2013年3月31日をもちまして、領域の活動は終了致しました。

 「犯罪からの子どもの安全」研究開発領域における6年間にわたる取組みを通じて、 子どもを守る上で以下の3点が重要であると私たちは考えます。

子どもは社会全体で守り育むべき存在である

保護者が子どもを守り育むことは重要ですが、増加し続ける虐待相談件数一つとっても、社会全体で取組む必要があることに疑いはありません。ただし、防犯を偏重するのではなく、健全育成など他の価値観との両立を目指すことが重要であり、プロジェクトの取組みを見ても、それは可能です。また、子どもの生活環境として、現実空間だけでなく情報空間も見守ることが必要です。

様々な取組みを被害の予防に結びつける

従来の犯罪対策や犯罪学は、犯罪発生後の問題や犯罪原因の解明が中心でした。今後は、これらに犯罪予防の観点を結び付ける必要があります。その際、被害と加害の連鎖が少なからずあることを踏まえ、子どもの被害・加害双方に取組むことが大切です。本領域では、一般の市民、犯罪の被害者、加害者を対象として体系的に捉えられるように、疾病の予防を体系的に捉えた予防医学の考え方を犯罪対策に当てはめ、各プロジェクトの位置付けを見直しました。これは、国際的にも提唱されているものです。

人、モノ、社会システムの観点から考える

犯罪から子どもを守るのは、最終的には人であり、それを支えるモノや社会システムがあります。優れた専門性や知識を持った人や、技術を駆使したモノが有効に機能するためには、法制度や社会的費用負担も含めて社会システムのあり方を考えることが必要です。

 これらを踏まえ、取組みの中で見えてきた、個々の研究者や一助成機関の取組みでは解決できない課題を7つの提言にまとめました。13プロジェクトの成果と本提言は、様々な取組みや政策にも役立つと確信しており、関与者の積極的な対応を期待します。
平成25年3月

提言の根拠を含む全文はこちら(PDF)提言書

1.あらゆる関与者が協働して子どもを守り育む

地域の人々が協働して、子どもを守る取組みをまちづくりに結び付ける
異業種・異分野の人々が互いの立場を理解し、共通の目標の下に協働する
地域、行政、研究者が連携し、地域間の協働を促す仕組みを整える
子どもの視点を取り入れ、気づきや様々な世代のつながりを促す

2.実態と根拠を踏まえ持続的な取組みを目指す

被害や行動の実態、地域の社会的資源、社会変化を把握し取組みに活かす
科学的・客観的に取組みの有効性を検証して、ムリ・ムラ・ムダをなくす
科学的な手法を踏まえて効果検証がなされた知見や取組みを取り入れる

3.子どもの叫びを捉えデータ化し予防に活かす 

ヒヤリ・ハットや傷害データを収集・分析し、子どもの被害実態を掴む
子どもの声に耳を傾け適切に証言を聴きだし、被害の予防や拡大防止に活かす
加害少年の被害経験の有無やぜい弱性などの背景を理解し、支援や予防に活かす

4.データを共有し取組みに活かす仕組みを作る 

子どもの被害データなどを関係機関や研究者が共有する仕組みを整える
取組みに有用なデータを収集して分析するための技術的な基盤を整備する
データを共有するために、子どもを守り育む視点から様々な法制度を見直す

5.犯罪現象を理解して防犯に役立つ能力を育む 

現場の人々と研究者が協働し犯罪予防や対策に役立つ教材やカリキュラムをつくる
安全教育を学習指導要領に組み込み、教員養成や免許更新時に必修とする
予防犯罪学を学べる場を整備し、現場で取組む人々が知見を高められるようにする

6.犯罪予防に資する研究開発や実装を促進する

科学研究費などの国の競争的資金を通じて、予防犯罪学の研究基盤の強化を図る
研究助成の拡充や研究に参加しやすい環境を整え、実証的な研究を推進する
研究成果を社会につなぎ実装を志す人が活躍できる環境整備や支援を行う

7.現場のニーズや研究の成果を社会に発信する

現場の人々や協力者が抱える具体的な問題を積極的に社会に発信する
プロセスも含めて研究成果を公開し、新たな視点や解決策を見いだす
わが国の子どもを守る取組みを国際的に発信し、客観的な評価の一助とする