2013年3月31日をもちまして、領域の活動は終了致しました。

 インターネットの普及により、気軽に情報をアップできる電子掲示板などが注目されています。一方、掲示板には援助交際や薬物取引など違法・有害な情報もあり、子どもが犯罪に巻き込まれるケースが問題になっています。これは携帯電話からのネット利用にも同じことがいえます。ネット上の情報量はとても多く、また隠語が使われることもありその変化も早いので、ネットパトロールなどの活動には限界があります。
 そこで、電子掲示板やプロフィールサイトを対象に、子どもの犯罪に関わる違法・有害な情報を自動で見つけるしくみをつくりました。またネット上の人間関係を調べ、危険がないか判断する方法も開発しました。そして、これらの成果を「違法情報の判別」と「ネットパトロール支援」の2つのシステムにまとめました。

 違法情報を判別するシステムは、掲示板のURLを入力するだけで、投稿された記事などに違法な情報がないかを自動で調べられるというものです。有害な単語を登録した辞書をつかって、電子掲示板自体とそれぞれの記事にふくまれる語の両方を検索し、違法な情報を見つけだします。
 有害語には隠語や、時代の流れ・流行で新しく出てくる語もありますが、それらも自動的に発見し、辞書を半自動的に更新していくしくみを考えました。実際に、「家出」の関連用語である「神待ち」を自動的に把握することに成功しています。一度調べた掲示板はURLを登録しておくことで、新たに投稿される記事も継続してチェックできます。

 ネットパトロールの支援システムは、他のプロジェクト(PJ④)との共同研究で開発しました。子どもがネット上にアップしたプロフィールや書込みから、危険な行為や危ない人間関係がないかを判別するというアイデアを、自動化しようと試みたものです。子どもとほかのユーザの関係はグラフで表され、子どもを取り巻く環境がわかります(図1)。またネットパトロールの効率を高めるため、携帯電話用のサイトをパソコンでも見られるようにしました。
 開発した2つのシステムは、人の手で違法情報の判別やネットパトロールを行った場合と比べても、一定の精度があることが確認できました(図2)。ネット上でトラブルに巻き込まれる可能性の高い子どもや、掲示板を継続して見守ることで、効果的な防犯活動につながると期待しています。今後は、さらなる精度や使い勝手の向上をはかり、ネットパトロールに取り組む企業やNPO、学校にサービスを提供していきたいと思います。

代表者・グループリーダー
■中村 健二:立命館大学情報理工学部 助手 / (株)関西総合情報研究所 技術顧問
■安彦 智史:(株)関西総合情報研究所 マネージャー
■山本 雄平:(株)関西総合情報研究所 Webソリューショングループサブリーダ

主な実施者
■北野 光一:関西大学大学院 D3 ■寺口 敏生:関西大学大学院 D2 ■大谷 和史:関西大学大学院 M2
■嘉村 準弥:立命館大学大学院 M2 ■荒川 裕子:立命館大学大学院 M1 ■井上 健治:立命館大学大学院 M1
■北野 光一:関西大学大学院 D3 ■塚田 義典:(株)関西総合情報研究所 社員
■打尾 賢一:関西大学大学院 M2 ■加藤 雄大:関西大学大学院 M2 ■成松 潤:関西大学大学院 M2
■西江 将男:関西大学大学院 M2 ■足立 佳哉:関西大学大学院 M1 ■和泉 紘介:関西大学大学院 M1
■上野 友里恵:関西大学大学院 M1 ■平松 祐樹:関西大学大学院 M1
■中本 聖也:関西大学総合情報学部 D4 ■柳田 尚明:関西大学総合情報学部 D4
■加藤 諒:関西大学総合情報学部 D4 ■田口 諒:関西大学総合情報学部 D4
■吉田俊也:関西大学総合情報学部 D4 ■松田 貴寛:関西大学総合情報学部 D4
■姜 文渊:関西大学総合情報学部 D4 ■福島 佑樹:(株)関西総合情報研究所 社員
■川野 浩平:(株)関西総合情報研究所 社員 ■北川 洋平:関西大学大学院 M2 ■木本 直樹:関西大学大学院 M2
■村本 晋一:関西大学大学院 M2

協力者
■田中 成典:関西大学総合情報学部 教授 ■池辺 正典:文教大学情報学部 専任講師 
■藤原 利弘:(株)関西総合情報研究所 代表取締役社長 
※所属・役職は、参加終了時のもの。詳しくは研究開発実施終了報告書を参照。

【論文】

■中村 健二,井上 賢治,小柳 滋(2011)著者属性の推定結果を用いたプロフの出会い目的の書き込み検出のための教師データ自動構築手法,情報処理学会論文誌:データベース,Vol.4,No.3,53-69.

■中村 健二,田中 成典,北野 光一,寺口 敏生,大谷 和史(2012)マルチエージェントクローラを用いた有害ユーザの効率的発見手法,情報処理学会論文誌,情報処理学会,Vol.53,No.1.

【受賞等】

■2010年5月,関西大学科学技術振興会研究奨励賞受賞,「子どもの犯罪に関わる電子掲示板記事の収集・監視手法の検討」プロジェクト.

【その他】

■国内特許出願:グループ化装置およびエレメント抽出装置,2011年2月,特願2011-31228.