JST news

JST newsは、国立研究開発法人科学技術振興機構(略称JSTの広報誌です。JSTの活動と、最新の科学技術・産学官連携・理数教育などのニュースを、わかりやすくご紹介します。

2016
4月号

2015年度

 
4月号 研究監メッセージ
人文社会科学主導の時代へ

社会技術・社会基盤担当 研究監 泉 紳一郎

文理融合や、自然科学と人文社会科学の連携の必要性が強調されてからかなり時間が経ちました。しかし、双方で使われている言語や価値観、研究の方法論、目的意識の違いなど、さまざまな理由から思うようには進展していません。この現状について少々、私見を述べたいと思います。

JSTの基本ミッションは、新しい科学と技術の研究開発と、そのための基盤構築にあります。新しい技術は、社会で使われてはじめて意味があります。そのためには、人々や社会のありようがどうなっているのか、これからどう発展するのかについて、合理的で客観的な知識が不可欠であり、そこにこそ人文社会科学が関与する重要な役割があると考えます。

すなわち、新しい技術が登場する前から、人々や社会の要求、いわば「社会的仕様」を規定するのが人文社会科学の役割ではないでしょうか。こうした取り組みがあってこそ、社会に受け入れられやすい技術が生み出され、普及していくはずです。

そのためにはどんなことが必要でしょうか。少し極端にいえば、新しい技術の研究開発の具体的な「出口」ないし「領域設定」そのものに、人文社会科学が主導的に関与することではないかと考えます。

人文社会科学は、人々の心や価値観、意義、それらの結びつきからなるコミュニティーや社会のありよう、つながりといったものを、多様な方法や視点で分析し、普遍性・合理性ある知識を生み出し、長い時間をかけて指針や規範を提供してきました。新しい技術の登場は、良くも悪くも現代社会とその構成員たる人々のありようを強く方向付ける可能性があります。

このような方向付けは、人文社会科学本来のスタイルとは必ずしも適合しにくいかもしれませんが、研究者たちの早急な意識改革が求められると思います。


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