成果概要
量子計算網構築のための量子インターフェース開発[2] オプトメカニカル共振器
2024年度までの進捗状況
1. 概要
量子コンピュータを構成する物理系としてダイヤモンドは優れた特性を示し、超伝導量子などと光量子の接続に最適です(図1)。本プロジェクトでは、超伝導量子と光量子をダイヤモンドオプトメカニカル結晶(ダイヤモンドOMC)で量子接続し(図2)量子コンピュータのネットワーク大規模化を目指します。本研究開発テーマでは、フォトニック結晶光共振器とフォノニック結晶音共振器を両立する構造のダイヤモンドOMCの作製、およびその基本特性の実証に成功しました。また、シリコンフォトニクスによる光ファイバーとダイヤモンドOMCの高効率光接続を図り、光結合回路とマイクロ波共振回路のチップレット実装を実現しました。


2. これまでの主な成果
研究開発課題1:フォトニック結晶光共振器の研究開発
- 【ダイヤモンドオプトメカニカル共振器の作製技術の開発】
- 作製プロセスの高度化を図り、光Q値2,000のダイヤモンド光ナノ共振器構造を実現、単一NV中心を内包した光共振器によるパーセル増強~10を達成しました。また、課題3で設計した光共振器と音共振器を両立させたオプトメカニカル共振器の作製にも成功しました(図3(a))。
- 【ダイヤモンドハイブリッド実装技術開発】
- ダイヤモンド光ナノ共振器およびオプトメカニカル共振器の転写プリント技術による窒化ケイ素(SiN)導波路上への100nm以下の高精度3次元ハイブリッド集積に成功しました(図3(b))。

研究開発課題2:フォトニック結晶光共振器の実装技術の開発
光ファイバからダイヤモンドオプトメカニカル共振器まで低損失で接続するインターフェースの実現を目指しました。シリコンフォトニクスプロセスにより製作されるSiN導波路チップの上にダイヤモンドOMCを転写プリントし、光ファイバから光結合させます。一次試作チップで光ファイバから共振器までの光伝搬を確認し、超伝導マイクロ波共振器をモノリシックに搭載した二次試作を行い、光ファイバ入出力によるダイヤモンドOMCの励起・発光スペクトルの取得に成功しました。

研究開発課題3:フォノニック結晶音共振器の研究開発
製作可能な構造パラメータを設計条件として最適化したダイヤモンドオプトメカニカル共振器系を設計しました。電気機械効果を利用して機械共振器モードを電界で駆動します。プロセスの制約と変換効率のバランスを考慮しながら、高い量子変換効率の実現を目指しました。(図5)。

3. 今後の展開
ダイヤモンドOMC共振器の実現と性能向上とともに、量子メモリやピエゾマイクロ波共振器との融合を図り、超伝導光量子インターフェース実証と超伝導量子ビット間の光量子接続を目指します。