成果概要
超次元状態エンジニアリングによる未来予測型デジタルシステム[1] ジェネリックVラボ
2025年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目では、さまざまな分野で使えるバーチャルラボラトリ(デジタル空間上の仮想実験室、Vラボ)の基盤となる汎用型Vラボ(ジェネリックVラボ)を構築します。そのために、AIやデータ駆動科学、計算物理学、数理科学、高速計算技術など、異なる専門分野の研究者が参加し、実験データ、理論やモデル、計算(シミュレーション)データを統合(まとめて活用)する手法を開発します(図1)。ジェネリックVラボは、これまでPM(星)らが開発してきた汎用データ解析フレームワーク「Open Data Analysis Tool for Science and Engineering(ODAT-SE、オーダットエスイー)」を拡張することで実現します。

2. これまでの主な成果
2025年度は、AI・データ駆動科学手法、高速数理アルゴリズムなど、ジェネリックVラボに必須となる要素技術の研究を主に行いました。また、ODAT-SEを拡張することでジェネリックVラボを試作し、応用問題を通じてジェネリックVラボの有用性を実証しました(図2に例)。

ジェネリックVラボは、いろいろな実験装置に合わせて専用のプログラムを組み込むだけで、多様な実験に対応できる仕組みであることが求められています。図2では、フュージョンエネルギー研究で使われる「トムソン散乱計測装置」を例に、有用性を実証しました(論文:K. Sakai他、Journal of Instrumentation 21, C01002 (2026))。この装置は、プラズマの中にある粒子がどのくらいの速さで動いているかを測るためのものです。今回の研究の結果、粒子の動きがそろっておらず複雑な状態でも、プラズマ中の粒子の正しい速度の分布を求められることが確認できました。ODAT-SEというフレームワークはもともと物質科学のためにつくられたものですが、本プロジェクトで拡張され、さまざまな分野の実験装置に使えるジェネリックVラボの基盤になりました。プラズマ科学分野の装置にこのフレームワークを応用したのは今回が初めてであり、さまざまなVラボを構築するうえで必要な汎用性(幅広く使える性質)を持っていることが実証されました。
3. 今後の展開
今後は、実験データ、理論やモデル、計算(シミュレーション)のデータ統合手法(図1)を発展させ、ジェネリックVラボをさらに高度化していきます。あわせて、研究開発項目2から4の課題推進者(PI)と協力し、多様なフュージョンエネルギーシステムや中性子照射などの材料実験に対応したVラボの構築を進めます(Vラボの構築については次ページに記載)。また、研究開発の進捗に応じて、新しい研究開発課題やPIを順次追加していく予定です。