JSTトップ>JSTnews>バックナンバー一覧 2014年度>2014年4月号
JSTnewsは、独立行政法人科学技術振興機構(略称JST)の広報誌です。JSTの活動と、最新の科学技術・産学官連携・理数教育などのニュースを、わかりやすくご紹介します。
P.03光を自在に操る「フォトニック結晶」で高出力化を実現
革新的半導体レーザーの新たな挑戦
IT機器で活躍する半導体レーザーは、製造業で普及しているガスレーザーと比べてはるかに出力が小さく、加工目的で使うには無理がある。そんな常識を京都大学の野田進教授らが壊しつつある。半導体を材料に、その概念を根底から覆す小型で高出力の「フォトニック結晶レーザー」を開発し、従来品と桁違いの出力での実用化を目指している。社会的・経済的な価値創造を目指すJSTの新プログラム「ACCEL」では、レーザーの開発や製品化に精通した民間企業出身の八木重典プログラムマネージャー(PM)が加わり、10ワット級素子の実現を目指して新たな挑戦を開始、レーザー技術の世界に旋風を巻き起こそうとしている。
P.08スポンジ状で弾力性がありメスでも切れる人工骨の開発に成功
再生医療を支える“骨っぽく”ない骨
けがや病気などで失われた骨を補う「人工骨」の利用が年々伸びている。さまざまな製品がシェアを争う中、スポンジのように骨の欠損部に詰めたり、メスでも切ったりできる画期的な製品が昨年12月に登場した。骨の組織と同じ成分や構造で、周囲の骨にすぐなじむこの人工骨は、JST委託開発制度※を活用し、東京工業大学の田中順三教授らの研究成果をHOYA Technosurgical社が10年の歳月をかけて実用化した。現場のニーズにも応える高機能な製品が開発されたことで、再生医療での人工骨の普及と市場の拡大が期待される。
P.12膨大なウェブ情報がもたらす未来
ひとの知能にせまる画像認識技術
SNS や写真投稿サイトの普及により、ウェブ上には膨大な量のラベル付き画像データが蓄積されている。東京大学の原田達也教授は、これらのデータを活用して、有害情報の検出・削除や近未来のウエアラブル(装着型)情報端末などにも応用できる画像認識技術を研究している。生活空間にあるすべての「もの」や「シーン」を、あまねく認識できるコンピューターが実現すれば、能動的に活動するロボットの誕生も夢ではない。
P.14JSTの最近のニュースから…
TOPICS
【新規事業】 アジアと日本の高度人材の育成に向けて 【取り組み】 爆発物を自動で検出し、テロを防ぐ 【イベント開催報告】 はばたけ 次代を担う科学者たち! 【新規事業】 研究成果の実用化を目指して
P.16戦略的創造研究推進事業さきがけ 「細胞機能の構成的な理解と制御」領域 研究課題「細胞間フィードバック回路による細胞運命の制御」
生物の仕組みをつくりたい
理化学研究所発生・再生科学総合研究センターユニットリーダー 戎家 美紀
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半導体レーザーはビームが楕円、という常識が変わろうとしている。京都大学の野田教授は半導体にフォトニック結晶を組み合わせ、さまざまな形状のビームをつくってきた。 Aのドーナツ4つが並んだ不思議な形のビームは表紙背景(電子顕微鏡画像を元に再構成したイメージ図)のパターンのフォトニック結晶を使って出す。孔の間隔を他より広げた部分(濃い緑の筋状)を、間をあけて縦横に並べて実現した。 孔がおむすび型の場合のビームB、丸い孔がすべて等間隔の場合のビームCなど、いずれも野田さんが開発したレパートリーのごく一部だ(手前3枚の孔の画像は拡大率が背景の2~3倍)。