インフラ維持管理・更新・マネジメント技術

最終更新日:2015年4月1日

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)
課題「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」研究開発課題一覧(JST担当分)

(1)点検・モニタリング・診断技術の研究開発
研究開発小項目 研究開発課題名※1 研究責任者 概要
(1)-(A)-a 医療分野や産業分野で普及している先端計測技術、電磁波やレーザーなどを駆使した先端計測技術に基づく点検・モニタリング・診断技術の開発 異分野融合によるイノベーティブメンテナンス技術の開発 石田 雅博
(独立行政法人 土木研究所構造物メンテナンス研究センター 橋梁構造研究グループ 上席研究員)
橋梁・コンクリート構造物等の維持管理の合理化のため、医療用や産業用の先端的な非破壊検査技術を多様な環境下にあるインフラの現場へ導入できるよう、撤去された橋梁部材や維持管理の現場での実証試験を実施し、健全性を診断する技術を開発する。
レーザー超音波可視化探傷技術を利用した鋼橋の劣化診断技術の開発 高坪 純治
(つくばテクノロジー株式会社 研究開発部 取締役CTO) 
レーザー超音波可視化探傷法を利用して、鋼橋に発生するき裂や腐食等の欠陥を、遠隔で効率的に検出できる非接触・非破壊の劣化診断技術を開発し、点検精度の向上と点検作業の省力化・平易化を両立させることを可能とした画期的な「レーザー超音波可視化探傷技術を利用した鋼橋の劣化診断技術」の開発を行う。
インフラ劣化評価と保全計画のための高感度磁気非破壊検査 塚田 啓二
(岡山大学 大学院自然科学研究科 教授)
先端生体磁気計測装置や先端金属資源電磁探査機器について、 非破壊検査装置への展開を行い、橋梁では鋼材やケーブルの内部あるいは裏面までの腐食・亀裂を、また、各種配管では内部の腐食を高感度に検出、評価する技術を開発する。フィールド試験による計測手法の評価とともに、腐食形状、大きさを求める解析手法による総合評価を行い、インフラのメンテナンスマネジメントの指針を確立する。
レーザーを活用した高性能・非破壊劣化インフラ診断技術の研究開発 緑川 克美
(独立行政法人 理化学研究所 光量子工学研究領域 領域長) 
レーザーによる表面および内部診断計測技術を開発する。表面形状計測では、周波数シフト帰還型レーザーを導入し、また内部観測法では、これまでの機械的な打診にかわる3次元の高速内部状態計測技術を開発する。 これにより、トンネル表面の亀裂、ひび割れや内部欠陥の高速検出、トンネル・橋梁等の変形を正確に把握するとともに、これらのデータを3次元イメージ化し、予測診断を含めた計画的なインフラ保守保全に資する。
(1)-(A)-b インフラ分野にとってこれまでにない新しい計測技術を活用した点検・モニタリング・診断技術の開発 舗装と盛土構造の点検・診断自動化技術の開発 八嶋 厚
(岐阜大学 工学部 教授)
本課題は、道路の舗装面から盛土深部に至るまでの健全性評価を迅速、定期的、安価に実施できるシステムに関するものである。 本課題では、既に開発した2次元表面波探査の自動計測装置の高度化と牽引式電気探査を融合することで全く新しい自動化診断技術を開発し、現場での実証を行う。
コンクリート内部の鉄筋腐食検査装置の開発 生嶋 健司
(東京農工大学 大学院工学研究院 准教授)
本課題は、超音波を利用した新しい磁気測定法(ASEM法(音響誘起電磁法))によりコンクリート内の鉄筋腐食状態を検知し、橋梁インフラの予防保全に貢献する非破壊検査装置に関するものである。 本課題では、ASEM応答と鉄筋腐食との相関を定量化し、現場検証可能な専用計測システムの開発を行う。
コンクリート内部を可視化する後方散乱X線装置の開発 豊川 弘之
(産業技術総合研究所 計測フロンティア研究部門 研究グループ長)
本課題は、橋梁やトンネルなどの劣化・損傷に起因する大事故を未然に防ぐため、放射線計測と電子加速器分野の最新技術を使った検査技術に関するものである。 本課題では、X線の利点である高精細画像と、電磁波レーダーの利点である片側アクセシビリティの簡便性を併せ持つ後方散乱X線イメージング装置について、高エネルギー小型X線発生装置と検出器を開発するとともに、それらをロボットアームに搭載するシステム開発を行う。
インフラモニタリングのための振動可視化レーダーの開発 能美 仁
(アルウェットテクノロジー(株)代表取締役)
本課題は、最新レーダー技術を用いて交通を遮断することなく遠隔地から橋梁等の計測が行える安全、迅速なモニタリング計測に関するものである。 本課題では、マイクロ波を照射して観測対象のレーダ画像を取得すると同時に各部分の微小振動を計測できる振動可視化レーダ技術を開発し、さらに計測したインフラ構造物の振動データから固有振動を求めるソフトウエアの開発も行う。

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(2)構造材料・劣化機構・補修・補強技術の研究開発
研究開発小項目 研究開発課題名※1 研究責任者 概要
(2)-(A) 各種研究機関の密接な連携による次世代インフラ構造材料の総合的・実用化研究開発 インフラ構造材料研究拠点の構築による構造物劣化機構の解明と効率的維持管理技術の開発 土谷 浩一
(独立行政法人 物質・材料研究機構 元素戦略材料センター センター長)
インフラ構造物の高精度余寿命診断と計画的かつ低コストな補修・補強を可能にするために、産業界・大学・関連研究機関が連携する研究拠点を構築し、鉄筋コンクリート構造物の損傷劣化機構の解明と補修材料の開発を中心とした研究を行う。腐食ひび割れと腐食量の関係に基づいた比較的簡易な性能評価手法の利点を活かし、地方自治体等の管理団体での優先度診断に資する技術の開発と長寿命化も含めた低コストな補修法の確立を目指す。
(2)-(B) インフラ構造物の劣化検出・診断のための新材料に関する研究開発 構造物の状態を高度可視化するハイブリッド応力発光材料の研究開発 徐 超男
(独立行政法人 産業技術総合研究所生産計測技術研究センター応力発光技術チーム 研究チーム長) 
自己発光によって様々な構造物の破壊予兆と劣化進展を、オンサイト・オンタイムに可視化する機能(セルフ・リポート機能)を実現可能なハイブリッド応力発光材料を開発し、構造物の高度安全安心化を目指す。具体的には、結晶制御による高感度化、波長制御による多色化・定量標準化・視認性向上、ハイブリッド化による高効率性・多機能性の発現、さらに他分野との連携によるインフラ構造物の劣化検出・診断の実証を目指す。
(2)-(C) 鋼構造物の腐食による劣化損傷に対する補修技術の研究開発 鋼構造物の腐食による劣化損傷の新溶射材による補修技術の研究開発 東 健司
(大阪府立大学 工学研究科 教授)
金属溶射のみで、腐食環境の厳しい塩害地域で100年間の長期間に耐えることができ、その後の塗り替え塗装など定期的な補修作業を必要としない防食性能の高い金属溶射材料を開発することで、溶射皮膜の膜厚の薄膜化および溶射後の塗装工程の省略を実現し、従来より低コストで施工可能な補修技術を開発し、メンテナンスフリーな防食溶射技術を確立する。

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(3)情報・通信技術の研究開発
研究開発小項目 研究開発課題名※1 研究責任者 概要
(3)-(A) インフラのセンシングデータを収集し統合的に解析する技術の開発 インフラ予防保全のための大規模センサ情報統合に基づく路面・橋梁スクリーニング技術の研究開発と社会実装 家入 正隆
(JIPテクノサイエンス株式会社 取締役 インフラソリューション事業部長) 
急速な老朽化が進むインフラに対して、予防保全による維持管理技術の確立は喫緊の課題である。本研究開発では橋梁と舗装に着目し、センシングデータの多量収集技術、統合的データ管理・分析技術の基礎研究を行い、事故リスクの高いインフラを、確実かつ効率的に絞り込むためのスクリーニング技術に関する研究開発を行う。
社会インフラ(地下構造物)のセンシングデータ収集・伝送技術及び処理技術の研究開発 上原 一浩
(日本電信電話株式会社 NTT未来ねっと研究所 ワイヤレスシステムイノベーション研究部 部長)
通信環境が過酷な地下構造物(上水道管など)のモニタリングを、無線通信を利用して収集、蓄積したデータを活用することで実現し、信頼性の高い予防保全に向けたデータ収集・処理技術を確立し、実証実験を通じて普及を目指す。 具体的には、異なる周波数帯による省電力な無線待受起動法、伝搬モデル化と環境推定による無線通信の最適化を行うとともに、時系列データを活用した微細変化の検知、多様な管路等への対応を行う。

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(4)ロボット技術の研究開発
研究開発小項目 研究開発課題名※1 研究責任者 概要
(4)-(A) 維持管理ロボット・災害対応ロボット開発に必要なコア技術(ロボティクス技術)の開発 柔軟静電吸着装置を搭載した半自律飛行マルチコプタによるインフラ構造物点検システムの開発 長谷川 忠大
(芝浦工業大学 工学部電気工学科 教授)
従来の吸着技術の課題を解決した、柔軟な静電吸着装置を開発することにより、半自律飛行マルチコプタが操縦・自律を切り替えて点検箇所まで飛行し、飛行状態から静電吸着装置を利用して壁面に吸着・静態して、カメラによる近接撮影を実施する壁面検査システムを実現する。これにより、ロボティクス技術を用いた点検システムの推進に貢献する。
マルチコプターによる計測データ解析に基づく異常診断技術の研究開発 福田 敏男
(名城大学 理工学部 教授)
打音・目視点検機能を搭載した4つのロータを有するマルチコプターをベースとしながら、胴体部を稼働できる形の可変機構を搭載したマルチコプターを開発する。また、動きのある画像列に対する点検用全焦点画像生成アルゴリズムの適用により、外乱による影響がある中でも安定した打音・目視診断技術を開発し、マルチコプターによる計測データ解析に基づく異常診断の実現を目指す。
人体計測技術を用いた直感的な遠隔操作型ロボットの開発 藤江 正克
(早稲田大学 理工学術院 教授) 
バーチャルリアリティー環境内にて、シミュレートされたロボットを操作している人の各関節の3次元位置、視線、脳機能を解析・モデリングし、人間の筋骨格や認知特性を踏まえてロボットの構造決定や制御設計に活かし、直感的に操作可能な遠隔操作ロボットの設計手法を構築する。

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(5)アセットマネジメント技術の研究開発
研究開発小項目 研究開発課題名※1 研究責任者 概要
(5)-(A) インフラマネジメント技術の国内外への展開を目指した統括的研究 道路インフラマネジメントサイクルの展開と国内外への実装を目指した統括的研究 前川 宏一
(東京大学 大学院工学系研究科 教授) 
コンクリート系橋梁床版の余寿命推定法とコスト削減・高耐久化を実現する橋梁の設計/管理技術を開発するとともに、広域道路への実装を展開し、技術基準や点検制度等の改善と進化を実現するインフラアセットマネジメントの標準化を図る。さらに地方自治体に展開するための財源確保、調達、入札、契約、組織などの仕組みを提案する。あわせてアセットマネジメントを国際展開するアジアのネットワークを形成し、具体的に実装を行う。
コンクリート橋の早期劣化機構の解明と材料・構造性能評価に基づくトータルマネジメントシステムの開発※2 鳥居 和之 (金沢大学 理工研究域 環境デザイン学系 教授)  北陸地方のコンクリート橋で生じている、塩害やアルカリシリカ反応(ASR)による深刻な早期劣化の現状を把握するとともに、財源と専門技術者が不足する厳しい状況の中で、緊急性と重要性を踏まえつつ、地域の大学関係者と民間技術者ならびに道路管理者の参画のもと、点検やモニタリング、評価や判定、対策や更新への個別的な課題の抽出を通して、地方道路橋が事後保全から予防保全へ転換できるよう、新技術の開発及びマネジメントシステムの構築を行う。
(5)-(B) 特定の基幹インフラ施設を対象にした維持管理・更新・マネジメント技術(河川、港湾、鉄道、上下水道、農業分野などの施設・構造物が対象)の開発 港湾構造物のライフサイクルマネジメントの高度化のための点検診断および性能評価に関する技術開発 加藤 絵万
(独立行政法人 港湾空港技術研究所 構造研究チームリーダー) 
港湾構造物の維持管理は、他の社会基盤構造物と比べて劣化の進行が速いことや点検が困難である等の特徴があるため、安全性確保のための大規模な対策が必要となる場合がある。本課題では、港湾における鋼・コンクリート部材の安全性評価手法を高度化するとともに、評価に必要となるデータが取得可能な点検装置の開発、適切な点検箇所・センサ配置等を考慮した点検診断システム等を開発し、効果的・効率的な維持管理の実現を目指す。
基幹的農業水利施設の戦略的なアセットマネジメント技術の開発 中嶋 勇
(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 上席研究員) 
施設の老朽化、管理組織・人の高年齢化という状況を受け、複数種類の施設で構成される農業水利システムのアセットマネジメントを円滑に進める技術の開発を行う。具体的には、目視診断で対応困難な施設に対し、目視診断に換わる技術を開発する。また、後追い対策が多く予防保全が困難な施設に対し定量的な性能評価技術を開発するとともに、維持管理の効率化と人材育成に資する技術を開発する。

※1 研究開発課題名は今後変更される可能性があります。
※2 平成26年11月中旬研究開始予定

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