JSTトップ>JSTnews>バックナンバー一覧 2016年度>2016年12月号
JSTnewsは、国立研究開発法人科学技術振興機構(略称JST)の広報誌です。JSTの活動と、最新の科学技術・産学官連携・理数教育などのニュースを、わかりやすくご紹介します。
P.03
革新的触媒をつくる ~若き研究者たちの挑戦~
あの人が触媒になってうまくまとまった。触媒となった彼の努力があってこそ――。 れっきとした化学用語が、いまやこのような日常語として使われている。 それもそのはず、触媒研究は「光触媒」などをはじめとして日本のお家芸にもなっているからだ。しかもこの分野でノーベル賞受賞者も相次いだ。野依良治博士は「キラル触媒による不斉反応」(2001年)で、根岸英一博士と鈴木章博士が「パラジウム触媒によるクロスカップリング反応」(2010年)で、それぞれノーベル化学賞を受賞した。 触媒の世界では今、従来の枠を超えた新しい視点が求められ、若手研究者の自由で柔軟な発想に期待が集まっている。日本の知の結晶ともいうべき触媒研究をさらに発展させる、若き研究者たちの挑戦を紹介する。
P.04革新的触媒をつくる ~若き研究者たちの挑戦~
触媒で生命と健康を守る
生命活動は酵素が触媒の働きをする化学反応によって支えられている。酵素に代わる機能を持った人工の触媒を有機化学の力でつくり、アルツハイマー病のような治療が難しい疾患にも効く医薬品の開発や、遺伝子発現の制御によるがん治療法の確立に応用しようというのが、東京大学大学院薬学系研究科の金井求教授が率いる「ERATO金井触媒分子生命プロジェクト」だ。世界でも類を見ない新しいアプローチで人間の生命と健康を守ろうとしている。
P.08革新的触媒をつくる ~若き研究者たちの挑戦~
斬新な発想で夢の触媒反応に挑む
生活に欠かせない化学製品や燃料の多くは、石油からの炭化水素化合物を元につくられている。石油資源の枯渇などに対処するために、自然界に豊富に存在するメタン(CH4)をはじめ、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)などの有効活用の取り組みが始まっている。 メタンなどから有用な化合物をつくるには、大きなエネルギーと複雑なプロセスが必要だった。それを飛躍的に改善するのが夢の触媒の開発である。文部科学省は「多様な天然炭素資源を活用する革新的触媒の創製」を戦略目標に掲げ、JSTの「さきがけ」と「CREST」で触媒の研究に乗り出した。
P.12~シリーズ3 食の未来を考える 第2回~
省エネルギー、超節水型の植物工場を開発する
世界の水消費の約7割が農業用水に使われている。しかも、人口の増加や工業化、気候変動などで世界的に深刻な水不足が起きている。 CREST「持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム」 研究領域における「超節水精密農業技術の開発」では、東京農工大学、桐蔭横浜大学、東京大学の農工連携により、作物の根の周りにだけ給水し、作物が使った分だけ補給する「地中灌水システム」を極めることで、省エネルギー・超節水型の植物工場モデルづくりに取り組んだ。この技術は、ビルの中の都市型植物工場や、世界の乾燥地帯の節水農業にも広く応用が期待される。
P.14JSTの最近のニュースから…
NEWS & TOPICS
【研究成果】天候に左右されない穀物生産に期待 【研究成果】細胞内のカルシウム濃度を一定に保つメカニズムを解明 【イベント】LCSシンポジウム2016「低炭素技術を取り込んだ街づくり」 【イベント】燃料電池に関するベトナムとの国際共同研究拠点がオープン
P.16研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)
映画で見た未来の車が魂に火をつけた
東京理科大学理工学部 講師 四反田 功
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認識部位を持たせた触媒の分子模型を手にした東京大学大学院薬学系研究科の金井求教授。「ERATO金井触媒分子生命プロジェクト」を率いる。「研究にゴールはありません。この触媒研究の方向で行けるところまで行こうというのが1つのゴールです」。