低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2021-PP-04

日本における蓄電池システムとしての揚水発電のポテンシャルとコスト(Vol.4)
-気候変動に対応した提案-

  • SDGs7
  • SDGs9
  • SDGs13

概要

 太陽光発電や風力発電などの変動する再生可能エネルギー(VRE)の年間発電量に対する割合が我が国をはじめ各国でも増えており、今後電力系統の安定化のため、電力貯蔵および調整機能として揚水発電や蓄電池の重要性が注目されている。

 LCSでは、これまで下池として既存の多目的ダムを活用した小規模の分散した安価な新揚水発電を提案してきた。2020年の提案書では新揚水発電所ポテンシャルやコストの精度を高めるため、実際の地形等に基づき全国の開発可能な蓄電設備可能容量と発電コストを種々の条件で計算した。その結果、実質的に開発可能な年間蓄電可能容量のポテンシャルは180~420TWh/年、発電コストは19~21円/kWhであり、新揚水発電は将来の有力な蓄電システムであることを示した。
 本提案書では、今後の気候変動の影響で洪水や渇水が現状の2倍の頻度で生じる可能性がある予測に鑑み、政府が実施している防災対策に沿って新揚水発電の仕様を見直した。その結果上池の貯水容量を増やすことなどで、政府の防災対策の一つであるダムの嵩上げに匹敵する機能が期待でき、その工事費はダムの嵩上げ工事費の40%減であった。
 これらの見直しで年間蓄電可能容量のポテンシャルは2020年提案書の1.7倍の700TWh/年に増量できた。また、全国に広く分布する新揚水発電の揚水用電源として、今後開発可能な太陽光発電と風力発電のポテンシャルと分布状況を調べた結果、新揚水発電のポテンシャルの約8倍のポテンシャルがあり、分布も新揚水発電と同様各地域に広く分散しており、今後、送電線網や配電システムを構築すれば、新揚水発電を十分活用できることが分かった。

提案書全文

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