考えているという話には、受講者全員深く頷いていました。

 この研修会は今回で5回目となりますが、 同県から科学コンテストに挑戦する生徒数は、 研修開始以前に比べほぼ倍増し、熱心な受講者と指導者の情報交換の場としても定着した感があります。
 国際科学オリンピックは、2016年8月の国際地学オリンピック三重大会を皮切りに、 2018年情報、2020年生物学、2021年化学、2022年物理と国際大会の日本開催が続きます。この種の教員向け研修会は、生徒たちの背中を押して頂ける先生方の一助になればと今後も継続する予定です。