成果概要

データの分散管理によるこころの自由と価値の共創[1] パーソナルデータ(PD)の分散管理

2024年度までの進捗状況

1. 概要

PDを本人に集約して管理運用する仕組みであるPLRおよびこれを組み込んだアプリの機能を改良・拡張して利便性とセキュリティを高めるとともに、利用者との対話に応じて多様なサービスを仲介しダークパターンやフェイクによる行動操作を阻止するパーソナルAI (PAI)を開発します。平行して、分散管理の法的・社会的な妥当性と受容性の検討を進め、それに基づいてPLRとPAIを改善するとともに、PAIのガバナンスの仕組みを国際標準化し、こころの自由を守るPAIを社会実装します。

2. これまでの主な成果

PDの分散管理に基づくサービスの開発ならびに実証実験を行なうとともに、自己情報コントロールを巡る各国法制度を比較・整理してPAIに関する規制の動向と課題をまとめ、さらにPAIへの信頼感と有用性認知が利用意向を強く規定することを定量的に実証しました。
PAIは既存の技術で実現できてデジタルデバイドを解消し巨大な産業を形式すると期待されるので急速に普及するでしょう。したがって、PAIの適正なリスク管理をさらに急速に広める必要があります。そのため、PAIが利用者との対話を通じてさまざまなサービスを仲介する際にやり取りされるPDを利用者の手元に集約してフル活用することが可能であることに着目し、AIシステムのリスク管理のルールである国際標準ISO/IEC 24970に要件(L)「AIシステムのログを利用者のPDSに集約して管理運用にフル活用せよ」(右図のピンクの部分)を組み入れました。これに基づいて正しく管理されたPAIがサービスを仲介すれば、サービス提供者は利用者の認知バイアス等に付け込んで行動を操作することができないので、注意経済と監視資本主義が終息してこころの自由が守られます。また、(L)のゆえに利用者がPAIをトラストすれば、PAIにログをフル活用させることによりPAIの付加価値が最大化します。ISO/IEC 24970は欧州AI法の整合標準(法律と同等の拘束力を持つ規格)になる予定なので、GDPRやデータ法の下での(L)がブリュッセル効果によって世界中の高リスクAIシステムに適用されることになるでしょう。

イラスト

3. 今後の展開

このルールの実効性を高めるため、適正に管理されたPAIの社会受容性を実証して普及させる必要があります。そのため、PAIを用いた顧客主導のマーケティング(分散マーケティング)を各地域に普及させ、隣接する地域をまとめてより大規模な分散マーケティングを実現して行くという方法で正しいPAIを広める計画です。分散マーケティングは事業者にとっても顧客にとっても従来のマーケティングよりメリットが大きいので、10年ほどでPAIとともに普及させることができると考えられます。

課題推進者:
橋田 浩一: 理化学研究所
山本 龍彦: 慶應義塾大学
戸谷 圭子: 明治大学