2013年3月31日をもちまして、領域の活動は終了致しました。

 近年、子どもがインターネットを通じてトラブルに巻き込まれるケースが増えており、多くの学校がネットパトロールの必要性を感じています。しかし、パトロールを企業に外注するには財政負担が大きく、学校や教育委員会の職員自ら行うには、労力がかかりノウハウも少ないという状況が多く聞かれます。また、パトロールをして書き込みを削除しても、別のサイトに再び書き込まれる場合もあり、真の問題解決には到っていません。
 教育機関である学校では、誹謗中傷などトラブルの有無だけに注目するのではなく、「なぜそのようなことが起こるのか」ネット上の交友関係や学校生活の悩みなどからも理解していく必要があります。
 そこで本プロジェクトでは、子どものネット利用を見守り、生徒指導を支援するシステムCISS(Civil Instructor Support System)を開発し、学校・保護者・市民ボランティアなどが協力して、地域でネットを介したトラブルから子どもを守るモデルをつくりました(図1)。

 CISSは、子どもがネット上にアップしたプロフィールや危険なサイトの内容を調べて記録し、蓄積していくシステムです。この情報を教育関係者が共有することで、危険なサイトや注意すべき子どもを継続して見守ることができます。また、特に必要な場合には、蓄積した情報から子どもの人間関係をグラフ化することで、生徒指導に活かす方法も考えました。
 記録は手作業で行いますが、誰でも一定の基準で危険性を判断できるフォーマットをつくりました。また、見守る人々が交流することのできる機能も加えました。そのほかに、トラブルへの対応事例などのデータも蓄積しています。

 実際に群馬県と高崎市、新潟市の教育委員会や学校で活用しながら開発を進めました。高崎市では教育委員会と協力し、市内に住む保護者を対象にボランティアで子どものネット利用を見守るサポーターの養成講座も開き、学校と保護者が協力しあう体制づくりを進めました(図2)。

 取組みを進める中で、子どもの個人情報やプライバシー、著作権などの法的な面や、ボランティアとの連携のあり方などの課題が浮かびました。法的な面については、教育関係者の中では十分に認知されていないということも見えてきました。そこで、適切に子どものネット利用を見守るためのガイドラインもつくりました。
 今後は、CISSを使った見守り活動を広めていくとともに、より多くの サポーターを育てるための教材づくりも行っていきます。

代表者・グループリーダー
■下田 太一:特定非営利活動法人青少年メディア研究協会 理事長

主な実施者
■下田 博次:特定非営利活動法人青少年メディア研究協会 前理事長
■片山 雄介:特定非営利活動法人青少年メディア研究協会 理事
■加藤 千枝:特定非営利活動法人青少年メディア研究協会 企画調査員
■小川 真佐子:特定非営利活動法人青少年メディア研究協会 企画調査員
■二本柳 雄樹:特定非営利活動法人青少年メディア研究協会 企画調査員
■宮川 隆:特定非営利活動法人青少年メディア研究協会 事務局長

協力者
■群馬県教育委員会義務教育課 ■高崎市教育委員会 ■ぐんま子どもセーフネット活動委員会
■新潟市教育委員会学校支援課 ■高知ネット会議(高知県内の市民ボランティアグループ)
※所属・役職は、参加終了時のもの。詳しくは研究開発実施終了報告書を参照。

【論文】

■下田 博次(2010)子どものネット利用問題に必要なリスク教育の発想,NEXT ONEセーフコミュニティ,警察政策学会資料,第59号,351-368.

■加藤 千枝(2010)コミュニティサイト利用のリスク,NEXT ONE セーフコミュニティー警察政」策学会資料,第59号,351-368.

■片山 雄介(2010).情報リスク教育の提唱とペアレンタル・コントロール概念の重要性,NEXT ONEセーフコミュニティ,警察政策学会資料,第59号,351-368.

■片山 雄介(2011)「ネットの見守り」活動の内容と意義,ヒューマンインタフェース学会,Vol.13,No.2,77-81.

【メディア報道・投稿】

■2009年3月29日,信濃毎日新聞.

■2009年4月2日,産経新聞夕刊.

■2009年4月2日,東京新聞夕刊.

■2009年4月2日,新潟日報夕刊.

■2009年4月2日,岐阜新聞夕刊.

■2009年4月2日,北日本新聞夕刊.

■2009年4月3日,愛媛新聞.

■2009年4月3日,福井新聞.

■2009年4月6日,日本経済新聞.

■2009年11月15日,京都新聞,子の携帯 閲覧制限を 有害サイトで全国市民会議.

■2009年12月29日,読売新聞,親は知らないPART4 少女の敵市民の目が摘発.

■2010年10月4日,読売新聞,親は知らない 識者に聞く 上 子の『ケータイ』賢く管理.

■2010年4月28日,NHKニューステラス関西特集,プロフからたどるネットのつながり.

■2010年5月10日,NHKおはようニッポン特集,プロフからたどるネットのつながり.

■2010年10月1日,テレビ東京NEWS FINE特集,国が支援 ネット監視隊.

【その他】

■2009年6月,少年写真新聞社,下田 博次,子どものケータイ利用と学校の危機管理.

■2010年7月,集英社,下田 博次,子どものケータイ-危険な解放区.

■2009年7月10日,財団法人学習ソフトウェア情報研究センター,下田 博次,子どものネット利用問題に必要なリスク教育の発想.

■2009年7月10日,財団法人学習ソフトウェア情報研究センター,加藤 千枝,コミュニティサイト利用のリスク.

■2009年7月10日,財団法人学習ソフトウェア情報研究センター,片山 雄介,情報リスク教育の提唱とペアレンタル・コントロール概念の重要性.

■2009年7月10日,財団法人学習ソフトウェア情報研究センター,学習情報研究,子どもとケータイ-ここまで来た情報モラル指導.

■2010年3月,CISS紹介ビデオ.

■2010年6月,市民インストラクター活動紹介DVD「ネットマム誕生」.

■2011年1月,CISS利用方法に関する紹介DVD.