研究開発活動の事例
辻プロジェクト
本取り組みの全体概要はこちら
本プロジェクトでは、今後特に高齢化が急速に進む都市近郊地域において、高齢者に相応しい就労の場・スタイルを創造することを通じて、地域が抱える諸課題の解決をはかるとともに、人生90年時代に相応しい新しいセカンドライフモデルづくりを目指しました。具体的には、千葉県柏市を舞台に、東京大学、柏市、UR都市機構、および地域住民が協働する形で「農」「食」「支援」の3つの側面から生きがい就労ビジネスモデルを創造し、就労高齢者本人および地域にもたらす複線的な効果を検証しました。
地域背景
企画策定に至るまでの対象地域との歴史的背景(長期のもの)、対象地域に特徴的な資源について
①企画策定に至る経緯企画策定に至るまでのこれまでの経緯・対象地域との関係
- 東京のベットタウン柏市(40万人)。多くの住民が他地域より移住。都市近郊地域の急速な高齢化(移住してきた住民の高齢化)に対する対応策が求められていた。また豊四季台団地(S39年)の高齢化の問題も深刻化していた
②地域資源対象地域に特徴的な資源としてどのようなものが存在したか、またそれをどう活かしたか
- 柏市全体は言うまでもなく都市近郊地域としての基本的な都市機能・インフラは充実している。豊四季台団地という高齢化が40%を越す(中心部)地域が存在していたことは一つの特徴。
企画策定
プロジェクトの開始に係る企画策定をどのように行ったか
①課題設定および解決策構想の背景社会実験を行う課題(高齢社会に関連したもの)、および解決策の構想をどのような背景から設定したか
- 【平成21年度上期】
・日常的な問題意識の積み重ね(基本)
・特に重要なのは関係者・住民との対話(自治体、産業界、学識有識者、地域住民)
②対象地域の絞り込み社会実験を行う対象地域をどのように発見・探索したか
- 【平成21年度上期】
・かつてより関係を有していた柏市と今後の高齢化対策に関する検討を重ねるなかでモデル地域を選定
・すでに高齢化率が40%を超えていて地域のハード・ソフトの両面から再開発が検討されていた豊四季台(団地)地域が候補に。
・都市近郊地域の急速な高齢化の問題、20年後の超高齢日本の縮図と言える地域であることから当該地域に決定
③事前調査企画を構築するにあたり事前調査としてどのような情報を入手したか(先行研究・公表情報等)
- 【平成21年度上期】
・超高齢・長寿社会に関する一般的な基礎知識・情報は把握済み
・特に重要なことは地域の実状を把握すること(柏市行政の仕組み・関係性、地域の特定課題、有する資源等)⇒これを有するために柏市関係者との意見交換を積み重ねた
コア体制づくり
プロジェクトの開始に係るコアの体制づくりをどうしたか
①コア体制構築とその組織体制1.事業実施主体(コアメンバー)の選定と構築のプロセス 2.コア体制はどのような組織形態をとったか(当該組織の位置づけや組織体系の構築プロセス等)
- 【平成21年度上期】
・すでに他案件で関係を有していた関係者(東大-柏市)において、継続的な対話を積み重ねるなか、少しずつ話(組織化・PJ化)を具体化させた。
・他方、柏市とURも豊四季台地域の再開発の検討を積み重ねてきたなか、地域におけるモデル開発実験(研究)の場を求めていた東大の希望とが合致して3者(柏市・UR・東大)によるコア体制が築かれた。タイミングがよかった。 - 【平成21年度から平成22年度】
・約1年間は、特段の規約をもたない任意のコンソーシアムの形態をとったが、PJの進捗を踏まえて3者による共同事業としての「協定書」を取り交わし、「柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会」を正式に立ち上げた
②協力関係づくり事業実施者以外の協力的な関係者をどのように見つけ関係を築いたか
- 【平成21年度上期】
・PJメンバーの専門以外の領域についてはアドバイザー的立場で協力関係づくりが必要
・基本的にはPJメンバーが有するネットワークを駆使して紹介を辿る形でヒアリング等を重ねた(農業経営、食事業等のノウハウ等)
③活動方法当該組織の活動をどのように進めたか(打合せの頻度や方法等)
- 【平成21年度から平成22年度】
・東大内では週1回の定期MTGを実施。月1回の頻度で柏市・UR担当者も加わる形での3者の打合せを行っている。ただし、このような定例化をはかったのはPJがかなり進んでからのことであり、それまでは任意の不定期開催であった
④記録体制各フィールドでの変化・進捗等をどのような体制で記録・伝達したか
- ・各回の打合せ資料、議事録、写真をPJメンバーで共有。
・東大内部では関係データを専用フォルダーにおさめてPCに保存している
⑤連絡方法メンバー間の連絡方法・情報共有の方法(特に所属機関が異なるメンバー間の場合の対処方法)
- 【平成21年度から平成22年度】
・日常的にはメールと電話。加えて、定期的な打合せ及びWG活動で情報共有・意見交換をはかっている
・上記の三者による研究会の独自のHPも立ち上げた
予算の実践的利活用
プロジェクトの予算の配分方法や工夫など
①配分方法、使途予算の配分方法や使途、工夫等をどのように行ったか
- 【平成23年度】
・一部の活動(保育、生活支援)については、柏市の予算を確保した
・PJ事業の拡大に向けて、官公庁(厚労省、経産省、農水省他)の補助金の確保も検討したが、適当なものが見当たらず申請まで至っていない
②所属機関との折衝予算の使途等についての所属機関
- -
関与者との関係構築
事業の具現化に必要なPJの担い手をどのようにみつけ、地域との協力関係をどのように築いたか。
① 行政1(国・都道府県単位)国または地域を管轄する行政組織の担当窓口、関係者をどのように見つけ協力を取り付けたか
- -
②行政2 (市区町村単位)地域を管轄する行政組織の担当窓口、関係者をどのように見つけ協力を取り付けたか
- ・本PJの場合、行政はコアメンバーに含まれている(上記C①を参照)
③企業・その他の団体(NPO、大学、医師会など)地域における団体、関係者をどのように見つけ協力を取り付けたか
- ・上記のコア体制づくり(C②)にもあるように、コアメンバーのネットワークを駆使して適任者(事業者)を見つけアプローチを行い、協力関係を構築した
地域介入準備
対象地域に入って行く際の事前準備
①事前の了解取り付け活動1.対象地域に入っていく際、どのように了解取り付け等をはかったか
- 【平成21年度上期】
・第一は、自治会会長への訪問から
・その後は自治体内で行われる各種会合で求められるつど本PJの説明を行い理解を求めた(UR主催の団地住民説明会等)
②地域住民説明と募集・啓発方法地域住民への説明と募集・啓発活動の方法
- 【平成21年度】
(企画段階)
・シンポジウムの形での大きなイベント(2回実施)と地域内を4ブロックに分けての住民説明会(小集会)を並行して行った
(PJへの参加・巻き込み段階)
地域介入(参加・協働)、各グループまたは地域の状況概要
新たな活動を地域に浸透させ、認めてもらうにはどうすればよいか。
【Ga 柏市での取り組み】
①実施概要および状況概要当該グループ(地域)でどのような活動を行ったか、また現在はどのような状況か
- 【平成23年度から平成24年度】
・生きがい就労事業のスタート(雇用)の目処が立った段階で、独自の地域住民向けのセミナー(通称:就労セミナー)を定期的に開催した(2011年11月以降、計6回開催。累計約500名が参加)・さらにセミナー参加者との関係を継続させるための交流イベント(通称:勉強会)も定期的に平行して行っている
②特記すべき課題点と解決のプロセス当該グループ(地域)における取り組みの過程で生じた課題と解決プロセス
- 【平成23年度から平成24年度】
・個々に訪問し面談するか、WGへのオブザーバー参加を促しその場で説明し理解を求めた
・アプローチした事業者に対しては、本研究が求める「生きがい就労」の理念(及びその必要性)の理解と共有が大前提。その上で互い(コア組織と事業者)にwin-winとなるような展開(含、条件)を検討した
広報活動
事業の普及に向けた施策
①広報活動
- ・随時対応を行っている
成果の実装と普及
事業の自立化に向けた施策
①事業の独立1.本PJが育んだ事業の独立・引き継ぎ方法 2.事後のサポート・フォローをどのように行う予定か
- (現時点では調整中:あらゆる選択肢から実現可能性を追求)
・「生きがい就労」の理念と本事業を推進・統括する機能の継承(オフィスセブンの後継組織づくり)に向けては、①厚生労働省の制度・施策への反映、②シルバー人材センターへ機能の組み込み、③民間企業(人材派遣会社等)への機能継承、④オフィスセブンとしての独立事業展開を視野に入れて、それぞれの実現可能性を関係者間で調整・検討している
②法制度化プロジェクトの成果がどのように法制度へ反映されたか、あるいは反映する予定か
- ・厚生労働省における高年齢者雇用対策、社会参加・生きがい増進策への反映に向けて働きかけている
③行政事業プロジェクトの成果がどのように法制度へ反映されたか、あるいは反映する予定か
- ・柏市シルバー人材センターとの協議ならびに協働取り組みを進めている
④ビジネスモデル当該事業について本事業からの独立にあたり「事業化」のためのビジネスモデルをどう構築するか
- ・PJメンバー他(柏市住民)で本事業を継承・サポートすることを目的とした組織(一般社団)を設立予定
・また複数の民間企業とも継続的な検討(研究会)を重ねている