成果概要
量子計算網構築のための量子インターフェース開発[2] オプトメカニカル共振器
2023年度までの進捗状況
1. 概要
量子コンピュータの候補は多数ありますが、ダイヤモンドのポテンシャルは他の物理系に引けを取りません(図1)。本プロジェクトでは、超伝導量子と光量子をダイヤモンドで量子接続する超伝導光量子インターフェース(IF)を開発し(図2)、大規模な超伝導量子コンピュータの実現を目指しています。本研究開発テーマでは、その構成部品となるオプトメカニカル共振器の開発を行います。これまでにフォトニック結晶光共振器およびフォノニック結晶音共振器、およびダイヤモンド導波路から光回路への接続構造の設計を進めたほか、エアブリッジ型ダイヤモンドフォトニック結晶ナノビーム共振器構造を実現しました。


2. これまでの主な成果
研究開発課題1:フォトニック結晶光共振器の研究開発
- 【ダイヤモンドオプトメカニカル共振器の作製技術開発】
- ダイヤモンドフォトニック結晶ナノビーム共振器を安定に実現することが可能となりました。さらに、その共振器モードを観測することに国内で初めて成功しました(図3)。既にQ>1,000も達成しており、2024年度のマイルストーンを前倒しで達成しました。
- 【ダイヤモンドハイブリッド実装技術開発】
- SiN導波路への集積化に向けて、エアブリッジ化されたダイヤモンド構造を基板から剥離するための技術開発を進め、実際にその剥離に成功しました。

研究開発課題2:フォトニック結晶光共振器実装技術開発
光ファイバからオプトメカニカル共振器まで低損失で接続する構造の実現を目指しています。窒化ケイ素(SiN)導波路の上に圧電材料(AlN)とダイヤモンド積層導波路を転写プリントして光結合させます。ファイバから積層導波路までは0.7 dB、共振器までは1.5 dBの損失が計算される構造を設計しました。これをもとに、SiN導波路のプラットフォームと、スポットサイズ変換器を介して光ファイバを接続した様子を図4に示します。SiNへの光伝搬を確認しており、ここにダイヤモンド積層導波路を装荷することで、ダイヤモンドまでの光接続が完了すると期待されます。

研究開発課題3:フォノニック結晶音共振器の研究開発
新しく、窒化アルミニウム―ダイヤモンド2層構造のピエゾオプトメカニカル共振器を考案し、設計を行いました。ピエゾオプトメカニカル共振器の設計性能は、目標値を大きく上回り、設計パラメータの最適化によりマイクロ波-光学光子のコヒーレントな変換効率が最大40%以上になり得ることがわかりました(図5)。
3. 今後の展開
ダイヤモンドオプトメカニカル共振器の実現と性能向上とともに、量子メモリやピエゾマイクロ波共振器との融合を図り、超伝導光量子インターフェース実証を目指します。