成果概要
こころの可視化と操作を可能にする脳科学的基盤開発[2] オプトジェネティクスによる脳機能ネットワーク光操作
2023年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目では、オプトジェネティクスと呼ばれる、神経活動を光で制御する技術を利用し、脳機能ネットワークに人為的に変化を生じさせます。その結果観察されるマウスの行動の変化を解析することで、脳機能ネットワークがどのように「こころ」の変化に対応し、行動を変化させるに至るかを明らかにします。
本研究開発項目で開発する要素技術は、マウスの頭蓋の外側から、脳の多点を同時に光刺激を与えることによる脳機能ネットワークの光操作法です。そのために、脳の形状の3次元計測を備えたホログラフィック多点同時細胞光刺激、及び3次元観察システムの構築を行っています。

2. これまでの主な成果
脳の形状に基づいて正確な部位に光刺激を行い、高速かつ3次元の脳内観察を可能にするシステムを構築しました。従来の光学系での光刺激研究では小さな脳領域に限定されていましたが、この研究では1cmにわたるマウス大脳皮質全体に適用するため、低倍率の対物レンズを使用してホログラフィック光刺激が可能な実験系を構築しました。構築したシステムは、蛍光ビーズを用いた性能評価で、6.6mmの広い視野角をカバーでき、さらに20μmの高い空間分解能で光照射と蛍光観察ができることを確認しました。
このシステムを用いて、マウスの頭蓋骨に塗布した蛍光ビーズの照射実験を行い、ホログラフィックな光刺激が頭蓋骨を通して可能であることも示しました。

低倍率対物レンズを用いた生きたマウスへのホログラフィック光刺激に向け、刺激に対する応答を検出するマクロカルシウムイメージング系を構築しました。マウスの大脳皮質の応答を観察し、刺激に対する脳の反応を検知できることを確認しました。

神経細胞に十分な光エネルギーを照射するため、出力 300 mW、波長473 nmのレーザーを導入しました。また、広域での光刺激において、複数スポットの塊を複数箇所に同時形成可能なツールとして、マルチ領域・マルチスポット照射機能を追加しました。
3. 今後の展開
マウスの大脳皮質神経ネットワークを操作する技術を開発していきます。すなわち、マウス皮質内の多点を同時に光刺激するホログラフィック多点同時細胞光刺激、及び3次元観察システムを構築します。
(的場 修、内匠 透: 神戸大学)