「ナノ界面技術の基盤構築」

平成24年度 研究終了にあたって

「ナノ界面技術の基盤構築」研究総括 新海 征治

 「界面技術」を標榜する本研究領域の目標および運営方針については、「平成23年度研究終了にあたって」で記述した通りです。本年度を以って、平成19年度に採択した5課題の研究が終了しました。この年にスタートした課題は有賀チームの”hard material”から由井チームの”soft material”までの幅広い研究分野を包含していました。異質の研究チームが一同に会することによるプラス面は、その交流が予想外の発見を生み出したり、融合による新規な研究分野の創出につながったりする可能性を拡げることです。一方、マイナス面としては、各研究チームがバラバラになってしまい、研究会などの議論も低調となる恐れがあることです。このために、まずは各研究チームの中心課題を深化するとともに、研究チーム間の共同研究を進めることを強く推奨しました。5年が経過した現時点で自己総括すると、本年度終了の5課題については、このプラス面とマイナス面がそのまま出てしまったように感じます。
 しかしながら、5チームとも「ナノ界面技術の基盤構築」に資する成果を着実に上げてくれたものと考えています。例えば、有賀チームは研究スタート時点ではやや漠然としていたRashba効果の概念を明確に確立しました。平川チームは再現性よいナノギャップ電極の作製法を確立し、これを基盤に一般性の高い一分子電気特性の評価法を提案しました。一方、由井チームはやや研究が出遅れましたが、終盤では動的特性を持つ生体界面の機能が次々と明らかにされました。君塚チームおよび藤田チームの研究課題は両者の中間に位置する有機/無機ハイブリッドですが、有機物と金属が持つ特徴を巧みに組み合せて、複合材料のみが創出する機能が多数発掘されました。君塚チームは動的あるいは散逸的な条件下での分子集合に新境地を開きました。藤田チームの業績は多数ありますが、特質に値するのは研究終盤になって登場した「多孔質結晶を利用するX線構造解析」でしょう。この技術は、今後の有機構造化学に大きなインパクトを持つものと信じています。
 各チームの研究成果の完成度はまちまちですが、いずれも今後一層の発展が見込める内容です。CREST終了後も各研究課題が更に展開することを期待しています。

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