前中センシング融合プロジェクト

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研究総括 前中 一介
(兵庫県立大学 大学院工学研究科 教授)
研究期間:2007年~2012年

 

 

世界的な少子高齢化、生活習慣病の蔓延、社会の複雑化による大事故の発生などに対応するべく、絆創膏のような形態で体への貼り付けを前提とした超小型・低消費電力の生体活動モニタリングシステムを、MEMS技術をベースにして構築します。このシステムは、長期にわたり常時人の行動を見守り、疾病の予防、健康アドバイス、危険が発生しそうな場面での事前警告、転倒や事故などが発生したときの即時通報などの機能を有し、安全で安心な社会構築に貢献します。研究はMEMS技術で多種類のセンサ群を融合したデバイス構築、超低消費電力の集積回路群の実現、振動や日射・熱による超小型発電デバイスの試作、さらには生体信号処理用の新しいアルゴリズムの開発や、低消費電力無線モジュールの開発、市販デバイスによるデモモデルの試作と提供など、極めて多岐にわたっています。プロジェクト期間内では絆創膏型システムの考え方や成果について積極的に啓蒙を進め、今日ではウエアラブル健康管理システムの核のひとつとして絆創膏型システムが認められるようになりました。

 

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研究成果集

センサグループ

センサグループでは、将来のデバイスのディスポーザブル化を視野に入れ、バッチ処理でセンサや回路を融合できることを担保した上で、新しい構造や材料を検討して各種の生活環境、生体信号を取得するセンサ群を構築しました。これまで実現してきた素子は、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、運動センサ、心拍センサ、心電および筋電センサ、光反射型心拍および血中酸素飽和度センサ、などとなります。これらは、同一チップ上に融合可能な構造・プロセスと材料を用いており、将来の量産化・低価格化にも対応できるものです。また、構造の超小型化、センサの究極的な低消費電力化のために、新しいナノ加工手法や新規な基板構造などを提案して、その有効性を確認しています。

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左:各種のMEMSセンサデバイス  右:気圧センサ(Sensors J.の表紙掲載)

  1. Y. Jiang, et. al.: “Characterization of Mechanical Properties of Cantilevered Nd2Fe14B/Ta Magnetic Microstructures”, Applied Physics Express 4 (2011) 116401
  2. O. Nizhnik, et. al.: “Self-Calibrated Humidity Sensor in CMOS without Post-Processing”, Sensors 2012, 12, pp. 226-232 (2011)
  3. K. Sonoda, et. al.: “Wearable Photoplethysmographic Sensor System with PSoC Microcontroller, Int. J. of Intelligent Computing in Medical Sci. & Image Processing, Vol. 5, Issue 1, pp. 45-55 (2013)
  4. X. C. Hao, et. al.: “The application of silicon on nothing structure for developing a novel capacitive absolute pressure sensor”, IEEE Sensors J., Vol. 14, No. 3, pp. 808-815(2013)

 

PZT応用グループ

本プロジェクトでは、MEMSプロセスとの融合が難しいとされる圧電材料、PZTを有為に応用するためのグループを形成しました。圧電材料は、歪みが与えられると電荷(電気エネルギー)が発生するため、エネルギ-消費が負のセンサと考えることができ、システムの低消費電力化に貢献可能です。また発電デバイスとしても適用可能です。我々はまず、加工条件について詳細な研究を進め、すべてのプロセスをドライ化して精度の高い微細加工を可能にしました。微細化が可能になったため、PZTセルの直列化により出力電圧を増大するアイデア、セルを適切に接続することによって応力印加に対する演算を行い、電子回路に対する負荷を低減するアイデアなどを提案し、実証しました。現在、応用対象としてはもっぱら加速度センサとしての応用を行っていますが、今後マイクロパワーグループの成果を有効に利用して振動型発電素子などへの応用も期待できます。

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左:PZT(3µm厚)の微細加工  右:48個のPZTセルを持つ加速度センサ

  1. Y. Jiang, et. al.: “Characterization of Mechanical Properties of Cantilevered Nd2Fe14B/Ta Magnetic Microstructures”, Applied Physics Express 4 (2011) 116401
  2. O. Nizhnik, et. al.: “Self-Calibrated Humidity Sensor in CMOS without Post-Processing”, Sensors 2012, 12, pp. 226-232 (2011)
  3. K. Sonoda, et. al.: “Wearable Photoplethysmographic Sensor System with PSoC Microcontroller, Int. J. of Intelligent Computing in Medical Sci. & Image Processing, Vol. 5, Issue 1, pp. 45-55 (2013)
  4. X. C. Hao, et. al.: “The application of silicon on nothing structure for developing a novel capacitive absolute pressure sensor”, IEEE Sensors J., Vol. 14, No. 3, pp. 808-815(2013)

 

マイクロパワーグループ

究極の体躯貼り付けシステムは、エネルギーを自給し、バッテリーレスで動作するシステムです。このため、我々は振動や熱、光などから電気エネルギーを取り出す、いわゆるエネルギーハーベスタデバイスに関する研究を進めました。エネルギーハーベスタは身体貼り付けシステムのみならず、橋梁などの耐久建造物、多数のセンサノードからなる大規模システムなど、電池交換や電源ケーブルの敷設が難しいシステム一般にも応用することができます。我々は身体装着向け太陽電池、体温で発電するデバイスなども試作検討しましたが、もっぱら振動を電気エネルギーに変換するデバイスについて、エレクトレットおよびNdFeB磁石薄膜を用いて10mm角、厚さ1mm程度のデバイスを実現しています。研究では、NdFeB磁石薄膜の微細加工、エレクトレットの新規荷電手法など、多くの新しい技術を提案し、試作・評価を行っています。現在、数百Hz、1G程度の振動から10µWを発生するデバイスが実現できており、この値はシステムグループが想定する絆創膏システム稼働のための平均電力値を満たしています。ただし、身体の運動はもう少し振動周波数が小さく、また就寝時には振動入力がありませんので実際の生体センシングシステム駆動には熱電や光発電および蓄電機構の併用が必要です。ただし、モーターやエンジン、タイヤなど、高周波性の振動が常時加わる場所にはそのままセンシングノードの電源として用いることができます。今後、耐久性等の検討を進めれば早期に実用化も十分可能である成果が出たものと思われます。

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左:試作された4インチウエハ上のデバイス 中:マイクロ磁石とコイル 右:完成したデバイス

  1. Y. Jiang, et. al.: “Micro-structuring of thick NdFeB films using high-power plasma etching for magnetic MEMS application”,J. Micromech. Microeng. 21 045011 (2011)
  2. Y. Jiang, et. al.: “Fabrication of a vibration-driven electromagnetic energy harvester with integrated NdFeB/Ta multilayered micro-magnets”, J. Micromech. Microeng. 21, 095014 (2011)
  3. Y. Tanaka, et. al.: “Electromagnetic Energy Harvester by Using NdFeB Sputtered on High Aspect Ratio Si Structure”, IOP Journal of Physics: Conference Series 476, 012095(2013)
  4. T. Onishi, et. al.: “Electrostatic Energy Harvester with Laminated SiO2/SiN Electret Charged by Buried Grid Electrodes”, APCOT 2012,ac12000177 (2012)

 

研究成果

評価・追跡調査

プログラム

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